2015 Fiscal Year Research-status Report
医学研究での包括的同意におけるヒト由来試料・情報提供者との信頼の構築に関する研究
Project/Area Number |
26460872
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
倉田 真由美 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50378444)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩江 荘介 京都大学, 医学部(系)研究科(研究院), 客員研究員 (80569228)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | インフォームドコンセント / 信頼 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究の目的】本研究は,ヒト由来試料(既存試料)の保管の実態を明らかにするとともに、これらの既存試料がどのような問題から二次利用が困難なのか。研究協力者が信頼して自分自身の試料・情報を長期的に研究者へ一任するために、理想的なインフォームドコンセントを検討することを目的に医学研究に携わるメディカルスタッフを対象に実態調査を行った. 【研究方法】100 名の病理医と27 名のヒト由来試料を用いた研究に携わる医師より回答を得た.アンケートに回答した医師の93 名(73.2%)がヒト由来試料を自施設に保管しており,うち約半数が保管上の問題として,保管スペースや個人情報管理の問題あげていた.また,4 割が保管している試料を共有し,今後の研究に役立てるべきと回答していた.しかし、公共性・公益性の観点から、ヒト由来試料を共有化して利用するために、他機関への提供を考えているか質問したところ、「考えていない」「考えたことはない」と答えた者が70名と、過半数が他機関への提供に消極的であった。他機関への提供を検討しない理由について複数回答で尋ねたところ、「所属されている施設に、併設の倫理委員会がない」11名、「手続き等の過程で断念した」6名、「患者の同意が得られていない」29名、その他の理由が9名で、IRBの申請や提供にかかる煩雑な手続き、他機関への提供についての再同意取得などの要因が既存試料の有効活用の障壁となっていることが明らかになった。 【検討事項】各指針で取り決められている、将来的に他の研究に利用できるよう同意を得ておく「包括同意」の手続きについて周知徹底するとともに、信頼関係をもとに自由意志に基づいた包括同意の取得におけるInterfaceをどのように実装するのかについて検討を進める必要がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、医学研究に携わる医師・研究者・その他のメディカルスタッフを対象とした実態調査を行い, 試料・情報取得の際のインフォームドコンセントの実態と包括的同意における問題点を明らかにすることができた。これらの結果をもとに、包括的同意に係る諸問題について検討し論点を抽出し、また,“信頼”の規定因並びに概念構造を,社会心理・社会哲学的観点から分析・整理していく予定である.
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度はヒト組織・情報を利用する研究において,提供者の意思表明=同意の取得の拠り所となる“信頼”の規定因並びに概念構造を社会心理・社会哲学的視座から分析し、分析結果をもとに,研究参加のためのインフォームドコンセント(包括同意)のベストプラクティスを集約し,医学研究従事者へ還元するまでを目標とする。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、1回目の調査後の解析に時間を要し、また、その結果をまとめ執筆投稿に時間を要し、2回目の調査の取り掛かりが遅れたことによるものである。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降に請求する研究費は、追調査にかかる諸費用と調査対象者および調査スタッフへの謝金として使用する。また、成果を学会等で発表するための参加旅費等に使用することを計画している。
|