2015 Fiscal Year Research-status Report
骨髄移植後合併症の新規予防法開発:新しいバイオマーカーとしての免疫抑制因子
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26460802
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
高橋 秀和 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90450402)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉田 耕治 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00615841)
田辺 剛 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80260678)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 疫学 / 遺伝学 / 免疫学 |
Outline of Annual Research Achievements |
SNPの多変量解析に用いる臨床データの解析を詳細に行ったところ意外かつ重要な発見があった。非血縁骨髄移植を受けた約1000のドナー・患者ペアにおけるHLA-C座不適合の効果が患者の原疾患によって大きく異なることを見出した。急性骨髄性白血病(AML)や急性リンパ性白血病(ALL)などにおいては、慢性GvHD(移植片対宿主病)の累積発症率に対してHLA-C座不適合が危険因子となっていたが、骨髄異形成症候群(MDS)では危険因子になっていなかった。にもかかわらず、全死亡率に対してHLA-C座不適合が統計的有意な危険因子となっていたのはMDSだけであった。この結果はMDSにおけるHLA-C不適合の影響は他の原疾患と質的に異なることを示唆する。また、慢性GvHDの発症ではALLやMDSなどではその後の全死亡率・非再発死・再発を上昇させる危険因子であったが、AMLでは逆にそれらを低下させていた。これらの結果から、骨髄移植予後に対するSNPの効果の解析は原疾患ごとの影響を考慮することが重要であることが判明した。 その他の臨床的な調整因子についても平成26年度よりも解析する項目を作成・増加させて、変数選択を用いてFine-Gray競合リスクモデルやCox比例ハザードモデルによる多変量解析を行った。これらの解析によって、HLAとSNPの交互作用が重要であるという予期しない結果が得られた。例えばAMLにおいて、患者CARD8のSNPが特定の遺伝子型である場合にはHLA座不適合は2-4級急性GvHDを増加させたが、それ以外の遺伝子型の場合にはHLA座不適合による影響は認められなかった。ドナー側のCARD8のSNPについては統計的有意な関連は見られなかった。ただし、MDSにおいては全生存率に対して調整後ハザード比が約2.0と強い効果が見られた。本研究のMDS患者は数が少なく検出力が弱いため、より大規模な研究で真偽を確認する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原疾患ごとの差異やHLA座の適合度がSNPの効果に影響するといった発見は新規かつ重要である。この発見によって全ての統計解析を新しい方法を用いて再度行う必要が生じた。その影響でエピゲノム関連の遺伝子の解読はまだ完了に至っていない。しかし、これは研究の意外な進展の結果であって遅れとは考えない。また、上記の成果は論文投稿の準備中である。これらの事項を総合的に考慮して順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の解析で原疾患ごとの解析やHLA座適合度別の解析の重要性が明らかとなった。今後はこれらの成果をすみやかに論文にするとともに、この解析方法を用いてその他の遺伝子についても解析していく。
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Causes of Carryover |
上記の意外な発見があったために統計解析におけるデータ量が格段に増大した。これらのデータを全て一つにまとめて次年度前半に論文投稿するほうが適切と判断した。そのための論文校閲や掲載料等を次年度前半に使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文校閲や掲載料等に用いる予定である。
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