2015 Fiscal Year Research-status Report
医薬看護学生に対する継続的多職種連携教育ツール(iPED)の開発と教育効果の検証
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26460598
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
安井 浩樹 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座准教授 (20362353)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 恵子 名古屋大学, 医学部附属病院, 准教授 (00444274)
平川 仁尚 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00378168)
植村 和正 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40303630)
日紫喜 光良 東邦大学, 理学部, 准教授 (30324271)
野呂瀬 崇彦 北海道薬科大学, 薬学部, 准教授 (30433452)
櫻井 しのぶ 順天堂大学, 医療看護学部, 教授 (60225844)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | IPE / 多職種連携教育 / SNS / コミュニケーション / 心理的障壁 / 空間的障壁 / 質的分析 / SCAT |
Outline of Annual Research Achievements |
IPEの普及を阻む3つの壁(空間的障壁、時間的障壁、心理的障壁) を克服すべく、我々は多職種連携教育ツールiPED(Interprofessional Education Device)を開発し、2014年に試験導入した。従来のIPEに対し、3つの特異的要素をiPEDはもたらす。第1に独自設計のSNS上で、学生間および学生-患者間の柔軟なやりとりを可能にすること、第2にそれにより、これまで立地やカリキュラムの都合で難しかった大学間を結ぶIPEが可能になること、第3にさらには、日々の生活に忙しい実際の患者のリクルートが現実的になることである 。このようなiPED活用は従来のIPE同様に教育効果を持ち得るのか、持つのであれば従来なかった新たな教育効果をも加え得るのか、未知である。そこで、我々はIPEにおけるiPED活用の教育効果を質的に探索した。1年間のiPEDによる、学生、患者チーム内のコミュニケーションを行ったあと、それぞれにフォーカスグループを実施し、以下の効果が明らかになった。 [学生に対する効果]①跳弾効果:患者に寄り添う看護学生の声掛けが、翻って病気に固執しがちな医・薬学生の視点を揺さぶる。②鏡像効果:自学部生のコミュニケーションスタイルが他学部生に波及し、それを第三者的に目撃することにより、自学部役割を再認識する。 [患者に対する効果]①伴走効果:都度のレスポンスによる迅速な承認が療養意欲を高める。②見守り効果:“言われない”ゆるい繋がりが自発性を引き出す。 [学生・患者に対する効果]①発展的な方向性の獲得:医学生、看護学生、薬学生、患者それぞれが自らの学習を発展させるべき方向性を得る。②障壁の克服:iPEDによる長期的協働学習が空間的・時間的・心理的障壁を解消する。 以上の通り、iPEDは学生・患者双方に対する独自の教育効果をもち、IPEを促進し得る事が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
[iPEDを用いたIPE(2014.11-2015.11)]愛知県の医学生1名、東京都の看護学生1名、北海道の薬学生1名、Ⅱ型糖尿病患者1名を1チームとし、これを2チーム編成した。学生はiPEDを活用し、患者の療養を継続的に支援した。 [データ採取(2015.12)]IPE終了後、参加者を学生グループ(計6名)、患者グループ(計2名)に分けてそれぞれに、iPEDを活用した1年間を振り返る内容のフォーカスグループを行った。 [分析(2016.1-)]質的データ分析の1手法であるSCAT(Steps for Coding and Theorization)を用いて、語りに内在する意味を解釈し、教育効果を記述した。 iPEDのデータ収集と、学生と患者によるミーティング、フォーカスグループについて、ほぼ予定通り実施した。当初、最初と最後に予定していたミーティングであったが、中間評価と交流の促進を目的に、平成27年6月に実施し、学生同士、学生と患者の交流を促進することができた。 インタビューデータの質的分析も行い、学生への教育効果に加えて、参加患者への効果の可能性についても示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、一連の成果を日本医学教育学会およびAMEE(Association for Medical Education in Europe)において発表すると同時に、論文としてまとめる予定である。対象グループ数を増やす、対象疾患を増やす等、研究のサイズを増やす事により、その効果をより明確にし、iPEDを使用した教育の充実をめざし、今回新たに明らかになった、IPEの患者に対する効果を検討するための研究計画を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
12月の学生、患者ミーティングの際に、IT技術サポートを依頼する予定であった、技術者が、急遽参加できなくなったため、1名分の旅費が予定通り執行されませんでした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究成果を発表予定の、Association for Medical Education in Europe (AMEE)カンファレンスが、バルセロナで開催予定のため、旅費、参加費の一部として使用する予定です。
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