2016 Fiscal Year Research-status Report
認知症高齢者の食行動異常の改善を目指した包括的支援の研究
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26460617
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Research Institution | Kawasaki University of Medical Welfare |
Principal Investigator |
福永 真哉 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (00296188)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 光 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (80326420)
中谷 謙 関西福祉科学大学, 保健医療学部, 准教授 (90441336)
池野 雅裕 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 講師 (60612976)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 摂食嚥下障害 / 認知症 / 食行動の異常 / 神経心理学 / 脳科学 / 高次脳機能検査 / 認知機能訓練 / 高齢者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、認知症をもつ高齢者の食行動異常について、神経心理学的、脳科学的視点から病態解明を行い、食行動の改善を目指した支援を実施、検証することで認知症高齢者の食の支援体制の構築を目的としている。本年度は、作成した評価プロトコールにそって、研究実施施設である福山市の老人保健施設において入所中の認知症短期集中リハビリテーション実施加算対象高齢者に対し、認知機能障害と摂食嚥下障害の実態を把握するための調査を実施した。調査目的は、認知機能が低下した高齢者の食行動異常について、摂食嚥下機能評価と神経心理学的、脳科学的視点からの評価を行い、研究協力施設のディケアプログラムの一環として行われる認知機能訓練実施前後で、食行動に改善がみられるのか検証する。昨年度までに作成した評価プロトコールに従い、高齢者の基本情報、障害レベルと摂食嚥下機能障害、高次脳機能障害の情報を収集し、加えて摂食嚥下機能評価、高次脳機能評価、意欲の評価、食行動の評価を認知機能訓練実施前後に行いデーターを収集した。調査の結果、老人保健施設に入所中の全高齢者のうち、認知機能障害をもつ高齢者は70%を占め、ほとんどの対象者が脳血管障害の既往をもち、中には脳外傷や閉塞性肺疾患をもつ対象者もいた。このうち認知症短期集中リハビリテーション実施加算対象で認知機能訓練を実施した高齢者19人に対し、認知機能訓練実施前にHDS-R、MMSE、TMT、やる気スコア、TobaらのVitality index、舌圧測定、ディアドコキネシス、RSST、MWST、藤島の摂食嚥下スコア、食行動の評価表を用いた評価を実施し、データーを収集した。翌年度は認知機能訓練実施前後に得られたデーターを分析し、対象高齢者の認知機能の変化と摂食嚥下機能の変化から認知症高齢者の摂食嚥下機能の改善につながる要因を特定する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
28年度の計画では、研究実施施設である福山市の老人保健施設において入所中の認知症短期集中リハビリテーション実施加算対象高齢者に対し、認知機能障害と摂食嚥下障害の実態を把握するための調査を実施することにしていた。現時点では、認知機能評価であるHDS-R、MMSE、TMT、やる気スコア、TobaらのVitality index、摂食嚥下機能評価である舌圧測定、ディアドコキネシス、RSST、MWST、藤島の摂食嚥下スコア、食行動の評価表を用いた評価の測定が順調に実施でき、データーの欠落した対象者が少なかったことから、データー収集予定人数到達まで若干の遅れがあるが、おおむね順調に進展しているとした。脳活動の計測は一部の施行可能対象者のみに限定して施行した。研究成果の一部を日本言語聴覚学会(京都)において発表し、論文としてJapanese Journal of Comprehensive Rehabilitation Science誌ならびに認知神経科学誌において公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、おおむね当初の計画に基づき研究を進めていく予定である。最終年度のため、研究協力施設である老人保健施設に入所中の認知症短期集中リハビリテーション実施加算対象高齢者に対し、評価プロトコールに従って、これまで収集してきた認知機能訓練前後の摂食嚥下機能評価、高次脳機能評価、意欲の評価、食行動の評価結果をとりまとめ、認知機能訓練によって、認知症患者の摂食嚥下機能改善に関与する要因を分析する。摂食嚥下機能には認知機能の基礎となる脳機能活動が関与していると考えられるため、一部の対象者に光トポグラフィ装置による脳機能計測を実施し、脳活動評価の結果から、摂食嚥下運動と脳活動の関連も検討する予定である。そして平成28年度の調査結果に基づき、対象高齢者の摂食嚥下機能障害、認知機能障害と脳機能を低下させる要因を分析し、その結果を考察する予定である。得られた結果は、日本言語聴覚学会(島根)、日本摂食・嚥下リハビリテーション学会(千葉)などにおける学会発表や川崎医療福祉学会誌に投稿することで研究成果の公表を行う。
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Causes of Carryover |
前年度に実施する予定であった実地調査が遅延し、次年度に延長して実施したため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
立案申請した研究計画にそって研究データーの解析と共同研究者との打ち合わせや学会発表を実施するため、主に物品費、研究協力施設にて実地調査のための調査実施費ならびに学会での成果報告を中心とした旅費、研究協力者との打ち合わせ費用、研究協力者の研究とりまとめにあたっての分析手技習得費用を支出する予定である。内訳は物品費として、図書等研究資料、記録メディア、文具、論文別刷、英語での成果発信のための英文校正料として使用する。また、研究データー解析のためのパソコン1台と統計ソフト1セットを購入する。旅費は、研究打ち合わせと研究代表者自身が学会(時期・学会名未定)で成果の一部を発表するために計上する。人件費・謝金は、主に研究補助員によるデータの入力・分析と研究資料の整理のためのアルバイト賃金として使用する。その他として、学会参加費などの支出を予定している。
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Research Products
(10 results)