2014 Fiscal Year Research-status Report
抽出・精製方法の違いがmRNAを指標とした体液の識別検査に及ぼす影響
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26460895
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
阿久津 智子 科学警察研究所, 法科学第一部, 主任研究官 (50356151)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻田 宏一 東京医科歯科大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (10334228)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | RNA / 抽出・精製方法 |
Outline of Annual Research Achievements |
血液および唾液からスピンカラム法および磁気ビーズ法によりRNAを抽出・精製した。得られたRNAについて、バイオアナライザー(アジレント)を用いてRIN値を算出することにより品質を評価し、抽出・精製法間で比較した。また、それらのRNAをcDNAに逆転写し、TaqManプローブを用いたリアルタイムRT-PCR法により、コントロール遺伝子であるβ-actinを増幅長139bpおよび77bpにて増幅し、Ct値を比較した。さらに、血液および唾液のターゲット遺伝子としてhemoglobin beta、statherinおよびhistatin 3をそれぞれ増幅し、dCt法による相対的定量値を比較した。 バイオアナライザーによる解析の結果、スピンカラム法で抽出・精製されたRNAは、磁気ビーズ法と比較して高いRIN値を示し、スピンカラム法のほうが高品質のRNAが精製可能であることが示された。 一方、リアルタイムRT-PCR法の結果、血液においては、磁気ビーズ法で抽出・精製されたRNAは、スピンカラム法と比較していずれの増幅長のβ-actinも小さいCt値を示し、磁気ビーズ法のほうが高感度に検出可能であることが示された。一般的に、遺伝子発現解析には高品質のRNAが必要とされているが、増幅長が短い解析方法の場合には、低分子RNAも抽出・精製可能な磁気ビーズ法も有効であると考えられた。 なお、唾液においては、増幅長77bpのβ-actinでは血液と同様の傾向が認められたが、増幅長139bpでは抽出・精製法によるCt値の差はほとんど認められなかった。また、dCt法による唾液特異的ターゲット遺伝子の相対的定量に増幅長77bpのβ-actinを使用した場合、抽出・精製法により異なる定量結果が得られた。このように、RNAが高度に分解していると考えられる唾液等の試料において、dCt法によるターゲット遺伝子の相対的定量を行う場合は、抽出・精製法の選択およびコントロール遺伝子の選定が重要であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度の研究実施計画では、標準的な試料として新鮮な各種体液について検討することとしており、血液および唾液を試料として検討を行い、RIN値の算出によるRNAの品質評価、リアルタイムRT-PCR法によるハウスキーピング遺伝子およびターゲット遺伝子の検出性ならびに相対的定量値の比較を行うことができたが、それ以外の体液については、研究代表者が平成26年9月末から産前・産後休暇および育児休業を取得したため、実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、血液および唾液以外の新鮮な体液試料について、平成26年度と同様の検討を行う。また、新鮮な体液試料で得られた比較結果を基に、実際の鑑定資料を想定した斑痕試料、微量斑痕試料、陳旧試料等について、以下の検討を行う。 1複数の方法によりRNA抽出・精製を行う。 2得られたRNAについて、品質評価を行い、斑痕化や陳旧化の影響を観察する。 3さらに、リアルタイムRT-PCR法によるハウスキーピング遺伝子の検出性およびターゲット遺伝子の相対的定量に対する斑痕化や陳旧化の影響を観察する。
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Causes of Carryover |
研究代表者が、平成26年9月末から産前・産後休暇および育児休業を取得し、その間研究を実施することができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に計画していたが実施できなかった研究については、育児休業終了後の平成27年5月から実施する。また、平成26年度に設備備品費で計上していたデータ取得・解析用パソコンについては、平成27年度に購入する。
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