2015 Fiscal Year Research-status Report
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26460946
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
鹿野 美千子 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (70405190)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神谷 武 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10254301)
植田 高史 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90244540)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ASIC5 / マウス食道 / RT-PCR / ウェスタンブロット / HEK293T |
Outline of Annual Research Achievements |
ASIC5(BLINaCまたはBASIC)は胆汁酸に応答するリガンド作動型イオンチャネルとして、ラットの胆嚢や十二指腸でクローニングされた新規胆汁酸センサー候補遺伝子だが、その食道での発現は知られていなかった。 そこで我々は、ASIC5をマウス食道上皮における新規胆汁酸センサーと推測し研究計画を作成した。昨年度、このASIC5に対する市販抗体を用い、マウス消化器系での発現を検討したところ、食道、十二指腸、胆のうにおいて、その粘膜上皮に陽性反応を認め、さらにこの反応は抗原吸収試験で消失したことから、今年度も引き続き、ASIC5についての解析を行った。マウス食道のASIC5をクローニングするために行ったRT-PCRでは、マウス食道には2つのスプライシングバリアントが存在することが示唆された。さらに食道を上・中・下部、前胃に分けてASIC5の様々な領域の遺伝子断片の発現を部位ごとに比較すると、どの断片も食道中・下部で発現が多いことが分かった。さらにウェスタンブロットにおいても、PCRの結果と一致する結果を得た。一方、この市販抗体の特異性を別角度から調査するために、様々なASIC5のコンストラクトを作製し、これをHEK293T細胞に強制発現させたサンプルを用いた解析も並行して実施したところ、mRNAはきちんと発現しているにもかかわらず、ウェスタンブロットによるタンパクレベルの解析では予想と反した結果が得られた。 現在この理由を精査しているが、食道ではASIC5、あるいはASIC5に類似した塩基配列をもつ別の遺伝子が発現して機能している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度に実施したASIC5の免疫組織化学的解析では、マウス食道での発現が矛盾点なく示されていたが、RFP-T蛍光タンパクと融合させたASIC5など、様々なASIC5のコンストラクトを作製し、これをHEK293T細胞に強制発現させたサンプルを用いた解析では、mRNAはきちんと発現しているにもかかわらず、ウエスタンブロットによるタンパクレベルの解析では予想とは異なる結果が得られた。複数社の市販抗体を試したが、いずれも結果に矛盾を生じた。これはこれら既存の抗体が正しくASIC5を認識していないという結果であると解釈した。 この問題を解決するために、ASIC5の配列から独自に抗原となるペプチドを設計し、ASIC5に対する抗体を作製した後、作製した抗体を用いて同様のウエスタンブロットによる解析を複数回行った。しかしながら、新たに作製した抗体も機能しないことから、現在予定よりも大幅に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
ASIC5に特異的な抗体が作製できなかったが、RT-PCR法ではASIC5をコードする塩基配列の遺伝子断片が食道の中部、下部という逆流性食道炎の病態との関連を想定させる部位に発現が豊富であることが分かったので、これをもとにこのmRNAから転写翻訳されるタンパク質を同定することを今後の新たな課題にしたいと考えている。ASIC5についても継続して解析を行うが、時間をかけて作製した抗体がうまく機能しないことを想定して、ASIC5のノックインレポーターマウスを作製することも考えている。時間と労力が必要であるため、期間内に結果を出すことは不可能と思われるが、このノックインレポーターマウスを利用してASIC5の発現や機能について少しずつ研究を進めていく予定である。 またASIC5が属すASICファミリーのうち、ASIC4という遺伝子も生後5日のマウスの腸管に発現していることが別の研究にて明らかとなったので、ASIC5の研究と並行して、このASIC4の食道での発現も解析したいと考えている。ASIC4のノックインレポーターマウスは既に作製できており、ノックアウトマウスも数は少ないがホモの個体が増え始めている。
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Causes of Carryover |
ASIC5に対する特異的な抗体がないという不測の事態が起こり、その過程で免疫組織化学染色、ウエスタンブロットによる確認作業の回数が重なり、研究の流れが止まってしまったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ASIC5の研究と並行して、すでに当教室で作製し保有しているASIC4ノックインレポーターマウスを用いて、ASIC4についても消化管(食道、胃、十二指腸、小腸、遠位・近位結腸)での発現を免疫組織化学染色で精査する。発現パターンに特徴が見つかれば、そこから、機能解析に発展させていく。 ASIC4ノックインレポーターマウスと同じプロトコールでASIC5ノックインレポーターマウスの作製も進めていきたい。
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Research Products
(4 results)