2014 Fiscal Year Research-status Report
全ゲノム解析と質量分析による抗酸菌の新たな分類同定法の確立
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26460686
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
松島 早月 杏林大学, 医学部, 実験助手 (80231596)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 卓 杏林大学, 医学部, 教授 (00191768)
大塚 弘毅 杏林大学, 医学部, 助教 (70439165)
大西 宏明 杏林大学, 医学部, 准教授 (80291326)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 非結核性抗酸菌 / 全ゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度は、研究計画に基づき、以下の研究を実施した。 【1】抗酸菌DNAの抽出法の検討 全ゲノム解析を行うための次世代シークエンサーに使用するDNAは、通常のPCR等に使用するDNAに比べ高純度でかつ損傷の少ないものが要求される。抗酸菌は、ミコール酸などの特有の膜構造をもつため、薬剤に対する抵抗性が高く、他の菌に比べ純粋なDNAの抽出が困難であることが知られている。当初は、通常のダイレクトシークエンスに用いたDNAを使用したが、次世代シークエンサーでの塩基配列決定は困難であった。そこで、過去の共同研究者からの助言をもとにして、Qiagen Genomic-tip 100/Gを用い、以下の点を改良することで、次世代シークエンサーに使用し得る純度のDNAを得ることができた。1)菌量をできる限り多く使用する。2)粉末のproteinase Kを用いる。3)エタノール洗浄を十分行う。 【2】各種抗酸菌の全ゲノム解析 上記の方法により、Mycobacterium kyorinenseおよびMycobacterium celatum type 1の基準株から高純度のDNAを抽出し、次世代シークエンサーION PGMを用いて、2菌種の全ゲノム配列の決定を行い、特に薬剤耐性関連遺伝子に注目して解析を行った。その結果、この2菌種では、結核菌におけるリファンピシン耐性に関与するとされるrpoB遺伝子のSer531Asp置換が認められた一方、エタンブトール耐性に関与するembB遺伝子、およびイソニアジド耐性に関与するinhA, katG, ahpC遺伝子では、結核菌で高頻度に報告されている塩基置換は認められなかった。この結果の一部はGenome Announcements誌に公表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
<成果が得られた点> 次世代シークエンサーに使用可能な高純度のDNAを得る方法を開発し、実際にMycobacterium kyorinenseおよびMycobacterium celatum type 12菌種において全ゲノム配列を決定できた。その結果から、この2菌種における薬剤耐性関連遺伝子に関する新たな知見が得られた。また、その結果がすでに専門誌に公表されている。 <遅れている点> DNA抽出法の開発に時間を要したため、現状で全ゲノム解析を施行できたのは2菌種にとどまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初の研究計画通り、抗酸菌の全ゲノム解析をさらに他の菌種に関しても施行する予定である。そのために、追加で非結核性抗酸菌の菌株を入手する。全ゲノム解析で得られたデータをもとに、抗酸菌の系統分類についての新たな知見を得ることを目指す。一方、質量分析装置による蛋白プロファイルの解析を行い、系統分類への応用を試みる。また、全ゲノムデータおよび蛋白プロファイルをもちいて、臨床検体を対象とした菌種同定能の検討を行う。
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Causes of Carryover |
研究の遅れにより、当初購入予定であった抗酸菌株を一部まだ購入していない。また、これらの菌株のDNA抽出や全ゲノム解析に用いるはずであった費用も未使用である。また、学会発表の旅費も使用していない。これらの理由により、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後、抗酸菌株を追加で購入し、DNA抽出・全ゲノム解析を行うこと、および本年度の日本臨床検査医学会で学会発表を行うことにより、26年度の未使用額分は当初の予定通りの目的に使用できる見込みである。
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