2014 Fiscal Year Research-status Report
がんの発生・進展におけるバイオマーカーとしてのインスリン様増殖因子の活性化
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26460968
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮本 心一 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90378761)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | インスリン様増殖因子 / バイオマーカー / 中和抗体 / 分子標的療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らはこれまでに前立腺がん・乳がんの骨転移、大腸がん肝転移形成におけるインスリン様増殖因子(Insulin-like Growth factor:IGF)の重要性を証明してきた。骨、肝臓ともIGFの産生が多い臓器として知られており、腫瘍はIGFの生理的な阻害因子であるIGF結合蛋白質(IGFBP)を自身が産生するプロテアーゼにより分解する。転移巣局所で生物活性をもった(Bioactive)IGFはパラクライン的に主として抗アポトーシス因子として作用する。われわれはこのBioactive IGFをEDTA血漿中で評価するアッセイ法を開発し(論文投稿準備中)、大腸がん肝転移モデルにおいても経時的にBioactive IGFが上昇することを確認した。また非膵島腫瘍性低血糖(Non-islet Cell Tumor Hypoglycemia:NICTH)はIGF-2がその病態に関与していることが知られているが、われわれはNICTHを呈した大腸の神経内分泌細胞がんの症例を経験した。この症例の血中Bioactive IGFをわれわれが開発したアッセイ法で測定したところ、総IGF-2量には変化がないにもかかわらず、Bioactive IGF-2が増加しており、NICTHの病態においてはIGF-2の活性化機構が働き、Bioactive IGF-2がインスリン受容体を介して低血糖を引き起こすことが強く示唆された。すなわちNICTHは抗IGF中和抗体のよい適応疾患と考えられ、低血糖の改善のみならず、抗腫瘍効果も期待できるものと思われた(Cancer Biol Ther 2015)。今後は大腸がん肝転移モデルにおいて、Bioactive IGFが治療効果を予測するバイオマーカーとなりうるかを検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
①ヒト、マウス血中のBioactive IGFを測定するに当たり、採血方法や保存条件により測定結果に大きな影響が出ることが明らかになり、至適測定条件の設定に時間がかかったため。 ②ヒト大腸がん細胞株をSCIDマウスの脾臓に注入し肝転移モデルの作成を試みたが、転移効率が一定せず、安定したモデルマウスが作成できず、治療実験の開始までに時間がかかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
Bioactive IGFの測定系は確立できたものと考えており、肝転移モデルに関してもNOGマウスを使用することにより、ほぼ安定した転移効率が得られるようになった。今後はBioactive IGFが治療効果判定のバイオマーカーになりうるかを検証しながら、抗IGF中和抗体の薬効をin vivoで証明して行きたい。さらにこれまでの研究結果からは抗IGF中和抗体単独では抗腫瘍効果としては不十分であると予想され、抗腫瘍薬や放射線治療との併用療法の開発にも研究を広げていく予定である。一方でIGF活性化の結果生じる、IGF-BP断片に関しての解析も進め、IGF中和抗体の適応疾患の選択や効果予測だけでなく、疫学的にIGFの関与が示唆される腫瘍(乳がん、肺がん、前立腺がん、大腸がんなど)における早期発見のマーカーとしての可能性を探りたい。
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Causes of Carryover |
初年度はin vitroの実験が主体であり、抗体をはじめとする試薬や細胞培養器具に関しては十分なストックがあったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は動物実験が中心となり、特に肝転移モデルを作成するための免疫不全動物(NOGマウス)の購入に充てる予定である。
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