2014 Fiscal Year Research-status Report
抗悪性腫瘍薬誘発性ざ瘡様皮疹の分子機構解明とその治療薬の開発に関する薬学基盤研究
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26460633
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
佐藤 隆 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (90266891)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大河内 仁志 独立行政法人国立国際医療研究センター, その他部局等, その他 (30185235)
林 伸和 公益財団法人冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (90272575)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 抗悪性腫瘍薬の副作用 / ざ瘡様皮疹 / 上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ / ゲフィチニブ / 皮脂腺 / 脂腺細胞 / 皮脂 / 薬剤の皮膚移行性 |
Outline of Annual Research Achievements |
上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ(EGFR-TK)を選択的に阻害する抗悪性腫瘍薬は共通の副作用として皮膚障害,なかでもざ瘡様皮疹を高頻度(>60%)に発症する.しかし,薬剤の経口または静注投与によりなぜざ瘡様皮疹が多発するのか,その副作用機構は十分に理解されていない.本申請研究では,抗悪性腫瘍薬のざ瘡様皮疹の発症機構解明とその治療・予防法(薬)の開発を目的に,平成26年において,(1)ヒト脂腺細胞の調製とその不死化細胞の開発,(2)抗悪性腫瘍薬の皮膚移行性と(3)ヒト脂腺細胞における抗悪性腫瘍薬による皮脂産生調節を検討した.以下に研究成果の概要を記す。 (1)ヒト脂腺細胞の調製とその不死化細胞の開発:分担研究者(冲中:林,国際医療:大河内)との連携のもと,採取したヒト皮膚組織(冲中)より脂腺細胞を樹立(東薬:佐藤,秋元),その細胞不死化細胞の開発(国際医療)を行った.細胞老化阻止遺伝子を組み入れることで初代培養細胞の細胞特性を維持した日本人由来不死化脂腺細胞の樹立に成功した(1例). (2)抗悪性腫瘍薬の皮膚移行性:ゲフィチニブ投与患者よりざ瘡様皮疹内容物を採取し(1例),未代謝ゲフィチニブの存在を確認した.また,エルロチニブやセツキシマブ投与患者由来検体(合計3例)も採取した. (3)脂腺細胞における抗悪性腫瘍薬による皮脂産生調節:セツキシマブは皮脂産生にほとんど影響を及ぼさなかった.しかし,MEK阻害を分子機序としEGFR-TK阻害薬と同様にざ瘡様皮疹発症の臨床報告のある新規抗悪性腫瘍薬トラメチニブが皮脂産生促進作用を有することを発見した. 以上,本年度の研究成果は,不死化細胞開発の組織体制確立,抗悪性腫瘍薬の皮膚移行性の確認,抗悪性腫瘍薬によるざ瘡様皮疹発症の普遍性の発見という薬学的かつ臨床上有用なエビデンスである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請研究の3つの柱(1~3)は,研究分担者との連携のもと本年度の目標をほぼ達成できたと評価する.(1)抗悪性腫瘍薬の皮膚移行性と皮脂腺機能調節:臨床検体採取は患者同意が必要なので思うように集められない.しかし,2例目のゲフィチニブ検体解析にて再現性を確認でき,最低限の目標は達成できた.また,作用機序の異なる抗悪性腫瘍薬も皮脂産生を促進することを発見し,新たな研究課題を見出したことは高く評価する.(2)抗悪性腫瘍薬によるざ瘡様皮疹に関する臨床研究:他の抗悪性腫瘍薬投与患者由来検体を採取できたことから,臨床研究が広がりつつある.しかし,その解析に至らなかったこと,研究協力施設(長野赤十字)との連携ができなかったことは反省点である.(3)不死化ヒト脂腺細胞の開発: 1例の不死化細胞の樹立に成功し,初年度の目標は達成した.しかし,効率よく不死化する技術については改善の余地があることから,次年度への継続課題であると認識している.
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Strategy for Future Research Activity |
研究組織については,本年度と同様に東薬,沖中,国際医療の連携を密にして,不死化細胞の開発と実験活用を推し進めていく.また,薬剤の副作用に関する臨床応用については,研究協力施設を新規に開拓してでも臨床検体の収集に努力する予定である.さらに,臨床上ざ瘡様皮疹という薬剤副作用のEGFR-TK非依存性も発見されたことから,ざ瘡様皮疹の病態機構を細胞内シグナルの面から網羅的に解析する必要があると考えている.
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Causes of Carryover |
研究分担者:林伸和(冲中) 1月から3月の年度末に行う予定の検体採取が,患者都合により4月以降の年度明けに延期となったため,送料や消耗品,梱包資材等の購入を年度明けに変更したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究分担者:林伸和(冲中) 平成27年度の計画に平成26年度から延期された検体採取を含めるため,その追加分経費として使用する。
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Research Products
(5 results)