2016 Fiscal Year Research-status Report
わが国に出現した新規市中感染型MRSAの蔓延状況と分子疫学的性状の解明
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26460804
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
小林 宣道 札幌医科大学, 医学部, 教授 (80186759)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鷲見 紋子 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (10363699)
漆原 範子 札幌医科大学, 医学部, 講師 (80396308)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | MRSA / ACME / 市中感染 / ST |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は我が国での拡がりが示唆されている新規市中感染型MRSAの分布状況とその特徴を明らかにすることを目的としている。今年度は、健康人から分離されたブドウ球菌と、入院を伴う重症感染症の原因となった黄色ブドウ球菌について分子疫学的解析を行った。健康な小児の口腔由来黄色ブドウ球菌147株を調べたところ、9株(6%)がMRSAで、それらはコアグラーゼ型Ia, IIa, IIIa, VIIbに属し、SCCmecはIVlを含む4種に型別された。SCCmec IVlを持つ2株はST8、coa-IIIaに属しPVL陰性であり、我が国で報告された新規市中感染型MRSAと同じものと考えられた。今回、このような菌株が健康な小児の口腔にも低頻度ながら分布していることが明らかとなった。またPVL遺伝子、ACMEを保有する菌株は無かったが、ST1、ST5、ST120、ST89 のMRSAが検出され、それらは市中へ分布する新たなMRSAの可能性があると考えられた。次に、札幌医科大学附属病院において入院治療を必要とした重症の乳腺膿瘍の症例から分離された黄色ブドウ球菌について解析を行った。本菌株はMSSAであったがPVL遺伝子陽性で、感染症例からの報告では我が国で初となるST88に属していた。さらにPVLファージは、米国で優勢なUSA300クローンが保有するphi-Sa2USAと同じであることが判明した。このことから、日本では稀な市中感染型MRSAクローンUSA300からPVLファージがMSSAに転移していたことが示唆され、MSSAについても病原性の変化に関し注意を払うべきであると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までは市中の外来患者分離株、今年度は健康人分離株、重症例からの分離株について解析を行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
病院(医療)関連MRSA(HA-MRSA)の収集はすでに終えているので、これらについて分子疫学的解析を行う。
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Causes of Carryover |
今年度は予定通り研究を行ったが実験解析に費用が掛かり、一部次年度からの前倒しを行い使用した。その中で、割引価格の試薬を購入するなどして経費を節減し、その結果少額の残余が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費および国際学会での発表のための旅費として使用する。
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