2014 Fiscal Year Research-status Report
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26460915
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
羽野 卓三 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (90156381)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水越 正人 関西医療大学, 看護学部, 教授 (90254531)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高血圧 / 交感神経 / 瞳孔機能 / カルシウム拮抗薬 / 等尺運動負荷 |
Outline of Annual Research Achievements |
自律神経の機能評価に用いられている瞳孔機能検査を用いることで非侵襲的に簡便に負荷時の交感神経機能、副交感神経機能を評価した。高血圧患者に投与させるカルシウム拮抗薬のなかでジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬は降圧に伴う反射性交感神経亢進が示すことが知られている。一方、交感神経を抑制するとされる一部のカルシウム拮抗薬ではメンタルストレスによる皮膚血流の変化が抑制される成績がある。本研究では、本態性高血圧患者を対象に、等尺性運動により惹起される自律神経活動変化に及ぼすジヒドロピリジン(DHP)系カルシウム拮抗薬(CCB)のアムロジピン(AM)とシルニジピン(CL)の影響を、瞳孔機能計を用いて検討した。等尺性運動負荷は、15分間の安静後に血圧や脈拍、瞳孔機能測定および脈波解析を同時に実施し、その後1分間の最大握力の70%でのハンドグリップ負荷終了直後に安静時と同様の測定を行った。光刺激で得られる瞳孔径の変化から縮瞳速度(VC)と散瞳速度(VD)を算出し、それぞれを副交感神経機能と交感神経機能の指標とした。また脈波解から低周波成分と高周波成分の比(LF/HF)を算出し、これを交感神経機能の指標とした。その結果、収縮期血圧と脈拍は両群とも負荷後に有意に上昇したが、拡張期血圧はAM群のみで有意に上昇した。VCは両群とも負荷後に有意に上昇したが、その変化度はCL群よりAM群の方が有意に大きかった。VDはCL群では変化しなかったがAM群で有意に上昇した。LF/HFもCL群では変化しなかったがAM群では有意に上昇した。以上よりCLは交感神経末端に分布するN型チャネルを阻害する割合がAMより大きいことが示唆された。LF/HFの上昇もCL群で抑制されたことはこの結果と合致する。このことからCLは交感神経活動を抑制することでハンドグリップ負荷による血圧上昇を抑制したと結論づけた
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本態性高血圧患者を対象に、交感神経機能評価を非侵襲的に簡便に、かつ継続的に評価できる瞳孔機能検査を用いて評価することができた。また。等尺性運動により惹起される瞳孔機能検査で評価される交感神経機能と血圧、脈拍が必ずしも一致せず、副腎由来の血中アドレナリンによる影響と区別して評価できることが明らかとなった。また、ジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬であるシルニジピンを用いて、等尺運動負荷による交感神経への影響を、瞳孔機能計を用いて検討することで、等尺運動負荷後の脳神経の賦活化を本剤はアムロジピンと比較して抑制するが、残存する収縮期血圧と脈拍の負荷後の上昇は副腎の活性化によることが明らかとなった。また、シルニジピンは交感神経末端に分布するN型チャネルを阻害することで惹起されることが示唆された。これらの知見は交感神経活性の指標とされるLF/HFの成績と合致した。このことから瞳孔機能検査を用いた交感神経、副交感機能の評価は有用であること、カルシウム拮抗薬においても交感神経活動を抑制する作用が明らかになったことから、本研究の初年次の目標はほぼ達成されたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.シルニジピンとは機序が異なるが交感神経を抑制するとされるアゼルニジピンを用いて、カルシウム拮抗薬を服薬している高血圧患者について瞳孔機能検査から等尺運動負荷時の交感神経系の変化を評価し、カルシウム拮抗薬の違いによる交感神経への影響を明らかにする。 2.加齢に伴い、交感神経機能は低下することが知られているが、同時にストレス時の血圧変動が大きいことや日差変動が大きいことが知られている。このように交感神経機能のみでは説明できない血圧反応がみられる原因について瞳孔機能検査を用いて検討する。 3.日差変動に対するカルシウム拮抗薬の影響が交感神経抑制作用の有無で異なるかを明らかにしたい。
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Research Products
(5 results)