2016 Fiscal Year Research-status Report
疼痛疾患モデル一次性感覚ニューロンに認められるミトコンドリア異常の解析
Project/Area Number |
26460706
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
柴田 護 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (60286466)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 利彦 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (40265799)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | TRPV1 / 三叉神経節 / ミトコンドリア / オートファジー / リソソーム / アナンダマイド / 神経障害性疼痛 / カプサイシン |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスの顔面に10 mMカプサイシンを浸した濾紙の貼付を30分間連日行うモデルでTRPV1刺激を行った。その結果、4日後には小型の三叉神経節ニューロン内のミトコンドリア内部構造の変化が生じると同時に、オートファゴソームの出現と、オートファゴソームとリソソームの融合が生じて、障害ミトコンドリアが細胞質から除去されていることが観察された。一方、6日後には形態異常を呈するミトコンドリアは著明に減少し、オートファゴソームの出現は認められなくなっていた。これらの結果から、TRPV1の間欠的刺激を行ってから4~6日の間にオートファジーによる障害ミトコンドリアの除去が起こると同時に、ミトコンドリア新生が行われることで細胞内のミトコンドリア機能が回復していることをが推察される。そこで、神経系でのみオートファジー誘導が阻害されているマウスを用いて同様のTRPV1刺激を行い、ミトコンドリアの形態変化を含めた微細構造を観察予定である。Nestin遺伝子のプロモーター下にCreリコンビナーゼを発現する遺伝子改変マウス (Nestin-Cre)と、オートファジー誘導に必須なATG5の遺伝子がloxP配列で挟まれた遺伝子改変マウス (floxed ATG5)を交配して、神経系でのみオートファジー誘導が阻害されているマウスを入手した。対照にはfloxed ATG5遺伝子を持つがCre recombinase遺伝子を欠くマウスを用いている。平成29年度には、これらのマウスにカプサイシンによるTRPV1刺激を行った際に、侵害受容に関わる小型三叉神経節ニューロンにいかなる形態異常が引き起こされるかを電子顕微鏡を用いて解析する。これと並行して、内因性のTRPV1アゴニストとして脳内に広く分布するアナンダマイドでTRPV1刺激を行った時に、ミトコンドリア形態にいかなる変化が生じるかを株化細胞で検討していく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
in vivoの実験では、電子顕微鏡に用いる三叉神経節組織のサンプリングを行っている状況である。Nestin-Cre/floxed ATG5マウスの交配はほぼ順調にいっているが、生後発育が悪く、顎が小さいなどの奇形があり食物摂取が十分でないために死亡する個体があり、実験対象となる個体の確保が若干遅れている。論文発表としては、Parkinson病の病態との関連を調べるために、TRPV1発現株化細胞にalpha-sunycleinを共発現させた上で、カプサイシン刺激を行って、細胞内ミトコンドリア数とalpha-sunyclein発現量の変化を解析した論文が80%程度完成しており、平成29年度中に投稿予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
in vivoの実験では、顔面へのTRPV1刺激が三叉神経節ニューロンを取り巻くsatellite glial cellにどのような変化を与えているのかについても検討したい。近年、三叉神経節内でのニューロンとsatellite glial cellの機能連関は注目されており、神経障害性疼痛の病態にも深く関与しているのではないかと考えられている。また、in vitroの研究では、siRNAなどを用いてTRPV1刺激によるミトコンドリア障害に関与している分子を同定していく予定である。
|
Causes of Carryover |
実験動物、実験器具、試薬などの購入代金が予想を下回ったため次年度使用額が生じました。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度に行う実験や学会参加や論文作成に使用予定です。
|
Research Products
(9 results)