2014 Fiscal Year Research-status Report
ヒトを吸血した蚊からの吸血後の経過時間推定及び個人識別
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26460885
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
原 正昭 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (50129160)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永井 淳 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00207961)
田村 明敬 大阪医科大学, 医学部, 助教 (50207239)
山本 敏充 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50260592)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 蚊 / STR / 個人識別 / 吸血後経過時間推定 / DNA定量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、埼玉医科大学倫理委員会に本研究実施の申請をし、本研究の承認を得た(No.765)。当大学の承認後、共同研究機関の大阪医科大学、名古屋大学、岐阜大学の承認も得ることができた。また、日本除蟲菊株式会社との共同研究契約を締結した。さらに、同契約が必要な大阪医科大学及び名古屋大学と同社の間でも締結し、研究協力体制を確立できた。 実験的には、アカイエカを用いて吸血させる方法を検討した。具体的な吸血蚊の採取方法としては、人工飼育されたアカイエカを数匹、透明な円柱形(筒状)のガラス管に入れ、両側を一層のガーゼで封印する。これらを被験者一人に対して、一方のガーゼ部分を被験者の腕に当て、蚊がガーゼを通して十分吸血した段階で、腕からそのガラス管を離し、蚊を採取して直ちに1.5 mLチューブに入れ、各採取チューブを時間経過とともにドライアイスボックスに入れ凍結する方法を実施し、本法を採用することとした。 次に凍結した吸血蚊試料からのDNA抽出法を検討し、キアゲン社のQIAamp Microキットによる抽出を選択した。 また、吸血蚊から抽出されるヒトDNAは、時間経過とともに断片化していることが予想されるため、陳旧なヒトDNA試料を用いて、KAPA Human Genomic DNA Quantification and QC Kitによる3種類の増幅長(41 bp, 129 bp, 305 bp)の異なるプライマーによるDNA定量の検討を実施した。その結果、129 bp/41 bp, 305 bp/41 bpの定量比を算出することにより断片化の程度を推定する可能性が示唆された。従って、吸血した蚊内の人血が、時間経過とともに消化され、それに伴いヒト由来DNAも断片化していると考えられるので、吸血蚊から抽出したヒトDNAのKAPAによる定量値から吸血後の経過時間推定に応用可能であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究遂行にあたり、一番重要課題であった当大学及び各研究機関の倫理委員会の承認を、多少時間を要したが、得ることができた。また、必要機関(埼玉医大、大阪医大、名古屋大)と大日本除蟲菊(株)中央研究所との間で、共同研究契約を締結でき、研究協力体制を確立できたことは、今後、本格的に研究を遂行する上で、本年度の大きな成果である。研究協力体制確立までに時間を多少要してしまった理由としては、主たる研究機関である埼玉医大で承認を得た後に、各機関の倫理委員会での承認を得なければならなかったことと、秘密保持契約等のある程度簡便な契約を考えていたが、少し煩雑な共同研究契約を締結しなければならなかったことが挙げられる。 しかしながら、体制を整えている間に、倫理委員会承認後、中央研究所を訪れ、具体的な蚊の吸血方法を、蚊の生態を考慮しつつ、吸血から吸血後の飼育方法にいたるまで、検討した。その結果、まだ少し検討の余地はあるものの、具体的にある程度最適な方法を選択できた。また、吸血後の蚊からのDNA抽出を数種の抽出キットを用いて検討し、キアゲン社のQIAamp DNA Microキットを選択できた。さらに、DNA定量法についても、少なくとも、KAPA社の Human Genomic DNA Quantification and QC Kitを用いることにより、定量値ととともに、サイズの異なる増幅長断片の定量値比から、ある程度断片化の程度を推定できる可能性を示唆した。 このように体制的にも手技的にも次年度に向けた準備を整わせることができた。 さらに、研究を遂行する上で、もう一つの大きな課題となる被験者の確保についても、公募ポスターも作成し、応募者及び被験者賛同者に対し、研究内容を説明する為の具体的な準備も完了した。 従って、初年度は、次年度に向けた準備が完了したと言えるので、おおむね順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度で、研究協力体制を確立し、具体的な実験手法を準備できたので、本年度は、6月~7月にかけて、大阪医大で被験者を募集するとともに、研究者を被験者にして予備実験を行う。その中で、まず、最初に検討すべきことは、初年度の吸血実験において課題となっていた吸血後の蚊を、吸血した人血を完全消化するまでの間(約48時間)、いかに生育させ続けるかということである。中央研究所の研究者によれば、経験的に湿潤箱内で採取管を保存すれば、生育可能と言うことであるので、このような方法で生き続けさせることが可能であるか、検討する。それとともに、具体的な実験方法をこれら予備的に吸血・採取した蚊を用いて行う。すなわち、吸血した蚊を経過時間ごと(0、1、2、3、4....,24,36,48時間)にドライアイス内に凍結保存し、採取が終わった段階でMicroキットを使ってDNA抽出を行う。次に、抽出DNAをKAPA社の Human Genomic DNA Quantification and QC Kitを用いて定量する。その後、AmpFlSTR Identifiler plusキットを用いて、各DNA試料からSTR型を判定する。このようなステップで予備実験を行い、本実験へ移行できるかどうか検討する。問題があれば、その方法についてさらに検討する。 問題がなければ、それまでに応募と承諾を得た被験者(5名予定)を連れて、実際に中央研究所にて、アカイエカとヒトスジシマカによる吸血実験を行う。吸血蚊から予備実験で行った方法に従って、実験を進める。 可能であれば、DNA定量法にQuantifiler Trioキット、STR型判定にMinifilerキット及びMidi-6システムを、さらに男性由来DNA試料であれば、Yfilerキットを用いて追加解析を行う。 最終年度には、再度この方法を繰り返し、再現性を検討し、成果発表を行う。
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Causes of Carryover |
研究遂行にあたり、主たる研究機関である埼玉医科大学倫理委員会で承認を得た後に、各機関の倫理委員会での承認を得なければならなかったことと、秘密保持契約等のある程度簡便な契約を考えていたが、少し煩雑な共同研究契約を締結しなければならなかったこと等により、本格的な研究の開始が遅延した。そのため本年度の人件費・謝金等は未使用であったために翌年度に繰り越した。 また、物品費も予備実験に用いた蚊の試料が少数例であった為に、購入予定のDNA解析等の関連試薬が少なくなったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度、大阪医大で被験者を募集すると共に、研究者を被験者にして予備実験を行うにあたり、約20万円の旅費等を要する。吸血した蚊からのDNA抽出・定量にQuanticroキットおよびKAPA社の Human Genomic DNA Quantification and QC Kitを用いる予定で約30万円を要する。その後、AmpFlSTR Identifiler plusキット(約60万円)用いて、各DNA試料からSTR型を判定する。次に、応募と承諾を得た被験者(5名予定)を連れて、中央研究所にて、蚊の吸血実験を行うための、交通費・謝金約25万円を支出予定である。また、STR解析が可能であれば、さらにSTR型判定にMinifiler及びYfilerキットを用いて追加解析を行う予定であり、そのための費用を要する。
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