2014 Fiscal Year Research-status Report
先端幹細胞技術と既存医療の合流がもたらす社会的インパクトに関する研究
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26460586
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石井 哲也 北海道大学, 安全衛生本部, 特任准教授 (40722145)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 幹細胞 / 中絶胎児由来幹細胞 / 胚性幹細胞 / 生殖補助医療 / インフォームドコンセント / 規制 / ミトコンドリア移植 / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、先端幹細胞技術の中で人の生と死に関与する生殖細胞および神経細胞を創出する技術を中心にして、これらを用いる研究や医療の進展を予測し、現在の医療規制をふまえつつ倫理的課題を明確化した上で社会への影響を多角的に考察し、議論活性化に貢献する。 H26年度は、まず、臨床試験の歴史が長い中絶胎児由来幹細胞、および近年世界的に利用が進む胚性幹細胞を用いる臨床試験の系譜を、幹細胞研究者へのヒアリングを行いつつ、踏査した。その結果、インフォームドコンセントの正当性や生命滅失の必然など克服し難い倫理的、社会的問題がありながらも多くの試験が国際的に実施されていることを見出した。一方でiPS細胞など倫理的問題が少ない幹細胞技術の台頭が、従来幹細胞技術の問題点を一層明瞭にしている現状を確認した。その後、生殖細胞を創出する幹細胞技術について文献調査を行なった。その上で、この人工生殖細胞を用いる生殖補助医療の合理性として、現代の生殖補助医療が求める、夫婦から受精可能な配偶子が採取可能であるという前提を打破する可能性を認めた。一方で自己由来の人工生殖細胞が生むであろう倫理的、社会的問題の比較整理を進めた。神経細胞を創出する技術については、パーキンソン病に対する胎児由来中脳黒質移植治療の系譜を整理しつつ、幹細胞技術の進展の評価を進めている。 一方、幹細胞技術が大きく開発支援してきた、卵子や胚の核移植に基づくミトコンドリア病の予防医療、ミトコンドリア移植について、倫理的、法的、社会的検討を行ない、論文発表した。また、幹細胞技術と対比しつつ、ゲノム編集による胚の遺伝的改変技術が生殖補助医療に統合された場合の倫理的、法的、社会的問題についても論文発表した。これら2つの検討の過程で、39か国について生殖細胞系の遺伝的改変の規制状況を調査し、公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人工生殖細胞については、申請前の成果をベースに、順調に科学的、臨床的、法的な現状整理を進めることができている。人工神経細胞についても、今後の検討の足がかりとなる胎児由来脳細胞移植の系譜を整理できている。また、幹細胞研究と密接な関係があるミトコンドリア移植やゲノム編集を用いる生殖補助医療についても検討を実施できた。人工生殖細胞やミトコンドリア置換については、サイエンスカフェなどで市民対話を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
人工生殖細胞に関する総合的考察を進め、我が国では、この技術をどう扱うべきか考察を進める。また、人工神経細胞については、技術進展の見通しをつけ、それらがもたらす倫理的、法的、社会的問題を明らかにする。また、英国で法的に解禁となったミトコンドリア移植がもたす我が国の生殖補助医療へのインパクトを考察する。ゲノム編集については学会などでの情報収集を進めつつ、生殖細胞系の遺伝的改変が臨床的に、また、倫理的、社会的に意味する内容を精査する。
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Causes of Carryover |
研究進展によって、英語校正費の増加見込みで15万円、また韓国での研究会議からの発表依頼をうけての旅費、参加費25万円、合計40万円を前倒し請求した。結果として、英語校正費用はさほどかさまず、また家庭事情で韓国での滞在日数が減り、また、招待講演のため参加費減額となったため、31万9799円の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度分請求助成金100万円は、物品費5万円、旅費65万円、その他30万円として使用を計画している。平成26年度予算残となり、27年度使用となった31万9799円はその他(論文オープンアクセス発行費用)として有効利用する。
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Research Products
(8 results)