2015 Fiscal Year Research-status Report
悪性黒色腫に対する補完代替医療的観点からの漢方治療戦略
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26460922
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
久光 正 昭和大学, 医学部, 教授 (20167604)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 慎太郎 昭和大学, 医学部, 講師 (70439355)
砂川 正隆 昭和大学, 医学部, 准教授 (20514467)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 病態生理学 / 免疫学 / 東洋医学 / 創薬 / トランスレーショナルリサーチ / 悪性黒色腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
滋養強壮としての作用をもつ十全大補湯や補中益気湯は、悪性腫瘍の治療の体力の回復を目的に頻用される漢方薬であり、近年、免疫力を高めて抗癌剤の効果を補う作用が注目されている。悪性黒色腫は高頻度に転移をきたす皮膚悪性腫瘍であり、原発巣の処置とともに転移への対応が重要となる。 我々はこれまでにマウスの悪性黒色腫モデルを用いて、十全大補湯の転移抑制について報告した。本計画では、当該漢方薬による免疫細胞の活性化、悪性黒色腫の治療に頻用される抗癌剤作用への免疫学的な影響と当該抗癌剤における副作用への影響を検討することを予定している。 平成27年度は、十全大補湯と構成生薬が同様の補中益気湯を用いてNK細胞などの抗腫瘍作用を有する免疫細胞を活性化しうるかという点について検討した。臨床においては両処方共に化学療法後の補剤として処方されることが多いが、腫瘍転移についての検討は少ない。 そこでB16メラノーマ細胞をモデル動物の尾静脈から接種して『転移モデル』を作製し、組織学的および免疫学的に再度検討をおこなった。まず形態学的検討として、肺への遠隔転移の状態を組織学的に観察した。また脾臓から免疫担当細胞(脾細胞)を採取しサイトカイン分泌能を指標に免疫学的検討をおこなった。 結果として補中益気湯を投与した被験動物ではB16メラノーマ細胞の肺転移が抑制され、血中および当該動物の脾細胞のIL-12およびINF-γのレベルが補中益気湯投与で増加した。また抗アシアロGM1抗体を用いてNK細胞を除去した動物では、補中益気湯の効果が認められなかったことから補中益気湯は免疫担当細胞からのサイトカイン分泌を促すことでNK細胞を活性化させ、B16メラノーマ細胞の転移を抑制しうる可能性が示された。また十全大補湯の投与においてもNK細胞活性が生じていることが推察されたが関与するサイトカインが異なることが予想され現在追試を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、前年研究していた検討内容を踏襲する内容であったため、研究がスムーズに進行した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、申請計画通り、抗癌剤による副作用(食欲減退)に対する当該漢方薬の改善効果を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた検討の内、ターゲット細胞の遺伝子発現など生化学的検討の一部をおこなわなかった為、予定していた使用額を満たさなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在、平成27年度にサンプリングした試料を所定の方法で固定後、凍結保存しており、今後の検討と合わせて、染色後に顕微解剖学的に検討する予定である。また現在これまでの成果について論文を作成中であり、28年度内の投稿を予定している。
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