2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26460798
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
熊坂 真由子 名古屋大学, 医学系研究科, 学振特別研究員(RPD) (90469023)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ナノ粒子 / モデルマウス / 皮膚腫瘍 / 皮膚疾患 / 毒性評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、様々な皮膚疾患に対する酸化チタンナノ粒子(nanoTiO2)のリスク調査をin vivo、in vitro両方面から行うことを目的としている。In vivoの系では、マウスを用いて、nanoTiO2の、皮膚腫瘍発症、皮膚腫瘍の悪性化、白斑、メラノーシス、皮膚角化症等の皮膚疾患への影響を調査する。また、in vitroの系では、ヒト培養細胞系を用い、nanoTiO2の毒性評価を行う。本年度は、皮膚癌を自然発症するモデルマウスを用いて、nanoTiO2の皮膚腫瘍に対するリスク評価を行うことを目的とし研究を遂行した。 結果(1); 皮膚癌モデルマウスに生じた良性腫瘍に、週5日間、6週間、nanoTiO2を塗布し、週1回、体重測定を行った。その結果、nanoTiO2を塗布したマウスとコントロールマウスの間で、体重に変化は見られなかった。 結果(2); (1)と同様に、皮膚癌モデルマウスに生じた良性腫瘍にnanoTiO2を塗布し、週1回、腫瘍サイズの測定を行った。その結果、nanoTiO2を塗布した腫瘍とコントロール腫瘍において、腫瘍サイズの増加が見られた腫瘍の割合を調べると、nanoTiO2を塗布した方は腫瘍サイズの増加が見られる腫瘍の割合が大きいという結果が得られた。 結果(3); (1)と同様に、皮膚癌モデルマウスに生じた良性腫瘍にnanoTiO2を塗布し、腫瘍のサンプリングを行った。その後、Real-time PCR法を用いて、コントロール腫瘍とnanoTiO2塗布した腫瘍における腫瘍マーカー発現量の比較を行った。本実験では、皮膚腫瘍の増殖に関与していることが報告されている増殖マーカー遺伝子や、腫瘍の生存マーカー遺伝子について調査を行った。その結果、増殖マーカー遺伝子の中に、nanoTiO2によって発現量が増加する遺伝子が存在するという結果が得られた。 以上の結果より、マウス皮膚良性腫瘍にnanoTiO2を塗布することで、腫瘍における腫瘍マーカー遺伝子の発現量に変化が生じ、腫瘍サイズが増加する可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、マウスやヒト皮膚培養細胞系を用いて、nanoTiO2の皮膚疾患へのリスク調査を行うことを目的としている。中でも本年度は、皮膚癌を自然発症するモデルマウスを用いて、モデルマウスに発症した良性の皮膚腫瘍に、nanoTiO2を継続的に塗布することで、nanoTiO2の良性腫瘍の悪性化に対するリスク評価を行うことが目的であった。本研究で使用するモデルマウスにおいては、腫瘍を発症するまでに時間がかかること、また、塗布前、塗布中にマウスが死亡することを考慮し、研究開始早々に、モデルマウスの量産を進めた。その結果本年度は、モデルマウスに発症した良性の皮膚腫瘍にnanoTiO2を週5日間、6週間塗布し、マウスの体重への影響、腫瘍サイズへの影響、腫瘍における腫瘍マーカー発現量への影響を調査することができた。その結果、研究開始1年目にして、信頼性のある解析結果が可能となる数以上の腫瘍が得られた。 また、マウス皮膚良性腫瘍にnanoTiO2を塗布することで、良性腫瘍のサイズが増加する可能性、腫瘍増殖に関わる遺伝子マーカーの発現量が増加する可能性を示唆する結果が得られた。さらに、nanoTiO2が影響を与える可能性がある、皮膚癌の悪性化に関与する遺伝子の発現や作用についても論文として報告した。以上より、本研究は、当初の予定以上に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の本研究は順調に進展しているが、マウスは個体間のばらつきが大きいため、結果の信頼度を上げるために引き続き繰り返し実験を行う。また本研究で用いるモデルマウスは、研究遂行に十分な数の確保に時間がかかるため、今後も引き続きマウスのメンテナンスにも力を入れる。今年度の研究において、nanoTiO2を塗布した良性腫瘍において、皮膚腫瘍の増殖に関与していることが報告されている増殖マーカー遺伝子の発現量に変化が見られたため、他のタイプの腫瘍マーカー(転移や浸潤に関わる腫瘍マーカー遺伝子等)についても追加調査を行い、nanoTiO2がどのような遺伝子の発現に影響を与えるか詳細に調査することも必要であると考えている。 次年度以降も、皮膚癌モデルマウスを用い、nanoTiO2の動態も含めた皮膚腫瘍におけるnanoTiO2のリスク評価を進め、さらに詳しく解析するために、培養系を用いたリスク評価も行う予定である。
|
Research Products
(9 results)