2014 Fiscal Year Research-status Report
乳癌および肺癌におけるTYRO3を標的とする治療法開発の妥当性の検討
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26460627
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
南 博信 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60450574)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高尾 信太郎 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10717218)
伊藤 智雄 神戸大学, 医学部附属病院, 教授 (20301880)
眞庭 謙昌 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50362778)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 乳がん |
Outline of Annual Research Achievements |
IGF-1受容体阻害薬の耐性乳癌細胞株ではTYRO3のリン酸化が亢進していた。TYRO3は治療標的としては注目されていなかったが、siRNAを用いてTYRO3の発現を低下させたところ耐性株のみならず親株でも増殖が抑制された。各種乳癌細胞株で検討したところ、luminal-typeの細胞株で増殖抑制が観察され、ERK1/2、S6KやSTAT3、cyclin D1のリン酸化も低下していたが、非感受性細胞株では低下しなかった。これらより、TYRO3がIGF-1R阻害薬の耐性克服のみならず、乳がんの治療標的となる可能性が高い。 本研究ではTYRO3を標的とした薬物治療の開発を最終的に目指す。乳癌におけるTYRO3の臨床的意義を明確にするため、乳癌の手術検体でTRYO3発現を検討し、その発現と予後との相関を解析する。乳癌の予後因子である各種臨床病理学的情報も収集しTYRO3発現との関連を検討するとともに、予後予測因子としてのTYRO3の意義を検討する際に共変量として多変量解析を行いより正確に評価する。 TYRO3の発現は、RNA in situ hybridization (ISH)技術を用いたRNAscopeや免疫組織化学法を用いて検討する。TYRO3関連分子であるGas6やProtein S、アネキシンIIなどの発現も検討する。また、確立された細胞株を用いた2次元培養系では薬物の抗腫瘍効果は正確に評価できない。そこで、TYRO3を標的とした治療の評価に用いるため、3次元培養系や患者検体から樹立したxenograftから作成したin vitro評価系を確立する。TYRO3発現乳癌が予後不良であれば、我々が目指しているTYRO3を標的とする治療法開発の妥当性が支持される。また、肺癌検体を用いてもTYRO3に関して同様の臨床病理学的検討を行い、肺癌治療の標的として可能性も検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
兵庫県立がんセンター乳腺外科で手術された乳癌患者で研究に用いる同意が得られている患者の調査を開始し、本研究の実施計画書の作成に着手した。まだ対象となる症例数の概要が判明せずTYRO3の解析は着手していないため、計画よりは若干遅れていると自己評価している。 TYRO3を標的とした治療の評価に用いるための3次元培養系を確立し評価した。3次元培養系ではNonoCulture Plateを用いて足場依存的な培養を行い、乳癌治療として汎用されているパクリタキセル、ドキソルビシン、フルオロウラシルの効果を2次元培養系と比較した。その際臨床におけるAUCと同等の薬物暴露が得られるような濃度を用いた。検討した各種乳癌細胞株のうち、3次元培養でdense multicellular spheroidを形成した3細胞株では2次元培養と比較してパクリタキセルおよびドキソルビシンによるアポトーシス誘導は抑制され、抗腫瘍効果も減弱していた。一方、dense multicellular spheroidを形成せず疎なspheroidしか形成しなかった3細胞株ではこのような差は見られなかった。また、患者検体から直接樹立したpatient-derived xenograftを用いてパクリタキセルおよびドキソルビシンの薬理作用を検討したところ、いずれの薬物の効果も2次元培養では3次元培養よりも大きかった。Dense multicellular spheroidでは内部は低酸素状態となっており、Ki67陽性率も低値であった。これは2次元培養は抗腫瘍薬の効果を過大評価していることを示し、3次元培養の方がより生体での腫瘍を反映し抗腫瘍効果の評価系としてより適していると考えられた。また、patient-derived xenograftを用いても3次元培養系で抗腫瘍効果を評価できることが確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
TYRO3の発現は、まずRNA in situ hybridization (ISH)技術によるRNAscopeを用いて、TYRO3のRNAの発現を解析することを検討する。この方法では免疫組織染色用の抗体を作成する必要がなく、RNAを1コピーから検出可能で細胞内局在を検証可能である。また、プローブを変えることによりTYRO3のリガンドであるGas6やProtein S、Gas6を誘導することが知られているアネキシンIIなどの発現も検討できる。Tyro3やGas6は標準プローブとして用意されていないので、カスタマイズしてプローブを作成する。免疫組織染色(IHC)と比べてこの方法では一般的にバックグランドのシグナルが低いため、より詳細な検討が期待できる。 一方、TYRO3のRNAのみならずタンパクの発現の臨床的重要性も検討する。TYRO3の発現が乳癌あるいは肺癌の予後因子、あるいはTYRO3を標的とする治療の効果予測因子であることが示されれば、TYRO3の発現を実地診療で解析することにより患者の利益を最大にできる。そのためには、安価にTYRO3の発現を解析できる免疫組織染色法を確立する必要がある。そこでTYRO3に対する免疫組織染色法も確立する。 根治的目的で乳がんの切除手術を受けた患者の腫瘍でTYRO3の発現をRNAscopeあるいは免疫組織染色法で調べ予後との相関を検討する。その際、乳癌の予後因子となる可能性のある各種臨床病理学的情報も収集しTYRO3発現との関連を検討するとともに、予後予測因子としてのTYRO3の意義を検討する際に共変量として多変量解析を行いより正確に評価する。 TYRO3を発現している乳癌が予後不良であれば、我々が目指しているTYRO3を標的とする治療法開発の妥当性が支持される。また、TYRO3を指標として術後補助療法の個別化が可能性となる。
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Causes of Carryover |
現時点で対象とする乳癌症例の調査をしている段階で、RNAscopeを用いたRNA発現解析や免疫組織化学法を用いたタンパク発現解析までいたっていない。そのため、これらのために計上した経費を使用していないため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には本研究の対象となる乳癌症例の概数を特定し、まずRNAscopeを用いたRNA発現解析に着手する予定である。合わせて、免疫組織化学法を用いたタンパク発現解析を行う計画である。今年度計上していたこれらの経費を次年度に使用する予定である。
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[Presentation] Comparison of 2D- and 3D-culture models as drug-testing platforms in breast cancer2015
Author(s)
Yoshinori Imamura, Toru Mukohara, Yohei Shimono, Yohei Funakoshi, Naoko Chayahara, Masanori Toyoda, Naomi Kiyota, Shintaro Takao, Seishi Kono, Tetsuya Nakatsura, and Hironobu Minami
Organizer
AACR Annual Meeting 2015
Place of Presentation
Philadelphia
Year and Date
2015-04-17 – 2015-04-20
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