2015 Fiscal Year Research-status Report
肝硬変を引き起こすフィブリノゲン低下症の鑑別法の開発と分子生物学的発症機序解明
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26460672
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
奥村 伸生 信州大学, 学術研究院保健学系, 教授 (60252110)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺澤 文子 北陸大学, 新学部設置準備室, 教授 (40109210)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フィブリノゲン異常症 / 肝小胞体蓄積病 / 細胞内封入体 / 蛍光抗体法 / CHO細胞 / HuH細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度に新たに論文発表された、肝小胞体蓄積病を呈する異常フィブリノゲン(Fbg)症、γAsp316Asn例とγGly366Ser例についてCHO細胞での発現実験を新たに追加した。ELISA法によるFbg定量の結果、γAsp316Asn例とγGly366Ser例に基づくCHO細胞はともに、細胞内に異常Fbgが蓄積し、細胞外にわずかしか分泌されないことが明らかになった。また、抗Fbg抗体による蛍光抗体染色の結果、γAsp316Asn CHO 細胞では、細胞質全体にわたる長い針状封入体が観察された。これは、今までの3種類の CHO 細胞では観察されなかった特異な形態であった。一方、γGly366Ser CHO細胞では、正常Fbg産生CHO細胞と同様な染色像が得られ、昨年度明らかにしたγGly284Arg症例のCHO細胞に近い性質と判断した。 肝小胞体蓄積病を呈し繊維状細胞質封入体形成が最も顕著であったγArg375Trp CHO細胞において、アポトーシスの亢進がある可能性を疑い、annexinVとプロピジュームヨウ素を用いた方法と、tunel法を用いたフローサイトメトリーで、それぞれ前期アポトーシスあるいは後期アポトーシスの亢進を解析した。その結果、どちらも正常Fbg産生CHO細胞と変わらない結果であった。このことは、繊維状細胞質封入体を多数形成しているCHO細胞でも特にアポトーシスの亢進は起こらず、正常形態の細胞と同程度であることが証明された。 肝小胞体蓄積病を呈し繊維状細胞質封入体形成するγArg375Trp以外のγThr314Proとγ346-350欠損型の異常γ鎖産生プラスミドをAα鎖、Bβ鎖との組み合わせあるいは単独でCHO細胞で発現する実験を行った。その結果、昨年度のγArg375Trpプラスミドの結果と同様に、異常γ鎖産生プラスミドはAα鎖とBβ鎖の3種が同時に産生され組み立てられないと、繊維状細胞質封入体を形成しないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度に新たに論文発表された、肝小胞体蓄積病を呈する異常フィブリノゲン症、γAsp316Asn症例とγGly366Ser症例についてCHO細胞での発現実験を行い、蛍光抗体法で染色性を確認する実験を新たに追加することになり、時間を要した。このため、平成27年度に開始する計画であった、肝小胞体蓄積病を呈するにもかかわらず繊維状細胞質封入体を唯一観察できなかったγGly284Arg症例のCHO細胞に、異常タンパク分解系を抑制する物質を添加することにより、繊維状細胞質封入体形成を誘導できるかどうかの実験が開始できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、平成27年度に開始する計画であった、肝小胞体蓄積病を呈するにもかかわらず繊維状細胞質封入体を唯一観察できなかったγGly284Arg症例のCHO細胞に、異常タンパク分解系を抑制する物質を添加することにより、繊維状細胞質封入体形成を誘導できるかどうかの実験を開始する。また、肝小胞体蓄積病を呈しないフィブリノゲン分泌低下症例のCHO細胞と比較検討する。 さらに、繊維状細胞質封入体形成をするCHO細胞をもちいて、異常タンパク質の分解を誘導する物質を探索して、肝硬変への進展を抑制できる治療薬候補を見つけ出す研究も行いたい。
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Research Products
(2 results)