2015 Fiscal Year Research-status Report
患者の医療リスクの理解と納得のための要因と行動変容までのプロセスに関する研究
Project/Area Number |
26460610
|
Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
岡本 左和子 奈良県立医科大学, 医学部, 学内講師 (20721385)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今村 知明 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (80359603)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 医療リスク / 患者の能動的関わり / 受療行動 / 医療決断 / 患者納得 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、治療・診療に伴うリスク(医療リスク)について、患者がどのように捉え、理解し、引き受けるのか、そして治療を受けるまでの行動プロセスを明らかにすることと、医療従事者の支援となるコミュニケーションモデルの考察を目的としている。 平成27年度は、平成26年度に実施した慢性疾患(糖尿病と関節リウマチ)と急性疾患(がん)患者へのアンケート調査の結果を分析した。それによって、疾病別の患者の反応の違いを明らかにできた。がん患者は診断直後から、不安感を強く持つものの、家族や仕事、生活の段取りを比較的早く進め、医師とも治療について前向きに話ができる傾向にある。しかし、糖尿病や関節リウマチの患者は、診断直後の不安感が支配的で、生活のことや医師からの指示、治療の説明を正確に聞けるような状態にないことが分かった。治療介入の緊急度や、寛解またはそれに似た状態に導き易いかなどの視点から考えると、糖尿病や関節リウマチの患者の方が前向きに努力できるのではないかと考えがちである。しかし、実際は、がん患者の方が直近に生命の危険を感じることで、治療を遵守し、前向きに関わり、生活パターンを変えるというような行動に出やすい。慢性疾患患者と急性疾患患者に対して、同じような、診療、診断、治療の説明と開始という順番で対応しても受け入れられず、疾病と治療の受容まで時間がかかることを考慮に入れる必要性が示唆された。治療に前向きになれない結果、合併症を起こす可能性が高くなることを考えると、糖尿病や関節リウマチの患者が不安感によって、すぐには医師の説明や治療に向き合えない点については、何らかの工夫が必要である。現在、そのモデルについて検討中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に基づき、患者への2回のアンケート調査の結果、疾患によって患者の治療に前向きに向かいあうために必要な時間軸が異なり、患者の治療の意思決断と医療リスクへの理解に影響を与えていることが分かった。これまで、治療計画や関係情報を患者のタイミングに合わせて、疾患によって考慮されることがなかった。疾患によって患者の態度が異なるのは当然と考えられていたが、実際にその差異を考慮して患者に対応することがなされていなかった。そのため、医療従事者も患者の理解を得られず消耗することが少なくなかった。また患者の認識の定量化については、レスポンスシフトで測定判断することを考えていたが、医療従事者の許容時間との兼ね合いを検討する必要があり、従来の分析方法の方が結果が明確に出るとも考えられ、現在検討を重ねている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度と27年度のアンケート調査の結果と文献リサーチによる情報を踏まえ、患者の医療リスクに関する認識測定と医療リスクへの理解、リスクの受容ができるまでの主要因、プロセスの検討を行ってきた。平成27年度は、結果が出たところまでを、日本ヘルスコミュニケーション学会と日本公衆衛生学会、国際学会としてはInternational Conference on Communication in Healthcareで発表をした。最終年度となる平成28年度は、現在のところ、The 8th International Conference on Interprofessional Practice and Education: All Together Better Healthにて演題が採択され、研究成果を発表予定である。 また、研究としては、これまでの結果を踏まえ、具体的に日常の診療で使えるモデルを考察中である。
|
Causes of Carryover |
本研究の結果に基づいた論文を最終年度に投稿する予定である。そのための英文校正料金や投稿料、掲載料などの一部として使う計画があり、翌年度分として残した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究結果について、論文も1-2本準備中であり、その英文校正や投稿料、掲載料にあてる予定である。
|
Research Products
(4 results)