2015 Fiscal Year Research-status Report
断片化興奮波wavelet伝播とCa動態の光学的追跡による心房細動発症機転の解明
Project/Area Number |
26461078
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
酒井 哲郎 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40153845)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 膜電位イメージング / 不整脈 / 頻拍様興奮 / 膜電位感受性色素 / 心房細動 / Ca2+イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は昨年度に引き続き、膜電位イメージングの技法を駆使して、心房細動モデル(頻拍様興奮、tachycardia-like excitation)における不整脈誘発時および維持期の興奮波伝播パターンのmapping を進めた。これまでの研究では長いwavefront を持った“大きな興奮波”を中心にmapping をおこなって来たが、本研究では、これまであまり重要視して来なかった断片化したwavelet に注目したmapping をおこない、re-entry path やblocked area の形成、自発興奮の異所性focus の発現などのより詳細な記録をおこなっている。本年度は昨年度導入したCMOSカメラを用いてtachycardia-like excitation発現時の興奮波伝播の画像化を中心に実験を進めた。 tachycardia-like excitation発現の条件として、これまで明らかにしてきた細胞内Ca2+ dynamics の擾乱によるproarrhythmic なcondition (Ca2+負荷、ouabain, ryanodine などの薬物投与等)に加えて、生後半年以上の「加齢ラット」に軽度のCa2+負荷をかけた条件下でもtachycardia-like excitationが発現することが明らかになり、より心房細動の病態に近いものではないかと注目し実験を進めている。 このような条件下でtachycardia-like excitationを誘発し、CMOSカメラにより興奮波伝播のmovie clipの作成を進めた。その結果、興奮波の旋回(re-entry)に加えて、旋回経路から分かれて伝播する“小さな興奮波”を記録することができた。 さらにこのカメラを、Ca2+イメージングに適用する研究も進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、膜電位イメージングの受光素子としてフォトダイオードアレイに加えてCMOSカメラを導入してtachycardia-like excitation発現時の興奮伝播のmappingを進めた。 CMOSカメラにより得られた動画ファイルにband pass filter処理と疑似カラー化を加えることにより、興奮伝播の動画化が可能となり、mappingの効率が大幅に改善した。作成されたmovie clipにより、1㎝四方の心房筋標本の中を興奮波が旋回する状態が明らかとなり、旋回する興奮波から分かれて標本内を別のルートで伝播する“小さな興奮波”(wavelet)を観測することに成功した。 Ca2+イメージングについては、CMOSカメラの導入に合わせてシステムの光学系の見直しを含めたシステムの設計変更を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度、27年度の研究の成果をふまえ、CMOSカメラを用いた膜電位イメージングによるtachycardia-like excitation発現時の興奮波伝播のmappingを精力的に進める。これにより、これまでのフォトダイオードアレイによる等時線のmappingに加え、興奮領域の移動を動画化することが可能となる。この動画データを蓄積することが第一の目標となる。 また、この研究プロジェクトの中で明らかとなった加齢ラットに弱いCa2+負荷をかけることにより誘発されるtachycardia-like excitationに注目し、心房細動の実験モデルとしての可能性を探求する。 あわせて、Ca2+イメージングシステムの作成を急ぎ、膜電位感受性色素と細胞内Ca2+プローブによる二重染色をした標本を用いた不整脈発現中の興奮伝播パターンと細胞内Ca2+dynamics のdouble imaging / mapping をおこなう。
|
Causes of Carryover |
平成27年度は、CMOSカメラの導入により実験の大きな効率化をおこなうことができた。そのため、予想よりも少ない実験動物や、より少ない膜電位感受性色素を含む薬品にかかる費用により満足できる成果を得ることができた。 これにより支出した金額が予定より少なくなり、残金を次年度に使用することとした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度でも実験に用いる物品費は当初の予想より少なくなる可能性が有るが、一方でCa2+イメージングのための測定システムの改造のための物品費の支出が予想される。これに関する費用は次年度使用額の中から捻出することを予定している。 また、次年度はプロジェクトの最終年度であるため、外部の研究者を招聘し総括的な研究の打ち合わせをおこなうことも計画している。
|
Research Products
(5 results)