心房細動における異所性巣状興奮とリエントリーの役割について

2016 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 26461066
• Research Institution: Nagoya University
• Principal Investigator: 植田 典浩 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教 (10456709)
• Project Period (FY): 2014-04-01 – 2018-03-31
• Keywords: 心房細動

Outline of Annual Research Achievements

深麻酔下においてウサギの心臓を摘出し、大動脈にカニューレを挿入した後に、37度に維持したランゲンドルフ灌流を行った。心室筋と心房筋の活動電位への影響を避けるために、特にカリウム値やカルシウム値が同じであることに留意した。全例において上大静脈（右側）とともに左上大静脈が存在していた。このため、左上大静脈にもカニュレーションを行った。排出口を上下させることにより心房内圧を任意に調節することを可能とした。上大静脈および肺動脈幹にカニュレーションを行い、これらを1つのルートにして水柱計に接合した。このことにより、心房内圧を持続的に、またリアルタイムに計測することができた。肺静脈のマッピングの際には、全ての肺静脈を結紮した。あわせて下大静脈においても結紮を行った。肺静脈へのカニュレーションを行わないことにより全ての肺静脈において、同時に活動電位を記録することが可能となった。
左右心房内圧を同じ圧とするために、左心房と右心房の間に人工的な心房中隔穿孔を作成した。この処置により、左心房と右心房の間の圧較差を生ずることなく、実験を遂行できた。心房内圧は、0-20 cm水柱程度の範囲で調節し、不可逆的な損傷を避けるために高い圧を設定しなかった。
心房細動誘発は、バッハマン束における高頻度バースト刺激により行った。膜電位感受性色素を用いて、心房および肺静脈の高分解能光学マッピングを行った。256×256点において、1 ミリ秒ごとに活動電位シグナルを記録した。
圧負荷による心房伸展モデルを用いたことにより、下記の知見を得ることができた。心房伸展により心房細動誘発率が上昇した。心房内の伝導は、左心房と肺静脈の接合部を越え、肺静脈にも伝播することが確認できた。不整脈（特に伸展による心房細動）においての発生基板として、肺静脈が重要な役割を担っていることが明らかとなった。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

ウサギ心臓において、心房ペーシング下で左心房から肺静脈へと興奮が伝播していた。このことは、肺静脈における巣状興奮と肺静脈と左心房接合部領域におけるリエントリーが重要なポイントであることを示唆している。
ウサギの心房伸展に関連した心房細動について引き続き検討していく予定である。しかしながら、心房細動を光学マッピングによって撮像し、さらに解析していく段階において困難に直面している。心房細動の誘発と維持に関しての問題である。具体的には、心房細動が定常的に誘発され、さらに実験プロトコールを遂行することが可能な程度まで持続するような心房細動モデルが完成していない。
以上の点を総合すると、進捗状況は順調とはいえない。

Strategy for Future Research Activity

高分解能光学マッピングシステムにおける、活動電位シグナルの品質に関しては改善の余地がある。肺静脈でみられた活動電位シグナルにおいては、心房電位シグナルに比べるとシグナルが弱く、信号/ノイズ 比（S/N比）は良好とはいえない。引き続き、技術的な面からのアプローチによる改善が必要である。
心房細動を光学マッピングによって撮像し、さらに解析していく段階において困難に直面している。心房細動が定常的に誘発され、さらに実験プロトコールを遂行することが可能な程度まで持続するようなモデルの確立を進めて行く必要がある。
まず、心房収縮を抑制する薬物についての検討を行っていく予定である。心房収縮を抑制する薬物を使用すると、心房細動の誘発率が低いことが確認できており、今後は新たな薬物も使用することにより打開したい。また、心房細動誘発法についても、新たなプロトコールを適用する予定である。
以上の検討により、肺静脈（異所性）巣状興奮とリエントリーの、心房細動における重要な知見が得られると期待できる。

Causes of Carryover

今年度においては、実験の進捗に関連した問題が明らかになってきたため、研究の遂行に遅れが生じている。このため、消耗品や備品などの購入金額が予定より少なくなったため、次年度使用額が生じた。

Expenditure Plan for Carryover Budget

次年度に関しては、「心房細動における巣状興奮とリエントリーに役割について」の解明をめざして、さらに実験を遂行し解析を行う予定である。