2014 Fiscal Year Research-status Report
腸管凝集性大腸菌の凝集関連因子の同定と新規検査法の開発
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26460681
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
藺牟田 直子 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (00643470)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西 順一郎 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (40295241)
大岡 唯祐 宮崎大学, 医学部, 助教 (50363594)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 腸管凝集性大腸菌 / enteroaggregative / EAEC / 基質拡張型βラクタマーゼ産生大腸菌 / ESBL / aggR遺伝子 / CTX-M遺伝子 / biofirlm |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は2010年までに鹿児島県で収集した腸管凝集性大腸菌(EAEC)(typical EAEC169株とatypical EAEC44株)および大阪府立公衆衛生研究所で分離されたtypical EAEC 31株の計244株を対象とした。各株のO・H血清群を決定し、病原遺伝子分布状況をPCRで検索し、さらにMLSA(multilocus sequence analysis)による系統解析を行った。その結果、typical EAECではO111・O25・O126・O86などがみられ、付着因子AAFのIからVのうちいずれかの遺伝子を保有していた。O untypableのtypical EAECやatypical EAECでは、既知の付着遺伝子の検出率は低かった。EAEC O25の多くは、尿路病原性大腸菌(UPEC)の付着因子遺伝子afaBとともにESBL遺伝子CTX-M-14を高率に保有していた。系統解析では、EAECはA、B1、B2、Dの4系統群に広く分布し遺伝的多様性が著明であり、O血清群ごとにクラスターを形成していた。EAEC O25は、尿路病原性大腸菌などの腸管外病原性大腸菌が含まれるカテゴリーB2に属しており、ESBL産生菌として世界的に蔓延しているO25:H4:ST131クローンと同じH4とST131を示した。このクローンは鹿児島県で2003年に突然出現しており、それ以前から見られていたEAEC O111・O126にはESBL産生菌がみられなかったことから、UPEC O25:H4:ST131がCTX-M-14とともに新たにEAEC病原プラスミドを獲得して出現したと推定された。また、大阪由来株のうちO111 1株とO86 2株にもESBL産生菌(CTX-M-14/15)が確認され、これらは従来のEAECがCTX-M遺伝子を持つプラスミドを獲得したものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、2010年までに鹿児島県で収集したEAEC株に加えて、新たに大阪府立公衆衛生研究所から分与されたtypical EAECを含めて解析することができた。これによって、異なる地域間でEAEC株の特徴を比較することが可能となり、課題遂行にたいへん有意義だった。しかし、その解析に時間を要したため、2011年以降の鹿児島県での収集株についての解析ができなかったことが今年度の課題であった。
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Strategy for Future Research Activity |
2011年から2014年までに収集された大腸菌1500株から、EAECおよびESBL産生菌をスクリーニングし、付着因子などの病原遺伝子やMLSAを行う予定である。また、EAECのバイオフィルム形成能とHEp-2細胞付着試験を行い、O血清群・付着因子の種類ごとに付着能が異なるかどうかの検討を行う。また、今年度の検討で既知の付着因子を同定できなかったO untypableのtypical EAECやatypical EAECについて、新規付着因子の同定をめざし、EAECの検査法の開発の基盤とする。
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Causes of Carryover |
大阪府立公衆衛生研究所で分離されたEAECの解析は当初次年度の予定であったが、予定より早く分与されたため平成26年度に実験をすることになった。その解析に時間がかかったため、2011年以降の鹿児島県での菌株の解析を次年度に延期したことが大きな理由である。またEAECのバイオフィルム形成能とHEp-2細胞付着試験も次年度に延期したことも影響した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の菌株の遺伝子解析と付着試験に要する実験消耗品の費用として使用する。またスクリーニング対象とする大腸菌株が8000株を超えており、研究の遂行上凍結保存用の冷凍庫が必要となったため、その一部を冷凍庫購入費用にあてる予定である。
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