2014 Fiscal Year Research-status Report
炎症性腸疾患における線維化機序解明と分子標的治療への応用
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26460976
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
芝田 渉 横浜市立大学, 先端医科学研究センター, 准教授 (00435819)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 炎症性腸疾患 / 線維化 / NF-kB / 線維芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
炎症性腸疾患患者の腸線維化におけるNF-kBの関与を検討するため研究を開始した。臨床検体の利用に関しては現在当該診療科と検体の研究利用に関して調整中である。病理医や当該外科診療科との連携のもと、臨床検体における検討を行っていく予定であるが、調整に時間を要している。そのため初年度に動物腸線維化モデルの検討を先に開始した。研究計画であげた、線維化に関わると考えられる筋線維芽細胞と細胞内シグナルのNF-kBに着目しB6野生型マウス(WT)と、筋線維芽細胞特異的NF-kB欠損マウス(IKKβΔMF)を用いて、2.5%dextran sodium sulfate(DSS)自由飲水マウス腸炎モデルを作成し、腸炎や線維化の評価を行った。病理学的検討に加え、リアルタイムPCR法やウェスタンブロットによるmRNAおよびタンパク発現解析も行った。(結果)まず野生型マウスにDSS腸炎を起こし、腸炎回復期の22日目までの期間で筋線維芽細胞が最も多く動員される時点をα-smooth-muscle actinの免疫染色とウエスタンブロットで検討した。その結果、投与15日目の「潰瘍回復期」において最も多く筋線維芽細胞が動員されていた。この結果をふまえ、WTマウスとIKKβΔMFマウスでの比較検討では、15日目を基準に腸炎の評価を行った。その結果体重変化は、両群間に有意差はないもののWTに比べIKKβΔMFマウスの方が体重減少は軽度であった。腸炎の重症度を示す腸重量や腸の長さを検討した結果、いずれもIKKβΔMF群で腸炎が軽度であることが示唆された。HE染色による病理学的検討では、炎症細胞浸潤には2群間において有意な差は認められなかったが、潰瘍形成はIKKβΔMFマウス群でやや少ない傾向にあった。シリウスレッド染色では、線維性変化が認められず線維化の評価は不能であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
臨床検体利用に関しては、当該施設、当該診療科とひきつづき密に連携をとり、研究を進めていく。動物モデルに関しては、既存のモデルでは腸の線維化が十分確認できなかったことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
以上の結果から平成27年度以降は、慢性炎症により腸線維化を惹起するモデルであるDSS反復投与モデルや、炎症腸管からの筋線維芽細胞の単離を試み、NF-kB活性化の有無による線維増生のメカニズムについて解析をおこなっていく予定である。特に線維化自体を誘発する手段や線維を確認する染色方法の確立と、筋線維芽細胞の単離技術の樹立を継続して行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
臨床検体による解析などが調整がつかず、いま現在着手できていないためそれに対して計上していたDNA解析などに対する研究費の利用がなかったことが理由としてあげられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
臨床検体の利用が可能となれば、それを用いた遺伝子解析等に費用が必要となってくる。また動物モデルに関しては、腸線維化モデルの検討をさらに詳細に行っていくため、継続して研究に用いる消耗品等に費用が必要であり、また一定の成果が出れば、学会発表や論文発表も行う予定であり、それらに対して平成27年度使用が予定される。
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