2015 Fiscal Year Research-status Report
高血圧治療中の長期保健指導の医療費評価に関する研究
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26460783
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
岡山 明 日本大学, 医学部, 兼任講師 (60169159)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 介入研究 / 保健指導 / 長期効果 / 医療費 / 治療中 / 高血圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
高血圧など生活習慣病では薬物治療と併せた生活習慣の改善は重要であるが、薬物治療中の者が特定保健指導と同様の保健指導を受けた場合の効果は明らかでない。本研究では降圧剤服用中の者を対象に統一プロトコールによる保健指導を保険者と共同で平成24年度より実施。支援開始後2年後迄の保健指導実施状況及び検査値の変化を報告する。 【対象】市町村国保及び健保組合、計11保険者の協力を得、平成23年度特定健診結果において降圧剤服用中の者より参加者を募集。 【保健指導】重点支援期間(6ヶ月間)と通信を主とし半年毎に面談を行う長期フォロー期間(2年間)の合計2.5年間。面談時:体重、腹囲、血圧測定、随時尿(Na, K, Cre測定)、24時間尿中Na, K推定排泄量(esUNa, esUK)(mmol/24hr)、及び随時尿中Na/K比(mmol/mmol)を計算。 【結果】初回支援を行った116名中1年後迄に4名が、2年後までに更に2名が中止。2.5年後に支援を継続していたのは107名。計測値に欠損のない104名が集計対象。計測値変化量(2年後-初回)の平均値は、体重 -2.1kg(p<0.001)、腹囲 -2.3cm(p<0.001)、SBP -4.2mmHg (p=0.014)、DBP -3.6mmHg(p<0.001)、esUNa -22.5mmol/日(p=0.096)、esUK +4.3mmol/日 (p=0.252)、随時尿中Na/K比は初回3.3、2年後に2.7であった(p=0.013)。1年後から2年後にかけ、体重、腹囲、esUNa, esUKにリバウンドの傾向はみられなかった。 【結論】降圧剤服用中の者に対する保健指導を2.5年間行い、継続率は良好で十分に実現性のある指導プログラムであり、重点支援期間中に保健指導により獲得した生活習慣の改善は長期フォロー期間中も維持されたと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H23年10月、11月及び12月に東京、埼玉、福岡及び山口県で研究に関する説明会を実施して、保険者の募集を行った。15ヶ所の保険者参加を目標に施設募集を行ったが、最終的な参加施設は11ヶ所となった。実際の保健指導は平成24年4月から3ヶ月以内に開始することとしたが、一施設での開始が6ヶ月遅れ10月となったため、平成25年4月に全ての施設で6ヶ月の重点支援期間が完了する予定となった。 当初の参加者は116名となり目標とする150名には達しなかったが、支援期間中の脱落は1名にとどまっている。長期支援に入った施設が10施設となった。また長期の支援のための仕組み整備のため、6ヶ月の重点的な保健指導の後の長期のフォローでの支援者の負担を軽減するため、受診者が自己記録を行って提出する記録を元にマイレージをためる仕組みを整備した。事務局で用意した長期支援の仕組みを利用する参加者が95%以上を占めた。長期支援では個人情報を保護しながら支援者と支援情報を共有する仕組みを整備しており、これを活用して支援を継続した。 平成26年度より文部科学省科研費基盤研究Cの助成を受けて研究を継続している。平成26年度は保健指導を最終的に完了した。それとともに平成25年度までのデータを収集した。平成27年度は保健指導の最終確認及び医療費データの収集を行った。すべての医療保険者を訪問し平成26年度までの医療費及び特定健診・特定保健指導データを収集した。同時に保健指導データの解析を実施して、長期に効果が持続していることを日本公衆衛生学会で報告した。現在収集した医療費データと特定健診受診データを結合して、保健指導を行った対象者と類似の特性を持つ人を仮想対照として設定したうえで保健指導の効果評価を行える体制となった。最終年度はこれらのデータを解析して学術雑誌に報告する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
特定健診の階層化基準外の者に対する保健指導の有効性を医療費で評価するため、対象疾患を治療中の高血圧者とし、11保険者の協力を得て保健指導の介入研究を実施した。研究の進度はほぼ予定通りとなっている。医療保険者はメタボリックシンドロームを中心とした循環器疾患のハイリスク者に対する支援を行い、医療費適正化に結びつけることが義務づけられている。本研究により高血圧などの治療中の者に対する保健指導を実際に保険者が実施可能であり、効果が期待できることが示された。今後の保健事業の推進の基礎的資料として活用可能と考えられる。 平成28年度は最終年度として保健指導と並行して収集した医療保険者のデータセットに基づき、各保険者の特定健診対象者ごとに年間医療費を計算する。また特定健診データを収集して、指導対象となった人ごとに特定健診結果が類似しており、医療機関に受診中である人を1:3をめどに同じ保険者内から抽出して仮想対照を設定する。これらの対象者について保健指導により検査成績ばかりでなく医療費データにどのような影響をもたらすかを明らかにする。 これらの結果は今後の医療保険者における保険事業の重要性を検討するために極めて重要なデータであることから、データをまとめたのちに詳細な分析を行って、国内外の学会で報告するとともに学術雑誌に投稿する予定である。また協力を得られた医療保険者については、解析データのフィードバックや研究成果の共有を図る予定である。
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Causes of Carryover |
データ収集を当初各保険者ごと、外部に委託して実施する予定であったが、研究担当者が分担して訪問する方法としたため、経費に余裕が生じたため。研究そのものは予定通り進捗しており、すべてのデータ収集を完了した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
収集したデータの集積と分析データセット作成を行う費用として計上するとともに、研究成果を参加した医療保険者に還元するための情報交換のための費用として計上している。また得られた研究成果を国内外の学会で公表するために使用する。
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Research Products
(1 results)