2015 Fiscal Year Research-status Report
サ-ファクタントを指標とした、血液生化学的・形態学的溺死診断の試み
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26460888
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
岩楯 公晴 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (90251222)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 溺死 / サ-ファクタント / 免疫染色 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、前年度同様、症例選択や条件検討等のための予備的な実験を行った。血清の分析に関しては前年度から発展していないが、今年度は主に高感度の免疫染色キットを用いた免疫染色を試みた。 対象:これまで東京慈恵会医科大学法医学講座で施行された法医解剖例のうち、直接死因が入浴中の溺死と診断された症例の中から、死後経過時間が比較的短く組織学的な精査(免疫染色)による評価に耐えうる程度であり、左右心臓血、大腿動静脈血血清が保管されている数例を選択した。対象症例として、心臓性急死など死因の明らかな数例を同様に選択した。 方法:各血清中のサーファクタントプロテインA(SP-A)およびサーファクタントプロテインD(SP-D)濃度を測定するとともに(業者委託)、諸臓器(肺、肝、腎、脾)のパラフィンブロックを用い、抗サ-ファクタントアポプロテイン抗体(DAKO)による免疫染色を行った。免疫染色には通常のヒストファインキット(ニチレイ)の他、DAKO社のCSAシステムを用いた。 結果と考察:SP-A、SP-Dともに右心血に比して左心血で明らかに高値を示す傾向が見られた(症例数が少ないため統計学的な検定は行っていない)。一方、大腿動脈血と静脈血には大きな差は見られないように思われた。免疫染色に関しては、陽性コントロールとして肺に陽性所見が見られたのは当然であるが、その他の臓器には通常の免疫染色では明らかな陽性反応は見られなかった。高感度の方法(CSAシステム)を用いると腎の尿細管などに陽性反応を示す例もあったが、非特異的な反応も強くなるため判断が難しいと思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
浴槽内の死亡例は、40℃前後の高温で死体が維持されることが多く、死後変化が進みやすいことは知られていたが、死後変化のために組織学的な精査に絶えられない、ないし、血液採取が十分にできていない症例が予想以上に多かった。 今年度は、免疫染色の染色性改善のために高感度の免疫染色キットの使用を試みたが、高感度の免疫染色キットは、感度の高さとは裏腹に非特異的な反応が強く起こりやすいなど、条件設定が難しく、十分な成果が得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
予備的な研究としての諸条件の設定については、(残念ながら十分に満足できるレベルには達していないものの、)この2年間で終了したものと考えている。予定より相当遅れてしまったが、本年度より本格的な分析に着手する。 ただし、前項で述べたように症例数が十分揃わないなど、当初の予定通りの準備状況にない。したがって、左右心臓血、大腿動静脈血すべてが採取可能ではなかった症例も対象に加え、より多くの症例で分析を試みる。
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Causes of Carryover |
昨年度から引き続いて本格的な分析のための条件設定を行ってきたが、残念ながら現時点でも十分な結果が得られていない。多数の症例に対して、一括して血清サ-ファクタント濃度の測定と免疫染色を行う予定であったが、まだその段階に至っていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
十分な結果は得られていないものの、条件設定については可能な範囲の検討はほぼ終えたように思われる。当初の予定通りの多数症例の一括した分析はできないが、現在得られている結果をもとに、少しずつ本格的な分析に着手したい。
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