2014 Fiscal Year Research-status Report
職業性胆管がん発症の原因となる究極発がん物質の究明
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26460806
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
圓藤 吟史 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20160393)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山中 健三 日本大学, 薬学部, 教授 (50182572)
加藤 孝一 日本大学, 薬学部, 准教授 (60246931)
市原 学 東京理科大学, 薬学部, 教授 (90252238)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 衛生 / 化学発がん / ハロゲン化炭化水素 / 遺伝毒性 |
Outline of Annual Research Achievements |
胆管がん発症の原因物質を究明するために、被疑ハロゲン化炭化水素類としてジクロロメタン(DCM)ならびに1,2-ジクロロプロパン(DCP)のほかに1,2-ジブロモエタン(DBE)と1,2,3-トリクロロプロパンpropane(TCP)を選び、それらの細胞障害性とDNA損傷性を培養細胞系により検索した。Ames法による遺伝子突然変異試験ではDCP、DCE、DBE、TCPのいずれも用量依存的な増加は得られなかった。ヒト不死化胆管由来細胞株であるMMNK-1細胞に1,2-DCP2.00 mg/mL DMEM High Glucose (with 1%DMSO) を24時間曝露させRNA を回収した。そのRNAを逆転写し、PCRを行い、電気泳動によりRNAの発現の有無を調べた。その結果、コントロール群と比べて曝露群にどの遺伝子も変化は確認出来なかった。GST T1、CYP2E1ともに発現していないことから1,2-DCPが代謝されていないと考えられ、1,2-DCP自身は変化を引き起こさなかったと考えられる。1,2-DCP代謝物の毒性を調べるにはS9mixで処置や、GST T-1遺伝子の導入などの工夫が必要であると考えられた。 次に、MMNK-1細胞にDBE5.00、2.50、1.25、0.63 mg/mL DMEM High Glucose (with 0.1 % DMSO) を24時間曝露し、RNAを回収した。そのRNAを逆転写し、PCRを行い、電気泳動によりRNAの発現の有無を調べた。その結果、コントロール群と比べて曝露群では、いくつかの遺伝子の変化が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
オフセット校正印刷会社労働者にみられた胆管がんは、ハロゲン化炭化水素類の高濃度曝露による業務上疾病とされた。代謝機序については、一般に、CYPによる酸化的代謝およびGSTによるグルタチオン抱合代謝に大別して理解されているが、個々の毒性についてはハロゲンの結合数や異性体で大きく異なり、代謝過程の定量的解析を含む詳細な発がん代謝活性化機構の解明が求められる。それ故、我々は胆管がんとの因果関係を究明するために、ハロゲン化炭化水素類の代謝経路と発がん過程における活性体の生成を明らかにすることを目的としている。 被疑ハロゲン化炭化水素として、DCMならびにDCPのほかにDBEとTCPを選ぶことができた。Ames試験では化合物が変異原性を示すよりも早く細胞毒性が出てしまい、うまく検出できなかったと考えられ、Ames試験では有機ハロゲン系化合物は検出が難しい可能性がある。 被疑化合物の毒性発現には代謝的活性化の関与が示唆されていることから、ヒト不死化胆管由来細胞株であるMMNK-1細胞を選定することができた。MMNK-1細胞にDBEを曝露し、RNAの発現の有無を調べたところ、いくつかの遺伝子が発現していることが確認できた。RT-PCRを用いて遺伝子の同定と各濃度での相対的発現量を測定する予定である。 「研究の目的」は申請時に時点ではスクリーニングをして研究の方向性を探ることにしていたが、遺伝子の出現が明らかになったことから、転写因子の誘導などの解明が課題となり、胆管がん発症の原因となる未知の発がん物質とその発がん機序の解明が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
被疑化合物の毒性発現には代謝的活性化の関与が示唆されていることから、被疑化合物としてDCM、DCP、DBE、TCPを選択し、薬物代謝能の高い細胞系としてMMNK-1細胞を選択することができた。DBEがMMNK-1細胞のRNAのいくつかの遺伝子を誘導させることが明らかになったことから、被疑ハロゲン化炭化水素類から誘導された活性体を同定するために、被疑物質とヒト代謝酵素を反応させ、得られた代謝物をLC-MALD/TOFMSやLC-MS/MSの機器を駆使してメタボロミクス解析を実施する。MMNK-1細胞で活性化された遺伝子を明らかにするとともにその作用を解明する。マウス肝細胞系においても、同様な作用がみられるか、比較検討する。これらの研究により、胆管がんを惹起したハロゲン化炭化水素類の究極活性体を究明する。
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