2015 Fiscal Year Research-status Report
管腔臓器内臓痛を引き起こすシグナル経路の同定と内臓知覚過敏治療への応用
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26460694
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Research Institution | Kansai University of Nursing and Health |
Principal Investigator |
宮井 和政 関西看護医療大学, 看護学部, 准教授 (60283933)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 上皮組織 / ATP分泌 / 5-HT受容体 / cAMP / 一酸化窒素 / cGMP |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、内臓感覚の起点となる管腔臓器上皮からのATP分泌を調節する分子シグナル系の詳細な解明と、ATP分泌抑制による内臓知覚過敏の緩和の可能性を明らかにすることである。平成27年度では、平成26年度における研究成果を基盤として、ATP分泌を抑制する2種類の分子シグナル系(貯蔵量作動性カルシウムイオン流入→一酸化窒素→cGMP、セロトニン受容体→アデニル酸シクラーゼ→cAMP)の膀胱上皮、直腸上皮における役割をより詳細に解明した。その結果、①膀胱上皮細胞ではATP分泌を抑制するセロトニン受容体5-HT1DとATP分泌を促進する5-HT4受容体がタンパク質レベルで細胞膜に確かに発現していること、②直腸上皮でATP分泌を抑制するセロトニン受容体5-HT4はcAMPを増加させることでその効果を発揮していること、③直腸上皮では貯蔵量作動性カルシウムイオン流入とその下流に存在する一酸化窒素-cGMP経路が膀胱上皮や食道上皮における作用と同様にATP分泌を抑制していること、を明らかとした。これらのことから、特に一酸化窒素-cGMP経路は管腔臓器上皮に共通して働くATP分泌抑制系であることが判明し、併発することも多い膀胱と直腸の内臓知覚過敏状態に対する効果的な創薬ターゲットとなる可能性が示唆された。 次に、直腸の内臓知覚過敏のモデル動物として、過敏性腸症候群様の症状を示すWistar Kyotoラットに着目し、伸展刺激による直腸上皮からのATP分泌量が知覚過敏に伴って上昇しているかどうかを検討した。その結果、排便反射を誘発するような伸展刺激が加わると対照ラットよりもATP分泌量が2倍程度に増加する可能性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度は内臓知覚過敏モデル動物を用いてATP分泌抑制シグナル経路を担う分子の発現量を定量する予定であったが、膀胱におけるATP分泌抑制シグナルが食道と直腸では異なる作用を示し、詳細な解析が必要になったこと、また、当初本科研費で導入予定であった安価なリアルタイムPCR装置が製造中止となり購入を断念したこと、などの理由により、昨年度よりは改善されたものの当初の予定よりは若干研究の進展が遅れている。しかしながら、平成27年度の実験解析の結果、膀胱、直腸、食道に共通してはたらく管腔臓器上皮からのATP分泌抑制系として一酸化窒素-cGMP経路が同定できたこと、またWistar Kyotoラットが特に直腸の内臓知覚過敏モデル動物として利用できる可能性を示せたことから、来年度以降はより焦点を絞った迅速な研究進展が可能になると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果を踏まえ、今後は内臓知覚過敏モデル動物としてはWistar Kyotoラットに、またATP分泌抑制経路としては各管腔臓器上皮に共通して働く貯蔵量作動性カルシウムイオン流入-一酸化窒素-cGMP経路に焦点を絞って研究を進める。まずは、上記シグナル経路を賦活する薬剤がモデル動物の直腸上皮からの伸展刺激に応じたATP分泌過多を抑制できるかどうか、さらに直腸内臓知覚過敏の症状を緩和できるかどうかを生理学的、行動学的に精査する。さらに、同様の解析を他のシグナル経路(セロトニン受容体-cAMP経路など)や他の内臓知覚過敏モデル動物(シクロフォスファミド投与による間質性膀胱炎モデル動物)などに拡げていく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度に購入予定であった安価な卓上リアルタイムPCR装置(LightCycler Nanoインスツルメント・Roche Diagnostics 6407773)が製造中止となり、より高価な上位機種を購入する資金には満たなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度未使用額は翌年度分と合わせ、ATP分泌解析システムの追加費用と高価なモデル動物購入費用に充てる。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Authentic role of ATP signaling in micturition reflex.2016
Author(s)
Takezawa K, Kondo M, Kiuchi H, Ueda N, Soda T, Fukuhara S, Takao T, Miyagawa Y, Tsujimura A, Matsumoto-Miyai K, Ishida Y, Negoro H, Ogawa O, Nonomura N, Shimada S.
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Journal Title
Sci. Rep.
Volume: 6
Pages: 19585
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] A new mechanism of infection-induced bladder hyperactivity: lipopolysaccharide causes rapid ATP release from urothelium and stimulates the mechanosensory afferent pathway.2015
Author(s)
Takezawa K, Kondo M, Kiuchi H, Soda T, Fukuhara S, Takao T, Miyagawa Y, Tsujimura A, Matsumoto-Miyai K, Shimada S, Nonomura N.
Organizer
The 2015 AUA Annual Meeting (AUA2015)
Place of Presentation
New Orleans, U.S.A.
Year and Date
2015-05-15 – 2015-05-15
Int'l Joint Research
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