2015 Fiscal Year Research-status Report
超音波マイクロバブルを用いた劇症肝炎の新しい治療法の開発
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26460991
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
峯村 正実 富山大学, 大学病院, 講師 (10313602)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉山 敏郎 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (00196768)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 肝マクロファージ / 劇症肝炎 / マイクロバブル / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
P.acnes/LPS投与による劇症肝炎モデルにおける肝マクロファージ(Kupffer細胞)の活性化と貪食能に関する基礎的な検討を継続して行った。H26年度に確立したマウスマクロファージ活性化の系を用いて、肝障害を起こす機序の解明のため、グラム陽性菌(P. acnes)だけでなく、抗炎症効果が報告されているグラム陽性菌(Clostridium butyrium MIYAIRI588:CB)および敗血症に深く係わるグラム陰性桿菌(E.coli)を用いて、肝炎・炎症に関わる遺伝子群を網羅的に解析した。1)マウスマクロファージ細胞株(RAW264.7細胞)に熱処理により死滅させたP.acnes、CB、E.coliを単独あるいはLPSと同時投与し、cDNA array (Antibacterial Response RT2 Profiler PCR Array)を用いて細菌に対する宿主細胞の反応を網羅的に解析した。特に炎症性サイトカイン(TNFa, IL1b, IL6, IL10, IL12b, IL18)ならびにinnate immunity を司るToll-like receptor (TLR)群(TLR2, TLR4, CD14)の発現をRael-time PCRにてより詳細に検討した。マクロファージは、P. acnes やCBに比べE.coli により著しく炎症性サイトカイン(IL1b, IL6, IL18)を発現し、P.acnes やCBによりTLR4の発現抑制が確認された。一方、P. acnes やCB によってもLPSを同時添加することで、各サイトカインは相加的に発現が誘導され、劇症肝炎モデルにおける細菌と肝マクロファージの関連を検討することが出来た。2)肝マクロファージの活性化時における貪食能の変化をRAW264.7細胞を用いて解析した。蛍光標識ビーズ(FITC標識ウサギIgGコートラテックスビーズ)と超音波造影用マイクロバブル(Sonazoid)を添加し、1、6時間後に蛍光強度を測定するとともに,超音波断層装置(Ascendus, 日立メディコ)のハーモニックイメージでSonazoidを取り込んだマクロファージを可視化した。LPSで活性化した場合もハーモニックイメージにおいては有意な差は確認できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
超音波マイクロバブルを用いた劇症肝炎の新しい治療法の開発が本研究の目的であるが、 H27年度は26年度に引き続きP.acnes/LPS投与による劇症肝炎モデルにおける肝マクロファージ(Kupffer細胞)の活性化と貪食能の変化に関連する遺伝子群の変動をcDNA arrayおよびRT-PCRを用いて詳細に検討した。劇症肝炎の病態形成に重要な肝マクロファージの活性化と貪食能の基礎的な検討は、本研究を遂行する上で有用であると考えている。劇症肝炎の発症においてinnate immunityとの関連も重要と考え、Toll-like receptorに代表される遺伝子群の解析も同時に行い、興味深い知見を得ている。また、今回は超音波造影剤であるSonazoidを貪食させた後に超音波断層装置(Ascendus)のハーモニックイメージを用いて、マクロファージの画像化を行った。in vivoでのマイクロバブルによるイメージングの基礎固めができたと考えている。今回の研究実績としては示していないが、他施設での吸入麻酔下でマウスの尾静脈から超音波造影剤(Sonazoid)を投与し、ハーモニックイメージングによる肝血流とKupfferイメージの撮像も経験しており、マウス劇症肝炎モデルの動物実験の申請中である。 H27年度は当初の計画のうち基礎的な部分しか検討できていないが、H28年度の研究を遂行する上で必要な実験であったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
超音波マイクロバブルを用いた劇症肝炎の新しい治療法の開発が本研究の目的であり、劇症肝炎モデルへの超音波造影剤(Sonazoid)の投与によるハーモニックイメージングを行い、肝障害時におけるリアルタイムでの肝マクロファージの分布と貪食能の変化を含めた評価を行う予定である。また、リアルタイムではないが、劇症肝炎状態のマクロファージの分布と機能をより客観的に評価するためSPIO(Resovist)を用いたMRIによる検討も考えている。(当施設には、小動物用のMRI装置がすでに完備されている。) 劇症肝炎病態での超音波造影剤(Sonazoid)によるKupffer細胞の可視化は可能であるが、Sonazoidそのものに薬剤を内包することは化学技術的に困難であることがわかったため、PEG化していないバブルリポソームにアンチセンスオリゴやNF-活性化抑制薬剤などを内包化した方法を検討中であり、Kupffer細胞を標的とした薬物デリバリーとリアルタイムな可視化を予定している。in vivoでの投与前に、今回確立した肝マクロファージのin vitroでのアッセイ系を用いて、薬剤を充填したバブルリポソームの貪食状況、薬剤の効果発現の確認実験を遂行する予定である。
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Causes of Carryover |
H27年度は、P. acnes /lipopolysaccharide(LPS)投与による劇症肝炎モデルにおける肝マクロファージ(Kupffer細胞)の活性化と貪食能に関する基礎的な検討を行うことに研究時間を要したため、マウス劇症肝炎モデルでの実験が遅れ、予定していた動物の購入費などの費用が使用されたかったため、次年度の使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度は、P. acnes /lipopolysaccharide(LPS)投与による劇症肝炎モデル作成のためのマウスの購入、劇症肝炎抑制処置時の遺伝子変化の網羅的解析に用いるcDNA arrayの購入、薬剤内包バブルリポソームの作成、in vivoでのマイクロバブルの投与などの実験を遂行するために使用する。
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[Presentation] Analysis of the Direct Interaction between Macrophages and Microbiota2016
Author(s)
Masami Minemura, Yasuhiro Nakayama, Katsuharu Hirano, Yoshiharu Tokimitsu, Kazuto Tajiri, Kengo Kawai, Hiroshi Kudo, Yutaka Yata, Satoshi Yasumura, Terumi Takahara, and Toshiro Sugiyama
Organizer
25th Conference of the Asian Pacific Association for the Study of the Liver
Place of Presentation
Tokyo, Japan
Year and Date
2016-02-22 – 2016-02-23
Int'l Joint Research