2015 Fiscal Year Research-status Report
心不全発症・進展の超早期予知を目的とした新規バイオマーカーの探索
Project/Area Number |
26461070
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
杜 隆嗣 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50379418)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 心不全 / メタボローム解析 / ケトン体 |
Outline of Annual Research Achievements |
心不全では血中や呼気中のケトン体濃度が上昇することがこれまでに報告されている。その機序のひとつとして交感神経の活性化に伴い、脂肪分解が促進し、その結果として肝臓でのケトン体産生が亢進するためと考えられている。一方、近年、ケトン体のひとつであるbeta hydroxybutyrate (betaOHB) は代替ATP産生源としてだけではなく、抗酸化作用などの生理作用を発揮することが報告されている。本年度は不全心におけるケトン体代謝の制御機構およびその生理作用について検討を行った。 GC/MSにより圧負荷モデル・マウスの血中のbetaOHB濃度を測定したところ、予想に反し上昇を認めなかった。また肝臓のbetaOHB濃度も増加していなかった。しかし心臓でのbetaOHB濃度は増加しており、肝臓でのケトン体産生の亢進が起こる前より上昇しうることが示唆された。培養心筋細胞を用いた検討でも過酸化水素刺激によりbetaOHB濃度が上昇することを確認した。 血中よりbetaOHBが供給されないにもかかわらず、心臓で濃度が上昇する機序について検討を行った。まずケトン体を合成するHMG-CoA合成酵素については発現の亢進を認めなかった。そこでケトン体の肝外利用に重要な酵素であるSCOTについて検討したところ、不全心では発現が低下していることを確認した。心筋細胞でも過酸化水素刺激により、SCOTの発現が低下することを確認した。以上より不全心ではケトン体の利用が抑制されることで蓄積する可能性が示唆された。 蓄積したbetaOHBの病態生理学的意義について検討した。心筋細胞にbetaOHBを添加したところ、抗酸化に作用する遺伝子群の発現が亢進し、また過酸化水素刺激によるROSの産生が抑制されることを確認した。さらにアポトーシスも抑制した。 以上より酸化ストレスに対し代償性反応としてbetaOHBは心臓内で増加し、心筋保護的に作用する可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心不全に特異的な血中代謝物のプロファイリングを行い、さらにその病態生理学的意義を解明し、新規超早期診断システムの開発につなげるという目的に対し、一定の成果をあげている。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに明らかにした心不全における代謝制御機構の変化が実際に心不全の発症・進展の超早期予知に有用であるか、臨床所見や現在、臨床応用されているバイオマーカー、ならびに各種画像・生理学的検査所見との比較による検討を行う。
|
Research Products
(4 results)