2014 Fiscal Year Research-status Report
患者の医療リスクの理解と納得のための要因と行動変容までのプロセスに関する研究
Project/Area Number |
26460610
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
岡本 左和子 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20721385)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今村 知明 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (80359603)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 医療リスク / 患者の能動的関わり / 受療行動 / 医療決断 / 患者納得 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、治療・診療にともなうリスク(医療リスク)について、患者がどのように捉え、理解し、引き受けるのか、そして治療を受けるまでの行動プロセスを明らかにすることと、医療従事者の支援となるコミュニケーションモデルの考察を目的としている。 平成26年度は、アンケート調査を実施し、その結果、下記を検討項目として挙げることができた。1)慢性疾患(糖尿病と関節リウマチ)と急性疾患(がん)で多少の違いはあるが、基本的な考え方は変わらない。しかし、糖尿病患者は認識と行動が異なると考えられた。2)約半数は、診断と治療の説明後、1-2日(長くても7日)で内容の理解と意思決断ができるが、残り半数は2週間以上数年まで散点し、傾向が認められない。3)医師の説明は理解できた患者がほとんどだが、医師からの説明を受ける(受動的)よりも患者が自分から質問できる時間(能動的)や質問しやすくする医師の対応を求めていた。4)治療の決断に悔いが残るとした患者は10-15%程度であったが、慢性疾患患者の方ががん患者よりも倍近く多い。5)治療前に行っておくべきことは、リスクの理解やセカンドオピニオンを得ることが挙がったが、同時に特にどうしたらいいのかわからないという意見が半数以上あった。6)後悔しないためには、70%以上の回答者が医師が治療後のことを具体的に患者に伝えることと十分に話しができることを挙がった。糖尿病だけは、「特に無い」とした人が41%あり、後悔する人が他の疾患より多い割りに、どうしていいのか分からず戸惑いが認められた。7)患者が医療者の支援を求める期待値と実際の経験値の間に有意に落差があることが分かった。 これらの結果は一部のものであるが、これらを基に解析を進める予定である。また、患者の医療リスクに関する認識の測定は、効果量またはレスポンスシフトを用いて定量化することができると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に基づき、患者へのアンケート調査を2回実施することができた。最初のアンケート調査では、受療や意思決断と医療リスクについて患者の認識のアウトラインを掴むことができた。2度目の調査では、1) 診断時、2) 治療計画の提案時、3) 医療リスクの説明時、4) 治療後(一区切りまで治療を受けた後)、5) 振り返ってどのように思うかのタイムラインに沿ってデータを得ることができ、患者の治療説明の受け入れとリスクへの考えの時間的な変容について概要を得ることができた。 また、患者の認識の定量化についてもいくつか検討し、効果量またはレスポンスシフトという健康状態の変化によって個人内の判断基準が変化するアウトカム評価を使うことで、患者の認識の変容を説明できるのではないかと考えている。さらなる検討が必要である。 文献調査をして必要な文献の取得はできたが、読み込みが少し遅れているため、できる限り早く文献を読んで行く計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度のアンケート調査結果と患者の医療リスクに関する認識測定、収集した文献情報などを踏まえ、患者の医療リスクへの理解と引き受けることができるまでの主要因とプロセスの検討と推定を行う。研究結果が出たところまでを、日本ヘルスコミュニケーション学会や日本公衆衛生学会で発表の予定である。また、国際学会としては、International Conference on Communication in Healthcareでの発表のため、演題を応募中である。 得られたデータをさらに解析し、患者が医療リスクを理解し、納得して医療を受けるために必要と考える主要因を検討し、特定をする。その主要因を基に、患者が医療リスクを理解し、納得して受け入れていくプロセスを検討し、推定する。そのプロセスにおいて医療リスクの理解促進に関わるモデルをリスクコミュニケーションと医学的妥当性、診療時間的な妥当性の観点から検討を重ねる。
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Causes of Carryover |
アンケート調査の実施が平成27年2-3月になり、平成26年度内の学会で発表することができなかった。そのため、出張費やデータの取りまとめの費用の一部が次年度に繰り越された。平成27年度は、いくつかの学会での発表をするため準備中である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度の研究費は、平成27年度の学会発表のための旅費、宿泊費、情報収集のための打ち合わせ、論文出版料などが想定される。
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