2015 Fiscal Year Research-status Report
基本的検査を用いた甲状腺機能異常の診断支援と健診・病院受診者でのスクリーニング
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26460777
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Research Institution | Tohoku Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
佐藤 憲一 東北薬科大学, 薬学部, 教授 (30158935)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川上 準子 東北薬科大学, 薬学部, 講師 (40438560)
星 憲司 東北薬科大学, 薬学部, 講師 (20405913)
青木 空眞 東北薬科大学, 薬学部, 助手 (40584462)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 健診・外来 / 甲状腺機能異常 / スクリーニング / 基本的検査 / インフォマティクス / 診断支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
H27年度はJR仙台病院と東北公済病院の人間ドックにおけるスクリーニングを継続している。また、東北公済病院内科外来の患者データについても、2015年1月~7月のホルモン未測定患者約5千名中、従来の1時点予測と時系列変化を合わせて検討した結果、機能異常が疑われ主治医も同意の上ホルモン測定を行った、亢進症で24名中2名に、低下症9名中2名に異常が見つかったことで、患者背景が複雑な病院の受診者を対象としても本スクリーニングにより気づかれなかった機能異常者の発見が可能であることを確認できた。検査値の時系列変化に着目してスクリーニング精度の向上を目指す研究は、これまでは1時点での予測率と2時点での変動速度を散布図にプロットした解析に留まっていたが、上記の2施設においてH27年度に発見された時系列データをもつ患者数の増加に伴い、中毒症については検査値と変動速度を変数とする8変数でのパターン認識手法を用いた2時点予測モデルへと発展させることが出来た。その結果、予測精度が大きく向上して、偽陽性も(おそらく偽陰性も)大幅に減少することが明らかになった。これらの成果は人間ドック、甲状腺、医療情報、薬学の各学会や海外の学会で発表しており、全体的に高い評価を受けている。また、シーメンス社のヘルスケア部門からの依頼により情報誌(シーメンスサイエンティフィックインフォメーション)No.24に寄稿したが、これは、「複数の測定済み基本的検査値を組み合わせて見逃されやすい甲状腺機能異常症をスクリーニングできる新しい手法の有用性」が評価されてのものであり、2万部が印刷され全国の健診施設・病院・検査施設へ配布され、医療現場での本手法への理解が広まっており、今後、この新しいスクリーニング法の普及による患者QOL向上が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的に掲げた8項目中、(1)基本的検査データの時系列変化(増加または減少)を加味したスクリーニング判定を可能にすることで、偽陰性、偽陽性を減らし、精度の向上を図る。特に、2時点予測モデルを構築する、(2)新たに病院初診時の基本的検査を用いてTDを発見する有用性調査と診断支援を検討するため、東北公済病院内科の多数の患者でスクリーニングを行う、(3)健診施設でのスクリーニング継続により、軽度TDのサンプルも蓄積されるので、精度向上などの改良へ役立てる、(4) 協力研究者の支援により増えている、人間ドックで発見した、または病院の患者サンプルを使用して、スクリーニングの安定性と精度の向上を図る、についてはH27年度中にも大きな進展があった。まず、亢進症については時系列変動速度も新たな変数とするパターン認識モデルを用いた2時点予測モデルを構築することに成功し、その結果、予測精度が大きく向上して、偽陽性も(おそらく偽陰性も)大幅に減少することを明らかできた。また、病院での見逃し・誤診の検証も東北公済病院内科外来の2015年1月~7月のホルモン未測定患者約5千名中、従来の1時点予測と時系列変化を合わせて検討した結果、機能異常が疑われ主治医も同意の上でホルモン測定を行った所、亢進症で24名中2名に、低下症9名中2名に異常が見つかったことで、患者背景が複雑な病院の受診者を対象としても本スクリーニングによる機能異常者のスクリーニングが可能であることを確認できた。この2つは大きな成果である。 目標に挙げた、(3) の時系列変化の解析から機能異常発現の進行メカニズムに関する新たな知見を得たい、(5)低下症での、これまでの4項目にさらに数項目を加えたスクリーニングの再検討も進める、他についてはH28年度の課題となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の中心的な課題であり、亢進症については成功した「複数の検査値の時系列データの年間変動速度も変数に加えたパターン認識手法を用いた2時点予測モデル」は、検査値の個人差に依存しない精度の高いスクリーニング法として、今後サンプルを増やすことで更なる精度向上を図るとともに、低下症についても人間ドックや病院で今後収集されるサンプルと伊藤病院・吉村先生(甲状腺専門病院、東京)から提供のサンプルを使って、同様のモデルを構築することをめざす。また、患者背景が複雑な病院の受診者を対象としても、H27年度中に医師も気づかなかった4名の甲状腺機能異常者を発見できたことで、本スクリーニングの有効性を確認できたので、継続して研究を進める。また、これらの2つのテーマのこれまでの成果を論文化する。 H27年度からは東京の新赤坂クリニックグループ(年間3万人以上の人間ドック受診者)との共同研究もスタートしているので、気づかれないままの新規甲状腺機能異常者を多数発見して、治療に導き本スクリーニングの有用性を再確認すると共に、新規発見の患者データは2時点予測モデルの発展にそのまま役立てることができるだろう。 目標としたその他のテーマについてもH28年度中に可能なかぎり研究を進める。 最近は、健診などで測定済みの基本的検査セットを用いて低コストで広く甲状腺機能異常者をスクリーニングする、我々の方法に関心をもつ医療関係者も増え、主催者の依頼により健診フェアや医療講演会での一般の方々を対象とした講演を行う機会も増えており、学会発表に加えて、それらの啓蒙活動にも、さらに、スクリーニングツールの市販化なども、最終的な目標である患者QOL向上の観点から、力を入れていく予定である。
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Causes of Carryover |
H27年度は分担者の旅費として使用予定であった学会出張が1例キャンセルとなったなどで10万余の余剰が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度は本研究の継続によるホルモン測定代に使用する。また、一般人を対象とした講演会で、健診結果表に記載の検査値データから甲状腺機能異常症や副腎皮質機能異常症の疑い有無が推定できることの啓蒙活動にも力を入れる。さらに、研究の進展が期待できるので、学会・研究会での発表も多く行い、本研究の成果を論文化するのにも使用する。
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Research Products
(10 results)