2014 Fiscal Year Research-status Report
認知症・パーキンソン症候群への進行に関する縦断的地域疫学研究
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26460907
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
中島 健二 鳥取大学, 医学部, 教授 (70144673)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高齢者 / 認知症 / パーキンソン症候群 / 軽度パーキンソン徴候 / バイオマーカー / 頭部MRI / 生命予後 / 運動習慣 |
Outline of Annual Research Achievements |
認知症の前駆段階として軽度認知障害(MCI)が注目されているが、軽度の運動症状である軽度パーキンソン徴候(mild Parkinsonian signs:MPS)も認知症の前駆段階である可能性が指摘されている。我々は、島根県海士町においてMPSの頻度を本邦で初めて明らかにした(Uemura Y, et al. J Neurol Sci 2011)。本研究は、うつや主観的もの忘れ、MCIやMPSなどを示す住民がどのような転帰を示すか、認知症やPDへの進行を調査する縦断的疫学研究であり、平成26年度は下記の成果を得た。 1. 全町民を対象として、生活様式・習慣や生活・健康状況、睡眠障害、うつ、自覚的な認知・運動機能評価、などに関する自記式のアンケートを作成し、印刷を行った。平成27年度に配布し、回収予定である。 2. 国際的にも少なく、本邦では全く調査されていないMPSの予後調査を実施した。1) MPSの評価者間信頼性と評価者内信頼性のCohen’s kappaはK値=0.885と0.868と良好であり、2) 生命予後に関しては、運動機能正常群、MPS群、Parkinson症候群(PS)の順に悪化し、3) MPSが正常群に比して高頻度にPSへの移行や認知症の発症を認めた。 3. 平成22年度に海士町において撮影した頭部MRIについて解析し、糖代謝障害は糖尿病の有無に関わらず脳萎縮に関連し、健忘型MCI群において側頭葉内側面の脳容積が小さいほど認知機能が低下しやすい傾向が認められた。 4. 血中蛋白の網羅的検討からLewy小体型認知症のバイオマーカー候補物質としてthymosinβ4、Retinol binding protein 4、Human Platelet factor4を同定し、これらの臨床的意義に関する検討に向けて患者検体の収集を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全町民を対象とした、生活様式・習慣や生活・健康状況、睡眠障害、うつ、自覚的な認知・運動機能評価などに関する自記式のアンケートを作成し、印刷を行って作成が終了した。この計画は、予定した通りであり、順調に研究が進んだ。 MPSの予後調査もほぼ予定通り実施でき、MPSの評価者間信頼性と評価者内信頼性についても評価を行い、その信頼性が確認できた。さらに、MPSの生命予後は正常群とPSの中間であり、臨床的重要性を確認すると共に、PSへの進行や認知症発症が高頻度であることも確認でき、今後MPSに注目して進行予防を考える必要性も確認できた。以上の成果については、平成26年度に予定していた計画以上の成果が得られたものと考える。 平成22年度に海士町において撮影した頭部MRI解析についても、ほぼ計画通りに進めることができた。 バイオマーカーの検討に関しても、多数例の検体収集が順調に進んでおり、さらなる解析への準備も進んでおり、ほぼ計画通りの進捗である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度には、平成26年度に引き続き、島根県海士町での疫学調査を継続して実施する。 1. 生活様式・習慣や生活・健康状況、睡眠障害、うつ、自覚的な認知・運動機能評価などに関する自記式のアンケートを、全町民を対象として実施する予定である。 2. 縦断的疫学調査を進める。住民健診や在宅訪問を行い、一般身体機能、握力や下腿周囲径の計測、運動機能や認知機能などの評価を行い、MPSやMCI、うつなどからの認知症やPSへの進行を評価すると共に、リスクファクターについても検討を進める。本研究においてMPSの臨床的重要性について確認できたが、このような検討は、我が国では初めてであり、今後さらに本研究を展開する。MPSや認知症への進行要員を明らかにし、進展予防への方策の検討にもつなげていく必要がある。 3. 平成22年度に海士町において撮影した頭部MRI解析も引き続き検討を進める。 4. 鳥取大学附属病院を受診した患者の血液検体を用い、診断や進行を予測できるバイオマーカーの開発についても検討を進める。多数例の検体収集が進み、また、縦断的評価のための経過を追っての検体収集も進めており、平成27年度にはこれらの検体を活用して検討を進める予定である。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Lack of genetic association between TREM2 and late-onset Alzheimer's disease in a Japanese population2014
Author(s)
Miyashita A, Wen Y, Kitamura N, Matsubara E, Kawarabayashi T, Shoji M, Tomita N, Furukawa K, Arai H, Asada T, Harigaya Y, Ikeda M, Amari M, Hanyu H, Higuchi S, Nishizawa M, Suga M, Kawase Y, Akatsu H, Imagawa M, Hamaguchi T, Yamada M, Morihara T, Takeda M, Takao T, Nakata K, Sasaki K, Watanabe K, Nakashima K, et al
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Journal Title
J Alzheimers Dis
Volume: 41
Pages: 1031-1038
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] A 3-year cohort study of the natural history of spinocerebellar ataxia type 6 in Japan2014
Author(s)
Yasui K, Yabe I, Yoshida K, Kanai K, Arai K, Ito M, Onodera O, Koyano S, Isozaki E, Sawai S, Adachi Y, Sasaki H, Kuwabara S, Hattori T, Sobue G, Mizusawa H, Tsuji S, Nishizawa M, Nakashima K
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Journal Title
Orphanet J Rare Dis
Volume: 9
Pages: 118
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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