2015 Fiscal Year Research-status Report
アラームシグナル細胞外RNAの制御による血管恒常性維持
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26460668
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
小山 高敏 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 准教授 (20234916)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | RNA分解酵素 / 血球 / 血管内皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
血管の損傷により細胞から放出される細胞外RNAは新しい凝固促進因子、血管透過性因子であり、RNaseによって阻害される。8種類のRNaseの中で、血漿中に最も多く、RNA分解作用を強く持つRNase 1は膵臓や血管内皮細胞に発現することが知られているが、血球における詳細な発現や局在に関しては明らかではない。 血小板、単核球(MNCs)、多形核顆粒球(PMNs)、赤血球(RBCs)におけるRNase 1とその阻害因子であるRNase inhibitor (RI) のmRNAレベル、タンパク質レベルでの発現と局在、細胞内外のRNase活性を調べ、ヒト臍帯静脈内皮細胞株であるEAhy926と比較した。また、血小板活性化物質であるトロンビンによって刺激した血小板のRNase発現を調べた。 血管内皮細胞が放出するRNase活性は血球が放出するRNase活性に比べて50倍高く(60分後)、また時間が経つにつれて活性が上がっていることを明らかにした。細胞溶解液中のRNase活性においても血管内皮細胞が血球の10倍と最も高い活性を保持していた(60分後)。RNase 1のmRNAレベルの発現は血管内皮細胞が血球の2.6倍で最も高かったが、RIのmRNAレベルの発現に大きな差は見られなかった。血管内皮細胞と血小板においてRNase 1がvon Willebrand factor (VWF)と一部共局在している様子が見られた。免疫蛍光染色によりトロンビンを加えて活性化させた血小板中のRNase 1が活性化していない血小板より少なく見られたことから、トロンビン刺激した血小板内外のRNase活性を測定した。しかし細胞溶解液中のRNase活性が低下していることに対し、上清中のRNase活性に有意な差は見られなかった。RNase 1と共にRIが放出され、RNase活性を抑制している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RNase活性の発現が高い血管内皮細胞と比較して血球からのRNase活性発現が低いことを明らかにした。また、mRNAレベルの発現においてRNase 1の発現がRIの発現より高いことから、RIがRNase 1を抑制していることが推測できる。従って血管損傷部では高いRNase活性を持つ血管内皮細胞が損傷され、血小板、白血球が集まって血栓を形成することでRNase活性を低下させている機序が想定できる。しかし炎症部位では活性化された血小板や白血球が病的な血栓形成を促進する可能性も考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
血管内における血管内皮細胞、血球細胞による、細胞外RNA/ RNAase/ RNase inhibitor発現を明らかにしつつあるため、細胞内血液凝固・血管透過性調節機序について、より詳細な解析を継続してゆく。トロンビンやその他の血小板凝集惹起物質、炎症性サイトカイン、抗腫瘍薬などの薬剤によるRNase活性の変化にも注目してゆく。それらは、血管内恒常性維持に関与するアラームシグナルとしての柴葉王がRNA放出とその調節機序を明らかにする、と考えられるからである。
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Research Products
(2 results)