2015 Fiscal Year Research-status Report
高IgE症候群のモデルマウスを用いた高IgE血症発症機序の解明
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26460578
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
西川 裕美子 徳島大学, 疾患プロテオゲノム研究センター, 助教 (60448214)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高IgE症候群 / IgE産生 |
Outline of Annual Research Achievements |
高IgE症候群でみられる高IgE血症の原因の解明と治療法の開発を目的とし、原因遺伝子のうちの一つとして知られるStat3遺伝子に、実際の疾患患者でみられる変異と同等の変異を導入した変異マウスの解析を行っている。これまでに、当研究室で樹立したモデルマウスで、4、5週齢ごろから血中IgE抗体量の上昇がみられること、血中抗体価の上昇が著しい個体での複数のリンパ組織における抗体産生細胞が存在すること等を確認できた。 平成27年度は、当初、「IgE産生に関わる腸内及び皮膚常在菌叢の検討」や「特定のリンパ球のサブポピュレーションの解析」を予定していたが、無菌環境下や離乳時からの抗生物質投与の条件下での飼育観察の結果から、計画を変更し、 ① 血中抗体価の上昇が著しい個体における感染巣の探索、及び菌種の同定を試みた。 また、免疫による外来抗原感作によっても、野生型マウスと比較し、抗原特異的なIgE産生が確認できたことから、②この現象に関わる細胞種の同定を試みた。 特定の細胞集団でのみ変異型STAT3を発現するマウス、あるいは新たに導入した培養系の解析の結果から、STAT3変異による高IgE血症の発症メカニズムに関わる、生育環境や複数の免疫関連細胞の複雑な関係性を示唆する結果が得られつつあり、平成28年度の研究に生かしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要に示す通り、免疫による外来抗原感作によっても、野生型マウスと比較し、抗原特異的なIgE産生が確認できたことから、②この現象に関わる細胞種の同定を試みたところ、当初予想をはるかに超えた複雑な免疫細胞、生育環境の関与が明らかになりつつある。 研究計画に多少の変更を加えつつ詳細な検討を行っており、今後の進展により、高IgE血症の発症機序の解明のみならず、関連する研究領域において大きなインパクトを与えうる結果が予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、IgE産生誘導に関わる細胞性、環境因子を明らかにするため、①モデルマウスによる検討 ②IgE産生環境を再現できる共培養系の確立と解析、③関連細胞の網羅的遺伝子発現解析等を行い、検討を進める予定である。 ①については引き続きモデルマウスを用いてIgE産生を誘導する環境因子(外的因子)の探索をおこなう。血中IgEレベルを指標に、様々な飼育環境下、あるいは薬剤投与下で、モデルマウスを観察する。 ②では、既に確立しつつある共培養系を用い、実際の変異マウスの生体環境において、IgE産生応答を優位に誘導する際の必要十分な因子について検討を行う。 ③では、①、②から得た情報を元に、STAT3変異が、抗体産生応答に関わる細胞に対して、どのような影響をもたらしたのかを明らかにするため、マイクロアレイ解析等を用い、遺伝子発現変化を網羅的に検討し、IgE産生誘導の分子メカニズムを明らかにする予定である。
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