2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26460810
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
渡辺 哲 東海大学, 医学部, 教授 (10129744)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 酪酸菌 / 無菌マウス / メタボローム解析 / アシルカルニチン |
Outline of Annual Research Achievements |
近年腸内細菌と種々な病態との関連に関しては様々な可能性が報告されている。そこで今年度は、酪酸菌投与が肝臓の代謝にどのような変化をもたらすかを解析する目的で、無菌マウスに酪酸菌を投与しメタボローム解析を行った。 無菌のC57BL/6(雄)を購入し、ミヤリサン製薬研究所のアイソレーター中でgerm freeの状態で飼育した。全体を4群に分け(各群5匹ずつ)、germ free(GF)群、酪酸菌接種群 (CMB)、乳酸菌(ラクトバチルスアシドフィリス、LA)接種群、通常飼育 (CV)群とした。菌を接種後2週間目にマウスを解剖し、肝臓、大腸、盲腸内容物、血液を採取した。 解剖時(8週齢)の各群のマウスの体重には差がなかった。GF群では他の群と比べ盲腸が巨大であった。今回は肝臓でのメタボローム解析 (CE-TOFMS、LC-TOFMS)を行った。メタボローム解析はヒューマン・メタボローム・テクノロジー社で行った。今回の検討ではSBは肝では検出されなかったが、別の実験で酪酸菌を餌に混ぜて投与すると、6時間後に門脈血にHPLCによりSBの検出が可能であった事より、肝には腸管で産生された酪酸は到達するが、その濃度はかなり低いものと考えられる。メタボロームによる代謝プロファイルの観点から、主成分分析ではCVとそれ以外の群では尿素回路で区別され、GF、CBM、LAはアミノ酸代謝、尿素回路、脂質代謝などに差があると考えられる。2群間の比較では、CBM投与群ではGF投与群に比べ有意にアシルカルニチンであるAC(16:2)やPalmitoylcarnitineが高値であり、特にAC(16:2)はLA群と比較しても有意に高値であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の進展や肝発癌に腸内細菌が重要である事が報告され、その予防策としてプロバイオティクスが種々試されている。我々は、酪酸を産生する酪酸菌MIYAIRI588がラットのNASHモデルで、その進展や肝発癌に予防効果を発揮することを明らかにした。In vitro の系では酪酸が脂肪沈着やインスリン抵抗性を改善する事を明らかにしたが、In vivo の系では多数の腸内細菌が存在するためその機序を明らかにする事は困難である。 当初の計画ではAMPKノックアウトマウスを使用し、AMPKの活性化が酪酸菌投与の重要な機序である事を示す予定であったが、酪酸菌の多彩な効果を一度に解析するため、無菌マウスに一種類の菌のみを生着させたノトバイオートを作成し、酪酸菌、乳酸菌生着群と無菌マウス、普通のマウスを比較した。今回は肝臓での代謝産物比較するため肝の抽出物を用いたメタボローム解析を行ったが、今後盲腸内容物の解析も行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
肝臓でのメタボローム解析の結果、酪酸菌投与群ではアシルカルニチンが他の群と比較して著明に上昇していた。脂肪酸のβ酸化のためには、そのアシル基とカルニチンが結合したアシルカルニチンの形でミトコンドリア内膜を通過する必要がある。そこで、ノトバイオート(酪酸菌生着)での筋組織でのアシルカルニチンを測定し、酪酸菌投与の脂肪酸β酸化、エネルギー代謝への影響を明らかにする。さらに酪酸菌投与の代謝への影響を明らかにするため、酪酸菌と乳酸菌(ラクトバチルス・アシドフィリス)ノトバイオートマウスでの盲腸内容物のメタボローム解析を行う。 コリン欠乏食(CDAA食)によるマウスNASHモデルを作成する。酪酸菌、乳酸菌をそれぞれ餌に混ぜて投与する群と、CDAA群、正常群の4群間で肝臓の代謝産物の違いを、実験開始8週間目にメタボローム解析で検討する。脂肪変性、肝障害、肝線維化の有無をoil-red染色、HE染色、Azan染色、Sirius red染色で確認する。炎症反応はALT、NF-kB、TNF-αの測定体で判定する。前癌病変はGST-P陽性コロニーの検出により行う。 酪酸菌投与の骨格筋にたいする影響を検討する。筋組織はHE染色の他、Type I fiberの発現をtype I myosin heavy- chainに対する酵素抗体法で検討する。 人での応用を考慮し、他のNASHモデル(ob/ob)マウスでの効果を検討する。 NASHの進行を阻止すること、すなわち肝での脂質代謝改善、インスリン抵抗性改善、酸化ストレス抑制、炎症反応抑制、筋組織の増強などは、その最終段階である肝発癌につながるので、初期段階で酪酸菌の効果を明らかにすることを目指す。
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