2014 Fiscal Year Research-status Report
正常血圧者を含む地域の中高年を対象とした減塩キャンペーン手法とその評価法の開発
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26460759
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Research Institution | University of Human Arts and Sciences |
Principal Investigator |
奥田 奈賀子 人間総合科学大学, 人間科学部, 准教授 (80452233)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 減塩 / 循環器疾患 / 高血圧 / 栄養 / ポピュレーションアプローチ / 地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
岩手県矢巾町では、食生活改善推進協議会(食改協)が数年前より減塩料理の普及をめざして活動を継続している。ポピュレーションアプローチの展開には同会との共同が有用であると考え、今年度は減塩キャンペーンを実施のための基礎的研究として、①一般住民対象および食改協会員を対象とした「塩と健康」についての知識、および減塩の取り組み状況のアンケート調査、および、②塩味に対する順応の起こり方についての住民対象の実験、を行った。さらに、③我が国における有効な高血圧予防料理として、食事性Na/K比を改善することを手段とすることを確認した。 ①では一般住民226名および食改協会員288名の回答を得た。高血圧と関連する生活習慣として、過剰食塩摂取および肥満は7割以上の認知を得ていたが、野菜・果物の摂取不足や多量飲酒の高血圧の原因としての認知は半数に満たなかった。食改協会員に対するアンケートで、実際に調味料の使用量を控えていると答えた者は、半数程度であり、「減塩で苦労していること」では、「自分は減塩で構わないが同居家族が減塩料理では食べてくれない」など、従来の減塩料理は家族に不評であると普及が困難であることが伺えた。 ②では各種塩分のだし汁を指定の順番で飲んだ時に感じる塩味の強さを尋ねる実験を、一般住民を対象として行った。有効な回答を得た100名について解析を行ったところ、高塩分刺激後には薄味に感じるという現象に加えて、低塩分刺激後には塩味をむしろ強く感じることが示された。調理中に味見を繰り返さない、食べる時は薄味のものから食べ始めるといったことが、減塩調理、および減塩献立の受容性の向上に有用であると考えられた。 以上より、調理者だけでなく、その家族を含めて美味しく食べられる減塩料理の開発・普及が課題であり、また調理時に調味料を量って使うことも調味料を使いすぎない調理のために重要であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、対象とする地域の行政、住民グループとよく連携し、ポピュレーションアプローチによる減塩キャンペーン展開に必要な基礎研究を行った。今年度の成果を踏まえて、食改協会員を対象とした介入のfeasibility 研究は、平成27年度に実施する計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度研究では、食改協の料理講習会(年間のべ約50回、のべ約2000人が参加)で、Na/K比改善料理を取り入れた献立を講習し、「調理者も家族も美味しく楽しめる高血圧予防料理」の普及を図る。Na/K比の改善には、市販の減塩、K増加調味料と普通調味料の組み合わせたものを用いる。食改協会員より、家族に高血圧者のある者を協力者として募り、Na/K比調整調味料の使用により実際に尿中Na/K比が改善するかを検討する。30名×2群を募集し、3か月間Na/K比調整調味料を提供する介入を、時期をずらして行う。継続可能性および随時尿中Na, Kをモニターする。 10月に実施される健康イベント会場では、Na/K比調整調味料を用いた料理の試食会を実施する。 また、食事性Na、K摂取の改善による高血圧、循環器疾患予防を広く国内に普及するためには、国民のNa、K摂取状況を詳細に検討する必要がある。これにより、どのような食品(特に市販加工食品)でNa/Kを改善したものを流通させれば、有効かを示すことができる。平成24年国民・健康栄養調査ははじめての大規模調査であり、詳細な食品ごとの栄養調査結果が登録されている。平成24年国民健康・栄養調査結果の2次利用データを用いて、性、年齢階級、地域別の、NaおよびK摂取状況を、体格や治療状況等を考慮して検討することとする。 平成28年度研究では、町内の地区より、Na/K比改善料理の介入地区と対照地区を選定し(各200名、合計400名程度)、介入地区では平成28年度特定健診全受診者に対してNa/K比改善調味料の提供、Na/K比改善料理の紹介を行う。特定健診時の随時尿中のNa, Kの平成28年度と平成29年度の差を介入地区と対照地区で比較することとする。 平成29年度研究では、前年までの研究成果をもとに、町内の飲食店や食品加工業者に働きかけ、広くNa/K比改善料理が供給されるよう協力を求める。前年までの研究成果につき、学会、論文公表を行う。
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Causes of Carryover |
今年度は、対象地域における減塩キャンペーン実施のための基礎的な情報収集を主に行い、当初計画していた、特定健診重点地区における低塩調味料を用いた介入研究は翌年度実施することとした。そのため今年度研究費使用額は、当初予算より少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に実施する、食改協会員を対象としたfeasibility 研究に用いるNa/K比改善調味料の購入や、調査に関わる研究補助員の謝金等に使用する。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Individual efforts to reduce salt intake in China, Japan, UK, USA: what did people achieve? The INTERMAP Population Study2014
Author(s)
Okuda N, Stamler J, Brown IJ, Ueshima H, Miura K, Okayama A, Saitoh S, Nakagawa H, Sakata K, Yoshita K, Zhao L, Elliott P; INTERMAP Research Group.
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Journal Title
Journal of Hypertension
Volume: 32
Pages: 2385-2392
DOI
Peer Reviewed
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