2015 Fiscal Year Research-status Report
地理情報システムと住民アンケートによる都市vs農村の健康の社会的決定要因の解明
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26460828
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
菖蒲川 由郷 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (30621198)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井口 清太郎 新潟大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (20420309)
齋藤 玲子 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30345524)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 健康の社会的決定要因 / ソーシャルキャピタル / 高齢者の健康 / 都市と農村 / 地理情報システム |
Outline of Annual Research Achievements |
3年計画の2年目にあたる平成27年度は、データベースの整備と粗集計・解析を実行した。また、データに基づきGIS(Geographic Information System:地理情報システム)を用いた視覚化を行った。高齢者に対する大規模アンケート調査を実施した新潟県内の3市町(新潟市、十日町市、阿賀町)には粗集計と結果を視覚化した地図を含む報告書をすでに作成し、それぞれの健康福祉施策に資するデータを提供することができた(新潟市については科研費以外の研究費による)。 健康の社会的決定要因の都市部と農村部の違いを検討するために、基礎解析を実行した。まず、都市部と農村部ではどちらが健康であるか、アンケートの集計から単純比較した。過体重、うつ傾向(GDS10点以上)、残歯数、肺炎罹患、転倒は農村部で不健康な傾向にあり、やせ(低体重=BMI18.5未満)は都市部で多かった。一方で、平均余命を強く予測する主観的健康感は差がなかった。健康指標ごとに都市部と農村部の健康度が異なり、貴重な比較データを得ることができた。その上で、それらの健康格差がどのような個人要因、ひいては社会的要因によるものか、現在、解析を進めている。1つの例として、低体重は、近隣との付き合いが悪いことと関連していることが分かった。この傾向は男性よりも女性で強かった。近隣との付き合いは地域のソーシャルキャピタルの指標の一つである。今回の解析結果からは、一般的にソーシャルキャピタルが豊かな農村部において、そのような地域の地縁等から外れた一部の高齢者が低体重というリスク下に置かれている可能性が考えられた。今後、他の健康指標についても社会的決定要因の都市部農村部比較を引き続き行う。一部の研究結果は、英語論文作成中であり、平成28年度には公表する見通しである。残りの解析についても早い時期に国内外の学会で発表し論文による公表を目指したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに新潟県内での調査を終え、データベースを整備することができ、解析に着手している。ここまでは予定通りに研究を進めることができているため、概ね順調と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに都市部の代表である新潟市と農村部の代表である十日町市と阿賀町において高齢者に対する大規模アンケート調査を実施し、データをクリーニングしデータベースを整備することができた。データベースを用いた解析を平成27年度にすすめてきたが、平成28年度には次のように推進する。 (平成28年度) 新潟市において、平成25年度調査の追跡調査として、高齢者に対する大規模アンケート調査を計画している。本計画はJAGES(Japan Gerontlogical Evaluation Study:日本老年学的評価研究、代表・近藤克則)研究グループの全国調査JAGES2016の一環として行われる予定である。2回目の調査では、1回の横断調査では分からなかった健康アウトカムと暴露因子との因果関係を明らかにすることができ、高齢者における健康の社会的決定要因をより強いエビデンスとして解明できる。また、これまで、新潟県内の3市町のデータに基づく解析・研究を進めてきたが、全国調査であるJAGESでは2010年からパネル調査を展開中であり、調査地域には農村部と都市部が含まれる。すでに新潟市はJAGES調査の一環として調査を実施しており、JAGESの全国調査との結果比較が可能である。一方で十日町市と阿賀町のデータは現在までのところ新潟市との対比にとどまっている。十日町市と阿賀町のデータをJAGES全国調査のデータを結合できれば、より大きなデータベースとして解析が可能となる。特に、地域の要因を詳しく解析できるマルチレベル分析を行うのに好都合であり、健康の社会的決定要因を解明することに役立つ。今後、JAGES全国調査との結合データとしての解析も視野に入れ、さらに強固なエビデンスを確立するべく工夫する。
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Causes of Carryover |
平成28年度に新潟市における高齢者大規模アンケート調査(追跡調査)を行う可能性が高くなったことと、JAGES全国調査のデータと十日町市、阿賀町のデータを結合するための費用が必要になったことで、平成28年度に多くの支出が見込まれることとなった。このため、平成27年度は最低限の支出にとどめ、調査費用を確保できるように計画した。また、研究会や調査打合せに必要な費用も他の研究費から捻出可能であったため、平成27年度は計画していた額より支出が少なく、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度には新潟市における高齢者大規模アンケート調査(追跡調査)を行うため、調査費用が必要である。また、解析の幅を広げるために、JAGES全国調査のデータセットと本研究で使用しているデータベースの結合を計画しており、これにも費用が必要である。平成28年度は最終年度であり、解析と論文発表に多くの労力を注ぐ予定である。論文作成に必要な資料、英文校正費、掲載料や研究発表に必要な旅費として残りの研究費を使用する計画である。成果・実績を最大化するために予算を使う計画である。
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