2015 Fiscal Year Research-status Report
社会的ストレスに対する香蘇散の有効性-多彩な行動薬理学的手法を用いた基礎研究-
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26460918
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
伊藤 直樹 北里大学, 東洋医学総合研究所, 研究員 (00370164)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 社会的ストレス / 抑うつ / 香蘇散 / 脳内炎症 / negative cognitive bias |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの成果として我々は、社会的ストレスモデルとして広く利用されているchronic social defeat stress (CSDS) モデルマウスを用いて、そのモデルマウスが示す抑うつ様行動に対して漢方方剤「香蘇散」が改善効果を発揮すること、さらにはその作用メカニズムとして脳内炎症反応の抑制が一部関与していることを報告した。そこで本年度では、香蘇散の脳内炎症反応抑制効果についての更なる検討と共に、CSDSで誘導されるネガティブ思考関連行動であるnegative cognitive bias (NCB) 行動に対する香蘇散の効果についても併せて検討を行った。以下に得られた成果の概略を示す。 1. CSDS負荷マウスから単離したmicrogliaは、非ストレス群と比べてLPS刺激による有意な炎症性サイトカインであるIL-6産生の増加が認められた。一方で、香蘇散投与CSDS負荷マウス由来のmicrogliaでは、LPS刺激によるIL-6産生の増加は認められなかった。 2. CSDS負荷マウスの脳内では、炎症性メディエーターであるNLRP3陽性細胞の増加および抗炎症性に作用するCX3CR1陽性細胞の減少が認められ、全体的に炎症が誘導され易い状態になっていることが明らかになった。それに対して香蘇散は、CX3CR1陽性細胞数の増加による抗炎症反応を増強させることが示唆された。 3. CSDS負荷マウスで認められたNCB行動は、香蘇散投与によって改善されなかった。 以上の結果より、香蘇散はCSDSストレスで誘導されるNCBには作用しないながらも、抗炎症反応を増強することによりCSDS誘発脳内炎症反応亢進を抑制する事が示唆され、これにより香蘇散の抗うつ様効果が発揮されることが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に計画していたNCB行動の検討では、香蘇散にNCB行動を改善する作用は見出すことは出来なかったが、前年度の成果で見出された脳内炎症に対する香蘇散の抑制効果について、本年度ではより詳細なメカニズムが明らかになり、ストレス誘発性の抑うつ様症状に対する香蘇散の有用性がさらに補強された。以上の点から、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度で得られた結果を踏まえ、次年度でも引き続き香蘇散の抗うつ様効果と脳内炎症抑制効果の関連性をより明確にすることを目指す。また、本年度ではストレス負荷後からの薬物投与により、ストレス誘発抑うつ様行動に対する香蘇散の治療効果についても検討し、香蘇散の有用性をさらに検証する。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、本年度に行動解析装置を備品として購入する予定だったが、別に獲得した研究助成金によりそれを購入することが出来た。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度への繰り越し金は、香蘇散の脳内炎症に及ぼす効果のさらなる解析、香蘇散の治療効果の検討、研究成果の学会発表および論文の投稿料等に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)