2015 Fiscal Year Research-status Report
In vivo パッチクランプ法による鍼灸鎮痛メカニズムの解明
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26460711
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
西尾 尚子 和歌山県立医科大学, 医学部, 特別研究員 (40648359)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 亘 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (20453194)
中塚 映政 関西医療大学, 保健医療学部, 客員教授 (30380752) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | patch-clamp / 鍼灸 / 疼痛抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
鍼灸刺激による脊髄レベルの鎮痛メカニズムを調べるため、神経障害性疼痛モデルラットにin vivoパッチクランプ法を用いて脊髄後角ニューロンの興奮性シナプス伝達に与える鍼灸刺激の影響を解析した。神経障害性疼痛モデルには Spared nerve injury(SNI)モデルを使用した。右側の脊髄膠様質ニューロンから、膜電位を-70mVに固定し興奮性シナプス後電流(EPSC)を観察し、右後肢の崑崙(BL60)相当部位(外踝とアキレス腱の間)に対し、鍼を垂直に刺入した。鍼は、皮内鍼(線径0.12, 鍼長3mm)を用いた。鍼刺激による前後のEPSCの頻度、振幅の変化をリアルタイムに観察したところ、9ニューロン中1ニューロンで頻度・振幅の減少が見られたが、8ニューロンでは有意な変化が見られなかった。以上の結果と、昨年度得られた鍼刺激が抑制性シナプス後電流(IPSC)の頻度を増加させるというデータから、SNIモデルにおける鍼灸刺激の鎮痛メカニズムは、主として興奮性シナプス伝達ではなく、抑制性シナプス伝達に作用することが示唆された。すなわち末梢からの疼痛刺激情報を受け取る脊髄後角ニューロンの興奮性を抑制性伝達物質の放出の増強によって抑制させることで鎮痛効果を得ることを示唆する結果となった。IPSCは抑制性ニューロンから抑制性伝達物質であるgamma-aminobutyric acid(GABA)、グリシンの放出により発生するが、末梢における鍼刺激がどのような機序によって、これらの放出を増強させるかは不明である。下行性疼痛抑制系の賦活等が考えられるが、今後のさらなる検討課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鍼刺激はSNIモデルラットにおいてEPSCの頻度、振幅にほとんど影響を与えないという結果を得た。よって鍼刺激は脊髄膠様質ニューロンの興奮性シナプス伝達ではなく、抑制性シナプス伝達に主として作用するということが確認できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も引き続きラット脊髄脊髄膠様質ニューロンにin vivoパッチクランプ法を適用し、脊髄レベルにおいて鍼刺激がどのようなメカニズムでシナプス伝達に作用するのか、抑制性シナプス伝達にターゲットを絞り検討する。具体的には、鍼灸刺激効果は下行性抑制系の賦活化によるものと推測しているため、種々の抑制性に関連するイオンチャネルの特異的拮抗薬を脊髄に灌流させることにより薬理学的に分析する。
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Causes of Carryover |
研究室の移転により当初購入を予定していた機器の代替品が移転先にあり、購入を見送った為。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主にラット、試薬、ガラス電極、鍼などデータ取得に必要な消耗品に使用する予定である。また研究結果に応じて、学会等での研究成果発表に研究費を使用する予定である。
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Research Products
(2 results)