2016 Fiscal Year Research-status Report
和歌山県ALS多発地における認知症とパーキンソン認知症複合の発症状況に関する研究
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26460753
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
廣西 昌也 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (80316116)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊東 秀文 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (20250061)
高 真守 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (20554629)
紀平 為子 関西医療大学, 保健医療学部, 教授 (30225015)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 紀伊ALS / 筋萎縮性側索硬化症 / 認知症 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの本研究により、和歌山県の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症状況には10万人あたりの粗有病率は9.68,粗発症率は1.20で、2000年の米国の構成年齢階層を用いて直接法で年齢調整を行った場合は,有病率は5.08(男 6.08,女 4.04),発症率は0.69(男 0.92,女 0.43)であることを明らかにした。このことは、かつて和歌山県、特にその南部に存在したALSの集積は現在終息していることを意味する。さらに我々はこのデータを裏付けするため、特定疾患の申請状況からもALSの発症頻度を検討した。倫理委員会の了承を得たのち、和歌山の協力により得られた特定疾患申請状況のデータを分析したところ(2000年~2015年)、和歌山県全体の粗発症率の平均は0.8、また過去にALSの発症が特に多かった和歌山県南部の粗発症率は1.0であることが示され、やはり和歌山県において発症集積はないことが確認された。 また我々はALSが最も集積した和歌山県南部のK町において、認知症の増加が観察されるかどうかを確認するため、DASC-21を用いた認知症調査を5地区、1272人に対して行った。認知症の疑いがあるとされる31点以上の割合は全町で10.7%であり、認知症の集積は認められなかった。紀伊半島と同様、かつてALSの集積がみられたGuam島では、ALSの多発がみられなくなった後に認知症が増加していると報告されているが、和歌山県南部については同様な現象は確認できなかった。ただし地区別に解析した場合、16.3%と認知症住民比率が高い地区も存在していたため、更なる調査を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
和歌山県における筋萎縮性側索硬化症の発症率、有病率に関しては、県下の病院に対するアンケート調査により現状を明らかにできた。さらに昨年度は難病特定疾患の申請状況のデータによりアンケート調査の結果に矛盾がないことを裏付けができた。また、DASC-21を用いたK町における認知症の一次調査が終了し、同町において認知症の有病率が高くないことを示した。DAC-21で認知症の疑いとされた住民に対する二次検診をK町行政担当者と行ったが、受診率が非常に低く、これに関しては知見となるようなデータが得られていない。このため、平成29年度においてはK町の中で認知症の有病率が高かった地区に対して訪問を行い、地域特異的な特性がないかどうか調査を継続していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)K町の認知症の有病率が高い地区において、認知症の相談会、訪問相談などを行う予定である。認知症の有病率が高い理由について、年齢構成や住民移動以外に神経変性疾患の多発や特別な生活環境がないかどうか現地調査を行う。 2)これまでの研究結果に関して学会発表を行う。直近ではXXIII World Congress of Neurologyにおいて発表予定である。 3)論文発表を行う。
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Causes of Carryover |
K町における認知症二次検診の受診率が低く、検診の継続が困難であったため、K町内における認知症の有病率の高い地域における実地調査計画が必要となったため。K町全域においては認知症の有病率は高くないものの、地区により有病率が高いところがあり、この地域の特性を本研究においてさらに掘り下げて検討しておく必要性が生じた。そのため、二次検診で用いる予算を、平成29年度において、地域検診に用いる計画とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
和歌山県南部の山間部自治体であるK町は大きく5地区に分かれる。そのうち認知症の有病率の高地区があり、その地区に赴いて認知症相談、認知症診察、自宅訪問などを行う。またK町の保健事業担当部署と連携し、同地区の特性や人口移動などの情報を得、認知症有病率が高い現原因を検討する。実地調査においては、神経難病(ALS、パーキンソン病、他の神経変性疾患)などが他の地区に比べて多くないか、特定の疾患が多発していないか、水源、主食、地域に限定した食品などがないかについて情報を収集する。
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Research Products
(1 results)