2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26460579
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
山田 武司 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40333554)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | CD8陽性T細胞 / T細胞の疲弊 / 慢性型感染症 / Menin |
Outline of Annual Research Achievements |
HIV等の慢性型感染症では、T細胞の疲弊による機能低下が病原体を排除する上で大きな問題となっており、感染症克服にはこのT細胞疲弊の抑制が重要と考えられる。しかしながら、活性化したT細胞が疲弊に至るメカニズムについては不明な点が多いのが現状である。そこで本研究では、感染マウスモデルを用いてT細胞疲弊誘導メカニズムを解明し、疲弊を抑制あるいは解除する手法の開発を目的とする。これまでの我々の研究から、腫瘍抑制因子であるMeninを欠損させたマウス由来のCD8陽性T細胞において、リステリア感染による抗原特異的活性化後、抑制性受容体PD-1の高発現や増殖低下、細胞死の誘導など慢性型感染症で見られる特徴的なT細胞疲弊現象が、早期に誘導されることを見出している。これをT細胞疲弊モデルとして疲弊メカニズムの解析を行ったところ、活性化したMenin欠損CD8陽性T細胞において、分化マーカーであるKLRG1の高発現とCD27の低発現が観察され、終末型エフェクターT細胞への分化亢進が見られた。さらに、細胞内エネルギー代謝に関与する蛋白質FoxO1やFoxO3aの発現がMenin欠損T細胞で低いことから、メタボローム解析を行ったところ、Menin欠損T細胞において、グルコース代謝経路やグルタミン代謝経路の過剰活性が見られ、Meninの欠損による細胞内エネルギー代謝異常を示唆する重要な結果が得られた。以上の結果から、Meninが終末型エフェクターT細胞への分化およびエネルギー代謝を制御することにより、T細胞疲弊を抑制している可能性が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、Menin欠損マウスにおけるCD8陽性T細胞の分化と疲弊の解析を行い、腫瘍抑制因子Meninが終末型エフェクターT細胞への分化制御とT細胞疲弊の抑制に働くことを示す結果を得た。また、細胞内エネルギー代謝について調べるため、メタボローム解析を行ったところ、Menin欠損CD8陽性T細胞においてグルタミン代謝経路の過剰活性など細胞内エネルギー代謝異常が見られ、エネルギー代謝異常と疲弊の関連を示唆する結果を得た。さらに、Menin欠損CD8陽性T細胞で異常が見られるエネルギー代謝経路の阻害剤を用いて疲弊が抑制されるか観察したところ、疲弊マーカーである抑制性受容体PD-1の発現低下を確認した。また、予定した通りMeninが感染過程のどの時期に働くかについても明らかにするため、薬剤依存的Menin欠損マウス(Meninfl/fl Rosa-CreER)を作製し、感染前後に薬剤を投与したところ、感染後4日目の投与でも疲弊が誘導されることから、感染によるT細胞活性化後にMeninが疲弊抑制に働くことを示す結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の成果を念頭において、Menin欠損マウスを用いた細胞内エネルギー代謝異常に焦点を絞り、疲弊誘導メカニズムを明らかにする。具体的には、まず初めにエネルギー代謝活性とT細胞疲弊の関係を明らかにする。さらに、エネルギー代謝産物によって制御されることが想定されるヒストン修飾酵素とT細胞疲弊との関連について明らかにする。従って、今年度は以下の解析を行う予定である。 1)Menin欠損T細胞内エネルギー代謝を抑制するため、低栄養培地やエネルギー代謝酵素の阻害剤を用いて抗原刺激したT細胞を培養し、疲弊への影響をマウスに移入して解析する。 2)エネルギー代謝産物によって制御されるヒストン修飾酵素をT細胞特異的に欠損させたマウスを用いて、T細胞の分化および疲弊について解析を行う。 1)と2)の結果を元に、T細胞疲弊を抑制する手法の開発を進める予定である。
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