2015 Fiscal Year Research-status Report
C型慢性肝炎ウイルスによる脂質代謝異常に対するmiRNAsの関与の解明
Project/Area Number |
26461014
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
斉藤 聡 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (00275041)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 淳 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30326037)
今城 健人 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (30600192)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | C型肝炎 / ウイルス / miRNAs / 脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝子型1bのHCV-O株より開発された全長HCV-RNA複製系、OR6アッセイシステムを用いている。本研究のコントロールはHCV複製増殖細胞からインターフェロン(IFN)によりウイルスを完全に排除した細胞:OR6c)を用いている。昨年までの実験では本研究で生体内の様に利用可能な脂質が存在する環境を作るためにオレイン酸100μMを培地に添加した環境で行っている。miR-33bは肝臓内で脂肪酸合成を促進に作用するが、これがHCV複製の環境に有利と考えていた。このためこの作用を抑制するmiR-33b inhibitor(miR-33bと結合しmiR-33bの発現を抑制する)がHCV複製を抑制すると予測したが、これに反しmiR-33b mimic(内在性miR-33bの配列で、miR-33bが増加した状態を作る)によりHCVコア蛋白(構造領域)とNS3(非構造領)の発現の低下を認めた。この発現抑制が十分抗ウイルス薬としての効果が期待できるかを、miR-122 inhibitor(これまでにHCVを発現抑制が認められているmiRNA)と比較した。①miR-122 inhibitorはHCV蛋白の発現レベルはmiR-122 innhibitorを投与しなかった場合に比較して30%以下に減少した。ただし脂肪酸合成にかかわる遺伝子(SREBP1、FAS など)には影響を与えなかった。コントロール細胞(OR6c)でも同様にSREBP1、FAS などに影響はなかった。②miR-33b mimicではSREBP1、FAS などは発現が亢進した。予想に反しHCV蛋白の発現はmiR-33 mimicを投与しない場合に比較して抑制されているが、その抑制率は20%に過ぎずmiR-122 inhibitorに比較してその効果は明らかに小さかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
miR-33b mimicは脂質代謝には影響しているが、これが直ちにHCV複製に影響を与えていなかった。抗ウイルス活性はこれまでに報告されているmiR-122 inhibitorに比較して明らかに低かった。今後miR-33b mimicをHCV増殖をコントロールする薬剤として用いることは、これのみでは困難と考える。 一方、HCVが排除されることにより患者の特にLDLコレステロールが増加する現象が認められているが、この脂質代謝の変化にmiR-33bが関与している可能性が示された。抗ウイルス活性を目的とした場合は予想より効果が期待できず、ここに固執していると十分か研究成果が期待できない。
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Strategy for Future Research Activity |
C型肝炎ウイルスに感染していた患者が、ウイルス排除後に脂質代謝が変化することが近年指摘されている。さらにウイルスが排除された後でも発がんを認めるケースがあることも問題となっている。一方、脂肪が蓄積し肝炎、肝硬変、肝臓がんへの進展を示す、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が問題となっているが、C型肝炎ウイルス排除後の発がんが、このNASH発がんと機序が類似している可能性があると言われている。 miR-33bは脂質代謝に影響するが、抗ウイルス効果は不十分であった。抗ウイルス治療後に患者の脂質代謝が変化し、高脂血症をきたすことが知られているが、miR-33bがどのように関与するかを明らかにする。またこのことがHCV排除後の発がんに影響を与えている可能性を検討する。
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