2016 Fiscal Year Research-status Report
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26460615
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
阿部 あかね 佛教大学, 保健医療技術学部, 講師 (70442192)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 精神科看護 / 生活療法 / 精神科作業療法 / 専門職化 / 精神医療改革運動 / 精神病院不祥事事件 / マスコミの精神医療批判 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)今年度は、引き続きテーマ課題のうちのひとつ「精神医療界内部からの生活療法批判、作業療法批判」について研究を進めた。特に、これら批判されたことによって、精神科看護者の職業アイデンティティをめぐる葛藤状況を明らかにした。このテーマ課題に時間を要しているが、本研究の目的の一つである、専門職としての精神科看護確立において、そこでの職業アイデンティティ獲得に関する考察を深めることは、今日の精神科看護のルーツとして重要な項目であると考えたことによる。 具体的には①生活療法が療法という「治療」としての意味づけを付与され、看護活動として広く普及した点。②科学的看護が追及される看護界全般の風潮と同調する一方で、「個別性重視の看護」を志向せざるをえなくなったともいえる。この反する価値観の葛藤状況について考察した。これは、「精神科看護の職業アイデンティティ形成上の葛藤~生活療法問題をめぐって~」と題し、2017年夏の学会で発表する予定である。 2)「精神病院における看護者による不祥事事件への反省」および「マスコミ報道による精神病院批判が看護に及ぼした影響」についてはインタビュー調査を行ったものの、ほとんどの臨床の看護者にとっては興味や関心が向かない問題であったこと、臨床看護への影響はなかったとの結果であった。その理由を考察する必要があると考え、文献資料の検討に切り替えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
4つのテーマ課題のうちのひとつを掘り下げることに時間を費やしているため。 「精神医療界内部から生活療法批判、作業療法批判」が行われたことの経緯や議論の詳細についてはすでに「精神医療改革運動を看護者はどのようにみていたのか」(2014年)生活療法批判をめぐる齟齬――精神科看護者による生活療法批判の受け止め方」(2015年)で報告した。しかし、そこでは看護者の職業アイデンティティをめぐる問題や葛藤について取り上げるには至らず、本来のテーマを考察するうえで欠かせない事項であるため、今年度はそこに取り組み研究を行ったことが進捗を遅らせている原因である。取り掛かったものの進んでいない別テーマについて論文記述を急ぐ。
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Strategy for Future Research Activity |
1)「精神病院不祥事事件に関する看護者の反応」「マスコミ批判が看護者に及ぼした影響」について、文献等を進め研究報告をまとめる。 2)「作業療法士専門職の参入による精神科看護への影響」についてインタビュー、文献収集、検討に着手してゆく。 3)「精神医療界内部からの生活療法・作業療法批判」に関し、2017年夏の学会で発表を行う。4)次年度は最終年度となるため、これまでの研究を報告集にまとめる。(100部程度)
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Causes of Carryover |
1)参加予定であった学会が二つ、大学業務の都合で参加できなかったこと。 2)「精神病院不祥事事件に関する看護者の反省」「マスコミ批判が看護者に及ぼした影響」に関し3名の方にインタビュー調査を行ったものの、「興味や関心はなかった」「臨床現場への影響はなかった」という結果であった。インタビュー調査を重ねてゆくことよりも、看護者の社会性や職業倫理、アイデンティティのあり方について考察する必要があると考え、文献検討に切り替えたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1)上記テーマについて、文献検討を進めるべく、日本精神科看護協会誌バックナンバー、看護者の手記、病院記念誌等の文献を収集する。そのために、日本精神科看護協会品川事務局図書室、国立国会図書館、各都道府県立図書館に行く必用があり、その出張旅費、コピー代。2)「作業療法士専門職の参入による精神科看護への影響」について、2名にインタビュー調査を行うことの出張旅費と簡単な謝礼。3)「精神医療内部からの生活療法・作業療法批判」に関し、2017年夏の学会にて発表を行う。その学会参加費、出張旅費。 2)次年度が最終年度となるため、これまでの研究成果を報告集にまとめる印刷費(100部程度)
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