2015 Fiscal Year Research-status Report
神経障害性疼痛における責任領域の中枢移行時期の同定
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26460708
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
坪井 美行 日本大学, 歯学部, 講師 (50246906)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥村 雅代 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (10362849)
三枝 禎 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (50277456)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 神経障害性疼痛 / 自発痛 / 中枢神経 / 末梢神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経障害性疼痛は末梢組織の損傷や外科手術による神経損傷により惹き起こされ,末梢組織の治癒にもかかわらず疼痛が残り、有効な治療薬および治療法がなく臨床的に大きな問題となる。我々は、動物実験の結果を併せて、疼痛を引き起こす責任部位が受傷後末梢から中枢に移行していることが一因と考えている。主な痛みの責任領域がいつ、どのようなメカニズムで末梢の損傷部位から中枢神経系に移行するのか、その責任部位が臨床上問題となる自発痛誘発に関与することが解明するできれば、有効な治療法の開発を導くことが期待できる。本研究では、坐骨神経障害により惹起される疼痛モデル動物を用い、受傷後疼痛の責任領域がどの時点で中枢へシフトするか調べることを目的とし今年度は以下の結果を得た。 正常の動物では後索核ニューロンは触刺激や内臓の感覚入力を受容し視床等に投射している。坐骨神経障害後には、そのニューロンの自発放電が受傷後3日目から35日目まで非障害群と比較して有意に増加していた。これらニューロンは対側の視床に投射しており、逆行性応答が記録できた。これらニューロンに直接入力する入力(後索路)を麻酔薬で伝導ブロックした後、自発放電を調べた。なお、視床からの逆行性反応は消失していない。末梢神経からの入力を遮断した結果、受傷後21日目以降においては自発放電の50%以上が残存し、非障害群と比較し有意に残存していた。 掻痒測定装置の原理を応用し、足の自発行動(flinching)を測定した。非障害群と比較し障害群では障害側と同側の足の自発行動が障害前と比較して、受傷後21日目以降に有意に増加していた。 これらの結果より、疼痛発現の責任部位は受傷後21日目より中枢神経に移行していることが推察された。自発放電の50%以上の残存時期と自発行動の発現時期には相関が認められ、自発痛発現に後索核ニューロン‐視床系が関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度購入したMicroAct掻痒測定器を応用し疼痛モデル動物の自発行動を測定化できるよう設定を工夫する予備実験が進み、その設定が本年度初頭に整った。それを受け、神経障害疼痛モデル動物での自発行動の測定が可能となった。坐骨神経に施した神経障害による疼痛モデル動物と非障害動物の後肢の自発行動(flinching)と実際の映像を昼夜8時間ずつ記録できるようになり、行動学的検索が進んだ。さらに初年度から行っていた単一神経活動記録も順調に行われ、神経生理学的検索が進み十分データが蓄積された。 以上のことから、当初の目的であった、主な痛みの責任領域がいつ、末梢の損傷部位から中枢神経系に移行するのか、その責任部位が自発痛誘発に関与するかという疑問に対する答えとなるデータが蓄積され、解析が進んだ。さらに、その成果を第93回日本生理学会大会で発表できたので、おおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
主な痛みの責任領域がいつ、末梢の損傷部位から中枢神経系に移行するのか、その責任部位が自発痛誘発に関与することを解明することに対してはほぼ研究が進んだ。しかし、どのようなメカニズムで末梢の損傷部位から中枢神経系に移行するのか、自発痛誘発がどのようなメカニズムで発生するかの分子メカニズム解明を行う予定である。 さらに今年度までの成果を学術雑誌に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
2016年度9月開催の国際学会参加費に充てる予定の金額がほぼ次年度使用額である。研究遂行に必須の消耗品の調達があったので、併せて請求すると参加費が一部不足することが予測されたので参加費の請求を取りやめたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際学会参加費は他の研究費で請求する。それにより生じた残金と次年度の研究費は、成果の報告をするための国内学会への参加費及び旅費、論文投稿料に使用する。また、研究目的に則した実験動物、神経標識物質や抗体などの購入に使用する予定である。
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