2014 Fiscal Year Research-status Report
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26460737
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
廣木 章博 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究副主幹 (10370462)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ポリマーゲル線量計 / 粒子線 / 電子線 / γ線 / ゲル / 放射線橋かけ技術 / ヒドロキシプロピルセルロース |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)の20 wt%水溶液を厚さ1 mmに成膜後、電子線照射することで作製したHPCゲルに、放射線検出液(2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ノナエチレングリコールジメタクリレート、テトラキスヒドロキシメチルホスホニウムクロライドをそれぞれ2, 3, 0.16 wt%含む水溶液)を含浸させた後、PE-ナイロン袋に入れ脱気密封包装することで、シート状ポリマーゲル線量計とした。作製したポリマーゲル線量計に対する粒子線照射は、放射線医学総合研究所のHIMACで実施した。ヘリウム線(150 MeV/u)、炭素線(290 MV/u)、及び鉄線(500 MeV/u)を照射したサンプルの白濁度合い(吸光度)は、紫外可視分光光度計(UV-Vis)による吸光度測定、及びスキャナを用いた画像データ化処理により数値化した。UV-Visとスキャナから得た吸光度は、ともに線量に応じて増加した。放射線感度は、γ線照射に比べ、1/10程度にまで低下することが分かった。線量率を一定にして、各粒子線で比較すると、線エネルギー付与(LET)が増加するほど吸光度は低下することが分かった。高LETでは、飛跡周りのエネルギー付与密度が高く、ラジカルの再結合・不均化の停止反応が起き易くなる。その結果、低分子量のポリマーが生成し、白濁化の要因となる凝集体の粒径が小さくなり、吸光度が低下したと考えられる。また、シート状ポリマーゲル線量計を水ファントム中、粒子線と直交するように配置し粒子線照射した結果、ブラッグピーク付近の深さで吸光度は極大を示すことを確認できた。さらに、ガラス容器中にシート状ゲルを積層させ立体型ポリマーゲル線量計を試作し、ヘリウム線を4門照射した結果、透明なゲルの中心部分に立体的な白濁領域の形成を視認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
粒子線に対するポリマーゲル線量計の放射線感度は低いため、感度向上策を検討する必要があるが、作製したポリマーゲル線量計は、粒子線治療用の炭素線をはじめとした各粒子線に対して線量を評価可能であり、さらに、シート状ゲルを積層することで試作した立体型ポリマーゲル線量計が3次元的な白濁領域を形成することを確認できたことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた結果を放射線検出液調製にフィードバックし、モノマーや脱酸素剤の種類、濃度を見直し、ポリマーゲル線量計の放射線感度の向上を図る。また、積層したゲルシートの2次元画像データを3次元に再構築することで3次元線量分布の評価を試みる。さらに、溶液中の微粒子を透過電子顕微鏡で観察し、生成ポリマーの分散・凝集状態の線量依存性を調べる。ゼータサイザーを用い、ゲル中に生成するポリマーの粒子径・粒度分布を評価し、白濁度合いとポリマーの粒子径の相関性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初導入を予定していた画像処理システムが高額で購入できなかったたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
試薬(モノマー類)、粒子線照射用の容器、吸光度評価用器具などの消耗品の購入をはじめ、得られた研究成果をSHIM2015、日本医学物理学会等で発表するための旅費などに使用する予定である。
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Research Products
(5 results)