2014 Fiscal Year Research-status Report
心室細動ストームの成立機序:カルモジュリンキナーゼの役割と治療標的としての可能性
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26461074
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
辻 幸臣 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 講師 (60432217)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本荘 晴朗 名古屋大学, 環境医学研究所, 准教授 (70262912)
山崎 正俊 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教 (30627328)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 心臓電気生理学 / 心室細動ストーム / カルモジュリンキナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
心室細動(VF)が成立するには通常、心室性不整脈が発生し、それがVFへ移行・維持する段階を経るが、その成立機序は明らかでない。我々は、完全房室ブロック作成と植込み型除細動器(ICD)を組み合わせることで、VFが繰り返し発生しICDが頻回作動する極めて重篤な不整脈状態(VF storm)を再現した実験モデル動物を確立し、この病態に細胞内リン酸化酵素カルモジュリンキナーゼII(CaMKII)が中心的な役割を果たすこと見出した。本研究では、CaMKIIがVFの成立過程にも重大な役割を果たすという仮説を検証するために、以下の実験を行った。1.免疫組織学的検討:活性型である自己リン酸化CaMKIIの発現を検討した。コントロール家兎心室筋では、自己リン酸化CaMKIIは均一に弱発現していたのに対し、VFストーム家兎心室筋では、心筋中層の血管周囲やプルキンエ線維といった局所にて強発現していた。この所見は、心室筋の電気生理学的不均一性が増すことを示唆する。2.L型Ca2+チャネルアゴニストBayK8644とFPL64176のVF成立促進効果の検証:モデル家兎2羽に静脈内投与し、1時間の心電図モニターを実施した。QT時間の延長、心室性期外収縮、非持続性心室頻拍が観察されたが、VFストームは誘発されなかった。しかし、2羽ともに急性実験終了後3日目に重篤なVFストームに見舞われた。薬剤負荷と直接的な因果関係は不明だが、細胞内Ca2+過負荷によるCaMKII活性の亢進が心臓リモデリングを促し、反復するVFの成立に寄与したと考えられる。3.高分解能光学マッピングによるVF可視化の試み:モデル家兎の摘出灌流心を用いて心内膜・心外膜マッピングを実施した。除細動後再発生するVFの興奮伝播パターンを解析することを試みた。局所湧き出し興奮波によって発生し、左室前乳頭筋近傍にアンカーするrotor waveによって維持されるVFエピソードを記録することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
実験計画の実施が遅延している主な理由として、このモデル動物の準備に少なくとも3か月間という長い期間を要すること、経過観察中に除細動不全による死亡など、実験プロトコールから早期に脱落する家兎が少なくないことが挙げられる。また、このモデル動物は頻発するVFエピソードに見舞われるが、摘出灌流心ではその催不整脈性が低下し、自然発生する不整脈がほとんど出現しなくなるという問題点が明らかになった。このため、本年度、摘出灌流心の催不整脈性を評価するため、イソプロテレノールやアセチルコリンなどの薬物負荷やECアンカップラーの変更など様々な実験条件を検討する必要があった。モデル作成を本学と共同研究先の名古屋大学とで行っているが、所有するICD数に限りがあることも実験計画の遂行が遅延する原因であった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では本研究課題のエフォートを上げることができること、メドロトニック社からICDが新たに19台供給されたこと、徳島大学・常山幸一教授との共同研究がまとまったこと、摘出灌流心で自然発生するVFを可視化する光学マッピング実験における最適な実験条件を決めることが終了したこと、などによって、モデル動物の作成数を増やし、実験計画の実施効率が格段に改善されることが期待できる。
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Causes of Carryover |
モデル動物の作成数が当初の予定よりも少なかったことや単離心室筋細胞の機能解析が行われなかったことが、次年度に使用額が生じた理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度では、上述のように実験計画実施の効率が改善され、単離心室筋や摘出灌流心を用いた電気生理学的特性の変化を検討する当初の計画調書に沿って使用される見込みである。
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Research Products
(5 results)