2014 Fiscal Year Research-status Report
自然免疫活性化によるB型肝炎ウイルス特異的T細胞応答の誘導
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26461015
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
五十川 正記 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50723201)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | B型肝炎ウイルス / HBV特異的CD8+T細胞 / 活性化樹状細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
B型肝炎ウイルスはエンベロープで覆われた不完全二本鎖DNAウイルスであり、急性または慢性肝炎の原因となり、B型慢性肝炎の多くは肝硬変、さらには肝細胞癌へと進行する。HBVの排除には感染細胞を選択的に破壊することの出来るHBV特異的CD8+T細胞応答が必要不可欠である。実際、HBV特異的CD8+T細胞はB型急性肝炎患者の抹消血中には多数存在し、抗ウイルス作用の要となるインターフェロンガンマ(IFN-γ)産生能を有するのに対し、B型慢性肝炎患者の抹消血中では著明に減少し、ほとんどの場合でIFN-γ産生能の低下が認められる。従って、機能的なHBV特異的CD8+T細胞応答の誘導が、B型慢性肝炎の治療の一環として重要と考えられているが、そのようなT細胞応答がどのような機序で誘導されるのかは明らかにされていない。 申請者らの研究から、HBV特異的T細胞が肝細胞表面に提示された抗原を認識することにより、それらの機能が抑制されること、さらに、特殊抗原提示細胞である樹状細胞を活性化することにより、この機能抑制を解除できるということが示された。 本研究は、活性化樹状細胞が、どのような分子学的機序でHBV特異的免疫寛容を克服し、機能的なHBV特異的T細胞応答の誘導するのかを明らかにするとともに、機能的HBV特異的T細胞応答を誘導するために効果的な自然免疫シグナル伝達経路を同定することを目的とする。これらの研究は、自然免疫の活性化がどのようにHBV特異的T細胞応答の誘導につながるのかを解明するのみならず、B型慢性肝炎に対する新しい免疫治療の開発を促進するものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は本基盤研究の初年度にあたる。本研究に必要な様々なトランスジェニックマウスを個体化するため、米国スクリプス研究所から肝臓内でHBVを発現するHBVトランスジェニックマウス(HBV-Tgマウス)、HBV特異的T 細胞受容体を発現するT cell receptor(TCR)トランスジェニックマウスの凍結配偶子を受領し、その配偶子を用いた体外受精によって個体化に成功した。さらに、これらのトランスジェニックマウスを用いて、機能的なHBV特異的T細胞応答誘導における第1シグナルと呼ばれる抗原刺激シグナルの重要性を検討した。HBV-Tgマウスに1000radのX線を照射し、MHC class Iを発現しないβ2-マイクログロブリン(β2m)欠損マウスから取り出した骨髄細胞を移入することにより、骨髄由来細胞上でMHC class Iを発現しない骨髄キメラHBV-Tgマウスを作成した。骨髄細胞移入2-3ヶ月後、これらのマウスのDCsをαCD40で刺激し、HBV特異的TCR-Tgマウスから単離したHBV特異的ナイーブCD8+T細胞を養子移入した。養子移入後に骨髄キメラマウスの肝臓、脾臓、リンパ節中のHBV特異的CD8+T細胞応答を解析した。さらに、これらHBV特異的T細胞応答のウイルス排除、肝障害への影響も検討した 。骨髄由来細胞上でMHC class Iを発現しない骨髄キメラHBV-Tgマウスでは、野生型のHBV-Tgマウスに比較して、HBV特異的CD8+T細胞の増殖、機能分化はともに抑制された。このT細胞増殖、機能分化の抑制を反映して、HBV発現は遷延し、著名な肝障害も認められなかった。以上の結果から機能的HBV特異的T細胞応答の誘導には、骨髄由来細胞による抗原提示が必要であることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に得られた結果をもとに、平成27年度は、HBV-Tgマウスをβ2-マイクログロブリン(β2m) 欠損マウスと交配し、MHC class Iを実質細胞上に発現しないトランスジェニックマウスを作成する。これらのマウスに1000radのX線を照射し、野生型のB6マウスから単離した骨髄細胞を移入することにより、骨髄由来細胞上でのみMHC class Iを発現する骨髄キメラHBV-Tgマウスを作成する。骨髄細胞移入2-3ヶ月後、これらのマウスのDCsをαCD40で刺激し、HBV特異的TCR-Tgマウスから単離したHBV特異的ナイーブCD8+T細胞を養子移入しする。養子移入後に骨髄キメラマウスの肝臓、脾臓、リンパ節中のHBV特異的CD8+T細胞応答を解析することにより、骨髄由来細胞による抗原提示が、機能的なHBV特異的T細胞応答の誘導に十分であるかどうかを検討する。さらに、Type 1 IFN、IL-12などを介した第3シグナルが、機能的HBV特異的CD8+T細胞応答の誘導に重要性であるかどうかを検討する。HBV-Tgマウスを抗IFN-α/β受容体抗体 (αIFN-α/βR) (Clone MAR1-5A3)、抗IL-12抗体 (αIL-12) (clone C17.8)にて処置することにより、それぞれのシグナルを阻害し、同マウスのDCsをαCD40で刺激後、HBV特異的ナイーブCD8+T細胞を養子移入し、HBV特異的CD8+T細胞応答、HBV複製・mRNA発現、肝障害の程度を解析する。
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Causes of Carryover |
26年度は高額な試薬の購入が無く、当該研究費において旅費支出も不要であったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究開始2年度目となる27年度は消耗品費、その他費用(実験動物飼育費)については、高額となるため、繰越し研究費を加えることで研究を実施する。
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Research Products
(5 results)