2014 Fiscal Year Research-status Report
児へのワクチン接種を拒否する保護者のリスクコミュニケーションに関する研究
Project/Area Number |
26460618
|
Research Institution | Nishikyushu University |
Principal Investigator |
横尾 美智代 西九州大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00336158)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮城 由美子 福岡県立大学, 看護学部, 准教授 (20353170)
早島 理 龍谷大学, 文学部, 教授 (60108272)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 予防接種 / 保護者 / anti vaccine / 聞き取り調査 / リスクコミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は予防接種を受けている児と保護者の育児上の方針を理由として予防接種を受けていない児が地域共同体の中で健康かつ安全に生育するためのよりよい方略を模索することである。本年度はフォーカスグループインタビューを行い、予防接種を積極的に拒否している保護者と児への接種実施済の保護者の間の問題点を鋭敏化した。 調査協力者である予防接種年齢あるいは予防接種年齢未到達児を持つ保護者(母親)を5名前後にわけてフォーカスグループインタビューを実施した。85%の保護者は我が児へ定期予防接種を実施済みまたは実施途中であった。インタビューは各グループともに2時間前後、個人的属性等質問紙調査を併用した形式で実施した。結果、予防接種年齢未到達児、接種済み児と接種なし児が地域社会で接触、交流することに保護者からは多少の不安の声は聞かれたが、児に予防接種を与えていない保護者を非難するような発言はなかった。その背景には、予防接種済み児を持つ保護者は、予防接種なし児の保護者のことを「ある種、尊敬の対象、自分には不可能な子育てを行っている母親」、「理想的育児の実践者」、「子どもを病気から守る知識と技能を持ち、丁寧な子育てを行っている」等、よき母親というポジティブなイメージで捉えていることが考えられた。予防接種なし児による地域での感染症流行のリスク増加は、「彼女たち(接種なし児の母親)だったら、他者への感染リスクコントロールは可能なはず、すでに行っているはずだ」という信頼の声が聞かれた。 つまり、育児上の理由から児に予防接種を与えない保護者の一部に見られるオリジナリティの高い出産、ライフスタイル、健康管理へのこだわりは、保護者のピアレビューで1つの望ましい育児像として他の保護者から評価されている可能性が示唆された。しかしながら評価の根拠は印象やイメージであり、根拠となるエビデンスへの言及はみられなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度および平成27年度上半期までの研究計画であった項目のうち、(1)リスクコミュニケーション実施のための情報収集は予定通り実施できた。(2)リスクコミュニケーションの実施準備も予定通り進行できた。(3)質問形式によるリスクコミュニケーションの協力者の登録、(4)質問形式によるリスクコミュニケーションの実施は、協力者の登録が完全には完了していないため進行が遅れている一方、平成27年度上半期に実施予定にしていた(5)フォーカスグループインタビューは前倒しで平成26年度にスタート、成果を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の調査内容の精査を踏まえて、本年度は(1)我が児へ予防接種を与えていない保護者のみを対象としたフォーカスグループインタビューの実施、(2)感染症に関心のある小児科医、日常業務の1つとして予防接種を行っている小児科開業医、感染症専門家とともに、これまで明らかになった問題点についてディスカッションし、リスクコミュニケーション資料の準備に着手する予定である。また、これまでの保護者向けインタビューデータから明らかになったことがらを学会誌に投稿予定である。
|
Causes of Carryover |
昨年度末、ラップトップが不調になり研究遂行上支障が出始めた。ところが充分なスペックを持つ機種を購入するには予算の不足が判明したため、翌年度(平成27年度)予算の一部と合わせて購入を行うことを考えたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
「次年度使用額」の127,071円と平成27年度分(直接経費1,500,000円)を合わせて使用する。ラップトップ一式購入費(設備・備品費)として約250,000円、物品費40,000円、旅費1,050,000円、人件費・謝金230,000円、その他を予定していた金額(180,000円)より減額して57,071円とする。
|
Research Products
(7 results)