2014 Fiscal Year Research-status Report
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26460615
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
阿部 あかね 佛教大学, 保健医療技術学部, 講師 (70442192)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 精神科看護 / 生活療法 / 精神科作業療法 / 精神医療改革運動 / 専門職化 / 精神病院増床政策 / マスコミによる精神医療批判報道 / 精神病院不祥事事件 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず文献から、精神医療改革運動の中で生活療法批判を展開した批判派医師たちの主張と、批判された側の生活療法を担った看護者とコ・メディカルらの動向を整理した。次に生活療法がもっとも盛んであった1960~1990年代に看護活動に携わった元看護師に、生活療法の取り組みの実際と、生活療法批判への対応についてインタビューを行った。 それらからわかったことは、藤沢敏雄を代表とした生活療法批判側は、「生活療法批判とは、生活指導や作業療法といった生活療法そのものの否定ではない。そうではなく、精神病院という場が社会から閉ざされ、医師を頂点に入院患者を最下層にすえたヒエラルキー・支配構造で成立している反治療的といえる場であり、そこで行われる生活療法は治療的無意味であり大きな弊害がある」と主張した。他方、生活療法を担った側は批判を受け「ではどうすれば治療的で良い生活療法になるのか」という方法の模索や、あるいは「生活療法をすっかり止めてしまい、患者の自由と主体性に任せる」という放任ともいえる姿勢、または「批判は聞き流し、従来の生活療法を含めた看護活動をそのまま継続した」等の態度があったことがわかった。すなわち批判派の主張は、臨床現場でそのままに受け止められたのではないということである。そして看護者らは批判を受けたことで「生活療法」という言葉を廃しはしたものの、SSTの拡大解釈的導入も含めて、その後も生活指導や作業療法を続けたのである。看護者らはそのように批判をかわしたといえる。 これらは、戦後、わが国の精神科看護実践の成立と変遷の経緯を明確にしたものであり意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分割テーマのうち29年度予定であった「精神医療内部からの生活療法への批判」を、インタビューの機会を早めに得られたことから26年度に行った。よって年度ごとの推進計画とは順序違いが生じているものの、研究全体を概観すればおおむね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本来26年度予定であった分割小テーマである、生活療法のうちの作業療法に関し、「作業療法士参入により、精神科看護者の業務区分の変更や葛藤」について文献とインタビュー調査を進める予定である。
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Causes of Carryover |
29年度に予定していた研究の分割小テーマを本年度に行ったことで、当初の計画に変更が生じている。具体的には、文献収集やインタビュー調査のための旅費が安価で済んだことが大きい。他にインタビューのテープ起こしを業者に委託する予定であったが自分で行ったことや、関連書籍も十分には収集できなかったことがある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
26年度予定であったインタビュー調査や、該当文献の収集を進めてゆく。
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Research Products
(2 results)