2014 Fiscal Year Research-status Report
胃癌細胞における放射性ヨード治療の可能性の基礎的検討
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26460684
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
小飼 貴彦 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (40711693)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菱沼 昭 獨協医科大学, 医学部, 教授 (40201727)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヨード・トランスポーター / レチノイド / 胃癌 / AKT阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
分化型甲状腺癌の放射性ヨード治療は、腫瘍細胞におけるナトリウム/ヨード共輸送体 (Na/I Symporter, NIS) の発現に依存しており、NISを介した放射性ヨードの腫瘍細胞への選択的な取り込みは腫瘍を標的とした細胞毒性をもたらす。われわれは、胃癌細胞を用いた予備実験で、細胞分化に重要なレチノイド(ビタミンA誘導体)がNIS遺伝子の発現を増加させ、放射性ヨードの取り込みを有意に上昇させることを見出している。この結果は腫瘍細胞特異的な NIS の発現誘導を利用した胃癌に対する標的治療の可能性を示唆するが、その実現のためには、胃癌細胞におけるNIS 発現誘導のための細胞内シグナル伝達を解明し、より特異的かつ効率的にヨードの取り込みを誘導する必要がある。
2014年度には、まず合成レチノイドを用いて、2種類あるレチノイド受容体 (RAR, RXR) のうち、 RXRが胃癌細胞の NIS 発現誘導に重要であることを示した。レチノイドによるヨード取り込みの増加は3倍程度と小さかったが、AKT 阻害剤、MEK阻害剤の添加で、それぞれ 12 倍、6倍に増強された。
興味深いことに、AKT阻害剤とMEK阻害剤の NIS mRNA 誘導効果はほぼ同じであり、AKT阻害によるヨード取り込みのより大きな上昇には、遺伝子発現誘導以外の機序が関与している可能性が示唆された。そこで、AKT阻害によるNIS翻訳後の発現調節について検討を行った。すなわち、外因性NISを強制発現したサル腎細胞を用いて細胞表面の NIS タンパク質の発現量について評価したところ、AKT阻害剤処理により、細胞表面に発現するNISの増加が認められ、AKT阻害によるNIS の細胞内分布の変化がヨードの取り込み量の増加に関与していることが示唆された。これらの成果の一部は、2015年の日本内分泌学会学術総会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験計画(1)―NIS 誘導に必要なレチノイド受容体の同定 :各種レチノイド受容体に特異的なアゴニストを用いて検討したところ、MKN45 胃癌由来細胞株においては RXR が重要であることが示された。RXR アゴニストHX630 のNIS誘導のための有効濃度 (EC50) はレチノイン酸よりも小さかったが、最大の NIS 誘導効果については、レチノイン酸と同様、陰性コントロールに比べて3倍程度であった。
実験計画(2)―各種 AKT 経路阻害剤の NIS 発現増強効果の比較検討 :NIS 誘導に必要な AKT阻害剤の濃度はおおむね 10µMであり、小さいとは言えなかった。そこで、AKT に対する有効濃度 IC50 値がより低い TORC阻害剤を試したところ、NIS誘導のための EC50 を1/10 まで下げることができた。生体内で高濃度のレチノイドは重篤な副作用の原因となるが、今回の細胞実験で、TORC阻害剤の添加により、HX630 の EC50 も 1/10 程度まで下げることができた。
実験計画(6)―AKT 阻害剤の NIS の細胞膜上の発現に対する効果の検討:当初は2014年度に研究計画(3)“3次元培養条件下でのNIS 発現誘導の検討”を行う予定であったが、予備実験でAKT阻害剤の添加でNIS翻訳後の効果が示唆されたため、研究計画(6)“AKT阻害剤のNISの細胞膜上の発現に対する効果”を先行させた。2014年度は、GFPタグ標識したNISを強制発現させたサル腎細胞株 COS7 を用いて予備実験を施行した。すなわち、細胞表面に発現した蛋白質の分画をビオチン化により分離し、ウェスタン・ブロッティングにより細胞表面上の NIS-GFP融合タンパク質の発現量を検討した。その結果、AKT阻害剤添加により、3倍程度の細胞表面のNIS-GFPの発現の増加が観察された。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度に得られたNIS誘導に関するレチノイドおよびPI3K/AKT阻害剤の選択性に関する情報をもとに、研究計画(3)“3次元培養条件下での NIS 発現誘導の検討”、および (5)“初代培養細胞の確立と NIS 発現誘導の検討 “を始める。
研究計画(6)”AKT 阻害剤の NIS の細胞膜上の発現に対する効果の検討“については、2014年度には胃癌細胞株における効果的な遺伝子導入に関する検討も完了したので、それにもとづいて外因性 NIS-GFP融合遺伝子 の導入を行い、細胞表面上でのNIS-GFP発現量に対するAKT阻害剤の効果を、細胞表面蛋白質分画のウェスタン・ブロッティング、および共焦点レーザー顕微鏡を用いた観察にて検討する。
研究計画(3)施行により3次元培養でのNIS発現誘導が確認されたら、研究計画(4)胃癌モデルマウスの確立と NIS 発現誘導、に着手の予定である。
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Causes of Carryover |
(1)物品購入のさい、キャンペーン等の割引購入の機会を有効に利用したため。 (2)学会参加費用(旅費などを含む)の一部を校費より捻出したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
学会参加費用や物品購入費として有効に利用する予定である。
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Research Products
(4 results)